白い私と赤い俺
00 子守リ唄
夜闇を染め上げる炎が、頬を焼くように燃え上がる。誰もいない庭の中、芝に乗った露だけが、月の明かりで輝いている。
王は、そっと息を吐き出した。浅く折れ曲がった低い背に雨を受け、その頭は更に下へと垂れる。分厚いスーツに乗った真白の髪を覗かせて、彼は孤独に拳を握りしめていた。
止む兆しのない雨音。王は迷子の子供のように歯を食いしばる。髭の先から、微かに濁った雫が落ちた。
雨がさらに強くなる。慈悲のない水に叩かれる背中は異様なほどに縮こまり、落ち切った肩からは微塵の気力も感じられない。
王は、いつまでも動くことはなかった。しかしどれくらい経っただろうか、地面が雨を弾く音の中、誰かの歌声が彼の耳を震わせる。
「らんらんららんら、らんらんらん」
それと同時に、何かがこちらへ駆け寄ってくるような気配。
(なん…だ――?)王は、おもむろにそちらへ手を伸ばした。
と、銃声。
頭の中が雨水に打たれる感覚。
目に染み込んでくる赤黒い雨。
そして、全身が芝に包み込まれる。覗き込んできた男の耳から落ちるアクセサリーは、王が最期に目にしたものだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます