第18話 失恋
午前の授業が終わり、やっとお昼休みだ。
アタシはグーっと体を伸ばす。
あぁ~、疲れたっ……。
さてと、祐二くんと一緒にお昼ご飯を食べよう。
アタシは鞄の中からお弁当を取り出して、祐二くんの席に向かう。
「ねぇ朱理」
突如、背後から女性の声が聞こえてきた。
反射的に後ろを振り向くと、1人の女子生徒が視界に入る。
凛とした顔立ち。
腰まで伸びた金色の髪。
この学校の制服を完璧に着こなしていた。
彼女の名前は
アタシの友達だ。
「どうしたの、胡桃ちゃん?」
「アンタと坂田くんって付き合ってんの?」
「……え……?」
私は思わず目を丸くする。
どうして祐二くんと付き合っていると思ったんだろう?
気づいたら疑問を口にしていた。
「なんでそう思うの?」
「前に正人くんが『朱理と祐二は付き合ってるぞ』って言ってたの」
「……」
アタシは沈黙する。
正人のヤツ、なんでアタシと祐二くんの関係を広めているんだろう……?
最近の正人はちょっとだけ変だ。
アイツは何を企んでいるの……?
まぁなんでもいいか。
黙り込んでいるアタシを見て、胡桃ちゃんは眉を顰める。
「アンタ、本当に坂田くんと付き合ってんの?」
胡桃ちゃんの問いにアタシは「うん……」と答えた。
彼女は目を見開く。驚いている様子だった。
「ふ、ふーん、本当に坂田くんと付き合ってるんだ」
彼女の声は震えていた。プルプルと小刻みに身体まで震えていた。
動揺している彼女を見て、アタシは小首をかしげる。
なんで動揺してるんだろう?
「……正人くんの話は本当だったんだ。ショックだなぁ」
「ん? 何がショックなの?」
「私もね、坂田くんのことが好きなの」
「……ぇ……」
「あっ、けど朱理の邪魔はしないから。安心して」
胡桃ちゃんも祐二くんのことが好きなのか。
ふと正人の言葉が脳裏によぎる。
――
あの話は本当だったのか。正直、嘘だと思っていた……。
他にも祐二くんのこと好きな人いるのかな?
◇◇◇
【坂田優衣 視点】
――お昼休み――
現在、私は中庭のベンチに座って、メロンパンを食べていた。
ずっとメロンパンを食べながらソシャゲをしていると、
「よう、優衣」
突如、羽島正人くんが声をかけてきた。
私は顔を上げて、羽島くんを睨みつける。
「私に何の用?」
「一緒にご飯食べようぜ」
「ご飯? ……まぁ別にいいけど」
「サンキュー」
羽島くんは私の隣に座る。
この人、いつも私に話しかけてくるんだよね……。
何考えてるんだろう?
まぁなんでもいいか。
「優衣と祐二は兄妹なんだろ?」
「ええ、そうよ」
「けど、お前と祐二って全然似てないよな」
「血は繋がってないからね」
「ふーん。じゃあ優衣と祐二は結婚できるのか」
「っ……」
羽島くんの何気ない一言に、私の身体はビクッと震える。
祐二くんと結婚か……。
したいけど、祐二くんは私のこと異性として見ていない……。
今、告白しても振られるのがオチだ。
落ち込んでいる私に、羽島くんはまっすぐ言葉を投げた。
「
「えぇ……好きよ」
「……」
私の返答に羽島くんは驚愕に満ちた表情になる。
ショックを受けているように見えた。
けど、すぐに彼はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「けど、
「彼女?」
羽島くんの言葉に私は小首をかしげる。
祐二くんに彼女……?
あは、あはは……冗談でしょ?
羽島くんは真剣な表情だった。
嘘や冗談を言っているようには見えない。
本当に祐二くんは誰かと付き合ってるの?
そんな風には見えないけど。
「祐二くんは誰と付き合ってるの?」
「朱理だよ」
「朱理……?」
私はパチパチと瞬きする。
「朱理って篠宮朱理さんのことよね?」
「ああ、そうだ」
「……」
最近、篠宮朱理に彼氏ができた、という噂を耳にした。
その彼氏が祐二くんってこと?
いやいや、それはないでしょ……。
だって、相手はあの篠宮朱理さんよ?
彼女は可愛くて、スタイル良くて、明るくて、喋りやすくて。
完璧な女の子だ。
男子生徒の間で行われた『可愛い女の子ランキング』では二位に大きな差をつけて堂々の一位だったらしい。
『篠宮朱理ファンクラブ』まで存在している。
まるで人気アイドルだ。
男子生徒に大人気な篠宮さんは、よく告白されるらしい。
篠宮さんはどんな告白にも『あ~、ごめんね? 恋愛には興味ないんだ』と返事しているらしい。
そんな学校のアイドルと祐二くんが付き合っている?
ありえないっ。そんなの絶対にありえないっ……。
◇◇◇
【坂田祐二 視点】
――夜――
現在、僕はベッドの上に座ってゲームをしていた。
暇だなぁ。勉強でもしようかな。
なんてことを思っていると、コンコンと誰かが部屋のドアをノックしてきた。
部屋の奥から「祐二くん」と優衣の声が聞こえてきた。
ん? なんだ?
僕はベッドから立ち上がって、ドアに向かう。ドアを開けると優衣の姿が目に映る。
「どうしたんだ、優衣?」
「えーっと、その……」
優衣は今にも消えそうな声で言った。
「あなたと篠宮さんって付き合ってるの……?」
「え……?」
時間が止まったような感覚に襲われる。
どうして僕と朱理の関係を知っているんだ?
もしかして、朱理が教えたのか……?
いや、それはないか。
じゃあ誰が僕と朱理の関係を優衣に教えたんだ?
「なんで僕と朱理が付き合ってると思ったんだ?」
「今日ね……羽島くんが「祐二と朱理は付き合ってるぞ」って言ってたの」
「……」
羽島が優衣に教えたのか。
ったく、アイツは何を考えているんだ……?
「ねぇ、彼の話は本当なの……?」
「……」
「本当に祐二くんと篠宮さんは付き合ってるの……?」
「ああ、本当だ」
「……ぇ……」
優衣は絶望に染まった表情を浮かべる。
涙目になっていた。
「う、嘘でしょ……?」
「嘘じゃない。本当だ」
「そ、そんな……」
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