第8話:母が訪ねて三千里08
「金也ちゃん?」
「却下」
「何も言ってないよ~」
「どうせ入部させろとかそういうことだろ」
「多分だけど私は男子生徒に狙われてるよね?」
「女子にも狙われてたがな」
「それは鏡花ちゃんと朱美ちゃんも同じでしょ」
「…………」
中々良い性格をしているらしい。
「ね?」
と鏡花と朱美を見やると、
「それは……」
「そうだけど……」
据わりが悪そうに目の泳ぐ二人。同じ美少女同士……カルマの深さは共有できるらしい。
「中には強引な手段で私をやり込めようとする男子も出てくるかも。そんな経験……二人ならあるんじゃない?」
「…………」
「…………」
おい。
半眼で二人を見る。
「うぅ」
「あぅ」
反論の余地もない……と。
「だから私も金也ちゃんのサークルに入れて欲しいな。私なら鏡花ちゃんにも朱美ちゃんにも引けをとらないでしょ?」
「お前の痛覚はどうなってる?」
「?」
……痛くないかと聞いたんだが。
「鏡花と朱美が反論できないなら吝かではないがな」
「話が分かって助かるよ。他のサークルに対する牽制にもなるし」
「そこまでわかってるならフォローはせんぞ」
「金也ちゃんと一緒に居られるだけで万々歳」
「俺の何が良いのよ?」
「可愛い顔」
「…………」
他に取り柄が無いのは事実だがな。
「惚れたか?」
「とは違うかな」
「へぇ」
一目で俺に惚れない美少女がいるのか。それはそれで斬新だ。
「……他人に痛覚の有無を言えないな俺も」
「どこか痛いの?」
「人格がな」
「ならお相子だね」
わかってて惚けてやがったのか……。
「はぁ」
「何さ。その嘆息は?」
「お前と話すと疲れる」
「にゃはは」
笑うフレイヤ。気紛れな猫のような表情と声。男子を振り回す仕草と言葉。俺をして疲労を覚えさせるとはそういうことだ。
「嬉しいなっ」
「けなしたつもりだが……」
「疲れるくらい正面から私の言葉を聞いてくれたってことでしょ?」
「そういう解釈があるのか」
ある種の驚きだ。
そして棟を移す俺たち。一階最西端の部屋。扉を開けるとムワッと熱気が襲ってくる。
「鏡花。クーラー付けて」
「はい。兄さん」
「朱美。水出し紅茶」
「うん。金ちゃん」
「ではフレイヤ?」
「なに?」
「ようこそ文芸サークルへ」
俺は慇懃に一礼した。
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