幸せって・・・何??

香音愛(kanoa)

第1話


安祐美あゆみ、結婚してくれ。」


音羽 《おとわ》安祐美あゆみ 29歳。

素敵な岸本きしもとさんにプロポーズを受けた。

勿論返事は、

「はい!」



安祐美は誰もがうらやむ結婚をした。

岸本きしもと 和樹かずきは、34歳。AI会社の若き社長。モデルなみの容姿。投資にも裁量がありマンションやビルを幾つも所有するといった絵にかいたような男性だった。

安祐美の家柄も良かった。父は自分が一代で築いた不動産会社の社長で、母は元キャビンアテンダント、今はお花の先生。3歳下の弟は弁護士を目指して勉強中。こちらも絵にかいたような一家だ。


和樹は、会社主催のパーティを開いた。若い起業家が集まる派手なパーティだった。安祐美の父は和樹と仕事上で取引があるので招待されていた。女性同伴と招待状に記されていたので父は娘の安祐美を連れていた。

和樹の悪友たちが集まっていた。

「来ましたね・・・」

「噂の音羽不動産のお嬢様・・・」

「噂通りの可憐なお嬢さんだね。」

「岸本・・・お前、行くよな。」

「当然だろ。あのお嬢様はモノにするさ。」

「お前がやめたら俺が行くから直ぐ教えろよ。」

「それはない。残念だったな。」



和樹は安祐美を口説いた。

「安祐美さん、僕はあなたに一目ぼれをしました。是非お付き合いしてください。」

当時29歳の安祐美は彼の誘いにすぐにOKした。安祐美は母からもそろそろ結婚しろとうるさく言われていたので、うれしい誘いだった。第一このハイスペックな和樹の誘いを断る女性などいるはずもなかった。噂では今迄どんな女性が和樹に近づいても相手にされなかったという噂の男なのだから・・・

「はい。よろしくお願いします。」


その後毎日のように和樹は安祐美をデートに誘った。それは贅沢なデートだった。



2週間後・・・

「僕のマンションに来ませんか?」

初めて家に誘われた。安祐美だって子供じゃないからそろそろかなと思っていた。

「安祐美さん、僕もう我慢できません。」

和樹は安祐美にマンションのエレペーターの中でキスをした。いままでもキスはしたが、それとは違っていた。食べられてしまうような熱いキスだった。安祐美はこんなキスははじめてで、立っていられなかった。

和樹は安祐美をかかえるようにして部屋に入った。

もう一度和樹は安祐美にキスをした。

「安祐美。好きだ。抱くよ。」

安祐美はされるかままに抱かれた。

和樹の体は鍛えられており、何もかもが完璧だった。和樹が触れるところは全て感じた。

「安祐美・・・綺麗だよ。」

安祐美は幸せだった。こんな、こんな完璧な人に私は愛されている・・・。

夢の中にいるような時間が過ぎていった。



付き合い始めて2ヶ月経った頃、和樹が言った。

「安祐美、結婚してくれ。」

予想はしていたもののあまりにも早いプロポーズだった。有名なブランドのおしゃれなダイヤの指輪を和樹は安祐美の指にはめた。

「嬉しい、ありがとう和樹さん。私幸せ。」

「よかった。今週末にでもご両親にご挨拶に行きたいと思うけど、どう?」

「ありがとうございます。」

少し早いと思いながらも安祐美は嬉しくて仕方なかった。



週末、和樹は安祐美の両親に結婚の承諾を得る為に安祐美の家に来た。

「お嬢さんと結婚させてください。」

ストレートだった。父は和樹のことを知っていたので、すぐに承諾してくれた。安祐美の両親は大喜びだった。

和樹の優しい笑顔は誰もを魅了するものだった。

家族全員での会食が始まった。弟のしょうもその席に着いた。翔は挨拶をした後は特に何も話さずに黙々と食べた。でも翔は会話を聞くふりをしながらチラチラと和樹を見ていた。

(こいつ・・・何もかもが揃いすぎているからか、俺のヤキモチか? 取り越し苦労だといいけど・・・なんか気になる・・・)



付き合い始めて半年後、結婚式が行われた。

とんでもなく盛大な披露宴だった。安祐美の知らない人がいっぱい来ていた。そう、この披露宴は和樹と安祐美の結婚式というより、会社と会社の結婚式だったのだ。安祐美はそのことに気が付いていなかった。



結婚式が終わり、次の日から新婚旅行に行った。あまり遠くに行くのも疲れるからハワイでのんびりしないか? と和樹は安祐美に提案した。安祐美は和樹の計らいが嬉しくて承諾した。泊ったのは和樹が所有するコンドミニアムだった。ハワイには家族と何度か来たけどその時泊ったホテルよりもはるかに豪華だった。安祐美は幸せだった。浮かれていた。何もかもが夢のようだった。

「和樹さん、私幸せ。」

和樹は笑っていた。

幸せな一週間はあっという間に過ぎていった。



日本に帰り、二人で役所に行き婚姻届けを提出した。

「これで正式に夫婦だ。」

和樹は安祐美に言った。

「さてと、じゃあ俺はこれから用事があるから・・・」

和樹は安祐美を置いてどこかに行ってしまった。

「えっ? 和樹さん・・・」

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