第38話:涙の意味05


 昼休み。


「犯人を特定しました」


「早っ」


 コーヒーを飲みながら俺は驚いた。使用人は三人の学生の名前を挙げ、その資料をこちらにまわす。


「ふむ」


「へえ」


「ほう」


 とフレイヤと鏡花と朱美が資料を見やる。俺も見てはいる。しかし正直興味はない。


「コーヒーおかわり」


「はいはい」


 フレイヤが水筒からコーヒーを注いでくれる。


「金也ちゃん?」


「何か」


「この三人知ってる?」


「うんにゃ」


 否定。


「そもそもにしてかしまし娘の存在感に圧倒されているから正直他の学生に興味がない」


 真理だ。


「ぶっちゃけクラスメイトさえも判断できんぞ俺は」


「それは」


「きっと」


「あたしたちもだけど」


 かしまし娘にとっても俺以外に興味がないのだろう。ブラコンと幼馴染みと実母の生まれ変わりと来た。


 ――誰か代わってくれんかね?


 そんなことさえ思ってしまう。口にすればかしまし娘が悲しむだろうから、あくまで脳内で完結するも。コーヒーを飲む。


「基本お前らが居れば他に要らんしなぁ……」


「あは」


 とフレイヤが笑った。


「私のおっぱい吸いたくなった?」


「お前のおっぱいはいらねぇよ」


 何回やるんだこのやりとり。


「では兄さん、私の胸は」


「貞節は大事になさい」


 ブラコニズムにも困ったものである。


「あう」


「そこで凹むなよ。可愛いだろ」


 貧しい胸に自己嫌悪する朱美にリップサービス。


「ふえ」


 真っ赤になる朱美。


「あたし……可愛い……?」


「前からそう言ってるだろ」


 何を今更、だ。


「それで」


 と使用人が閑話休題。


「如何しましょう? お嬢様……」


 ちなみに平然と使用人が教室に入っているが許可は取ってある。取らなくともゴールドーン財閥の我が儘を止める権限は学校側にはあるまい。ほとんど「メンインブラックか」とツッコみたくなる黒スーツにサングラスがまた威圧感を与える。

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