第26話:乙女心の行く先は06
で、部活。
「あー……」
と部長の俺が司会進行。一応だが。そもそも四人所帯の小さなサークルだ。文化祭の出し物がサークル単位である以上、我が文芸サークルも出し物を考えにゃならんのだが、面倒事は嫌いなんだよ俺は。
ところで朱美は部室にいない。教室で女子に呼ばれて部活の助っ人。色んな意味で鏡花にコンプレックスを持っている彼女ではあるが、こと運動と人間関係においては鏡花を上回る。
そのため部活の助っ人に迎えられることが多々あるのだった。
なわけで、
「案のある人~」
投げやりに俺が言う。朱美にとっては欠席裁判だろうが知ったこっちゃないな。
「また同人誌でも作りますか?」
これは鏡花。
「昨年は余らせたからなぁ……」
文芸サークルらしい活動ではあるが、面倒事も多い。
「昨年は同人誌作ったの?」
「同人誌って云うか部誌」
「人気なかったの?」
「悲しいくらいな」
そもそも俺と鏡花と朱美で部誌を作ろうとの試みが間違いだ。
俺は人の死をテーマにした救いの無い小説しか書けない。
鏡花は小説と呼ぶには自分の心情……即ちブラコン魂全開の俺への間接的な告白のようなラブロマンスを書いて、読んだ男子をハートブレイク。
朱美はそもそもあまり文芸向きの少女では無いため小説の完成度が一定未満。
これでいったい誰が読む気になるのか。
「と、つまりそういうことだ」
去年の恥を拾う俺だった。
「じゃあ今年はプロ作家を呼んで部誌作ろっか? 人気作家による合同誌。印税はゴールドーンで払うから」
「そういう裏技は禁止だ」
「そっかぁ」
殊更に残念そうでもない。冗談の範疇だったのだろう。とはいえ仮に俺が賛成すれば冗談にならなかっただろうことも……事実のはず。
「じゃあはい!」
とフレイヤ。
「言ってみろ」
嫌な予感しかしないが。
「メイド喫茶!」
その程度は言うだろうな。
「長蛇の列が出来るぞ……」
「知ってる」
どうやら自覚はあるらしい。
「だからあえて制限する」
「制限?」
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