第23話 写真


【祐二 視点】



「あぁぁ~、気持ちいいなぁ」


 現在、僕は湯船に浸かっていた。

 温かいお湯に包まれて、心が癒される。

 幸せだぁ~。

 しばらくして僕はお風呂場から出て、自室に戻ってきた。

 ベッドに寝転んで、ボーっと天井を見つめる。


「今日は凄かったなぁ……」


 今日、朱理がアレのお手伝いをしてくれた。

 静かな体育館倉庫の中で何回もご奉仕してくれたんだ。

 あの夢のような時間を思い出して、身体の一部が熱を帯びる。

 ヤバいっ、また変な気持ちになってきた……。


 我慢できなくなった僕は、ズボンと下着を脱ぎ捨ててアレをし始める。


 突如、部屋中にプルプルとコール音が鳴り響く。

 朱理が電話してきたのだ。

 気になった僕はアレを中断して電話に出る。


「もしもし、朱理か?」

「うん、そうだよ……」


 スマホのスピーカーから朱理の声が聞こえてきた。

 彼女の声は少しだけ暗かった。


「ねぇ祐二くん」

「ん? なんだよ?」

「……君と優衣ちゃんって付き合ってないよね?」


 朱理の問いに僕は「は……?」と抜けた声を出す。

 なんだこの質問は……?

 よく分からないけど、僕は朱理の言葉に返事した。


「僕と優衣は付き合ってないよ。僕の彼女はお前だけだ」

「……そっか」


 僕の返事に朱理は「はぁ……」と安堵のため息を吐く。

 安心している様子だった。


「なんで僕と優衣が付き合っていると思ったんだ?」

「……正人が『祐二のヤツ、優衣と浮気してるぞ』って言ってきたんだ」


 朱理の言葉に僕は小首をかしげる。

 浮気だと?

 おいおい、何言ってんだ。僕は浮気なんかしてないぞ?

 朱理以外の女の子と付き合いたいと思ったことなんか一度もない。

 どうして羽島は朱理にそんな嘘をついたんだ?


「本当に浮気してないんだよね……?」

「ああ、してないよ。僕が好きなのはお前だけだ」

「っ……」


 僕の言葉に朱理は声にもならない声を上げる。


「……アタシも祐二くんのこと大好きだよ、愛してる」

「お、おう……」


 朱理の甘いセリフに沸騰するほど顔が熱くなる。

 ほんと、朱理は素直で可愛いなぁ……。

 誰かに『僕の彼女、可愛いだろ?』と自慢したい。

 自慢したら『朱理ファンクラブ』の奴らが僕に殺気を向けてくるだろう。

 下手したら、殺されるかもなぁ。


「あっ、そうだ。朱理、今日はありがとうな」

「ん? なんのこと?」

「ほら、今日アレのお手伝いしてくれただろ? 本当にありがとうな」

「え? あっ、うん……どういたしまして」

「……」

「……」


 僕も朱理も黙り込み、部屋中が静寂に包まれる。

 気まずいなぁ。変なこと言わなかったらよかった……。


「祐二くん」

「ん?」

「……変な気持ちになったら言ってね? またアレのお手伝いしてあげるから」

「じゃあその……明日もお願いします」


 僕がそう言うと朱理は「プクク」と笑う。


「祐二くんは本当にスケベだね」

「スケベじゃない男なんかいねぇよ」

「あはは……確かにそうだね。あっ、そうだ、スケベな祐二くんにコレあげるよ」


 突如、朱理が一枚の写真を送ってきた。

 その写真を見た瞬間、僕は「なっ!?」と驚き混じりの声を上げる。

 な、なんだこれは……。


 写真には下着姿の朱理が写っていた。


 黒いレースのブラに包まれた豊満な胸。

 キュッと引き締まったお腹。

 黒いショーツから伸びる蠱惑的な太もも。

 

 写真に写っている下着姿の朱理を見て、ゴクリと息を飲む。

 コイツ、マジで何してんだ?

 僕は慌てて口を開いた。


「お、お前っ、何してんだよっ、恥ずかしくないのか……?」

「は、恥ずかしいに決まってんじゃん……」


 なら送るなよ……。


「なんでこんな写真送ってきたんだ?」

「それはその……祐二くん喜んでくれるかな、と思って。嬉しくなかった……?」

「嬉しいに決まってるだろ……」

「そ、そっか……」

「うん」

「……」

「……」

「……あっ、他の人にその写真見せたらダメだよ?」

「ああ、分かってるよ」


 僕はスマホの画面をタップして、さっき朱理が送ってきた写真を保存する。

 これは大切にしよう。


 話をもとに戻すが、なんで羽島は朱理に嘘ついたんだ? 

 アイツは何を企んでいる?


「なぁ朱理」

「ん? なに?」

「どうして羽島は朱理に嘘ついたんだ?」

「ごめん、それはアタシもわかんない……」


 朱理も分からないのか。


「最近の正人、凄く変なんだよね……何考えてんだろう?」

「さぁな……」

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