終末セカイに芽をハナを

くま つばさ

序章

なにもない…


なにも、なくなった


痛い…いたい、いたい…イタイ…


からだが?

こころが?


わからない、なんだろう


この感覚は…


そもそも、本当にイタイのか?


こんな時は、心臓がドクドクと脈を早く打ってもいいはずのに


何故かとても冷静に静かに動いている。


今まで平凡で当たり前だった日常が


一瞬で壊されてなくなった。


あちらこちらから同時に、複数の真っ赤な炎と黒い煙が上がり、もはや、なす術がない。


目の前にでは、ついさっきまで、一緒にふざけた事を言い合って隣で笑っていた友人が黒焦げの塊になって、灰の上でぴくりとも動かない。


先生も……

他の同級生たちも


身体のあちこちをもがれ、バラバラになった者だっている。


見たくないはずなに


自分の瞳は次々とそれを追うようにとらえる。


自分も死ぬのか……


いや、もしかしたら自分だって

この場所で本当は死んでいるのかもしれない


死んでこのセカイを見ているの?


きっと未練があったから…


息が苦しくなるほどの知らない臭いに

何度も何度もむせて、吐きそうになる。


震える掌を掲げる


こんなにも残酷な姿になった地上を

美しいほど気味の悪い赤銅色の空が見下ろす。


やがてそこから、哀れんで涙を流すように小さな雫がいくつもいくつも落ちる。


小さな雫は、次第に大きくなり

真っ黒な残骸を大地に容赦なく満遍に与える。


もう、いやだ


星も見えないような真っ暗な闇の中へと、自分のセカイを閉じていく


だけど…


いつまでも、耳には、うるさくなった雨と、それに混じる微かな風の音が残り、体には炎の熱がまとわりついていた。











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