第6話:母が訪ねて三千里06
「兄さん!」
「金ちゃん!」
何で俺が責められる?
「ゴールドーン」
「何?」
「離れろ。暑い」
九月一日。夏の気配はまだまだ続く。正直な話おっぱいに囲まれると外の気温並みの体温が提供されるので息苦しいにも程がある。
「むぅ」
と唸るゴールドーン。
「私のことはフレイヤって呼んで!」
そっちかよ。
「いいから離れろ」
場合によっては首が飛ぶ。実際クラスの熱気は凄まじい。
「「「「「また鐵か……!」」」」」
そんな総意。
どうも。顔だけ男こと鐵金也です。
「兄さん!」
「金ちゃん!」
「「どういう関係!」」
「知らんがな」
吐き捨てた。俺の記憶にこの手の女子は載っていない。完熟しているプロポーションは犯罪的ですらあるから、知っているなら三桁の番号にコールしている。
「そっちが鏡花ちゃんで、そっちが朱美ちゃんね?」
フレイヤはあっさりと言ってのけた。
「ただの事実確認」
それ以上のトーンではない。
「ふや?」
「ふえ?」
名を知られていることが不意打ちだったのだろう。美少女二人はポカンとしていた。目を丸く……なんてアレだ。中々珍しい光景。特に鏡花は状況さえ揃わねば感情を揺り動かすことをしない。泣き虫ではあるがな。
「そんなわけで先生」
と担任に声をかけるフレイヤ。いまだ彼女の展開する異界構築能力は場を支配したままだ。クラスメイトの殺意の視線を一身に浴びながら、しょうがないので俺は巨乳の感触を楽しむことにした。南無第六天魔王。
「私の席は?」
「ああ、即席で窓側最後方をとっている」
担任もどこか怯みがちだった。生徒に欲情……してもしかたないか。この巨乳と安産型のお尻を見せつけられれば。
ところでいい加減暑いんだがな?
「鏡花ちゃん?」
「何ですか?」
「席代わって?」
「断ります」
「朱美ちゃん?」
「何?」
「席代わって?」
「断る」
「金也ちゃんはそれで良いの?」
「状況はわからんがとにかく離れろ。そして席に着け」
「にゃはは。良い感じ」
カラカラと明るく朗らかに笑ってフレイヤは俺の真後ろの席の男子に声をかけた。
「席代わって?」
「えぇ?」
「お・ね・が・い」
挑発するような声は聞くだけでとろけそうだ。実際精神的にとろけたのだろう。
「あ、はい」
とそれ以上抵抗せずに速やかに席を明け渡すクラスメイト。
もうちょっと抵抗しようや……。
人に言えた話でもないものの。で、教卓に立つ担任。両隣の鏡花と朱美。すぐ後ろにフレイヤと来て。俺に逃げ場は無くなった。王手だ。火鬼の駒でもなければ解決できない状況ではあろう。
大局将棋はしたことないが。
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