万華鏡の理
明璃
第1話 白銀の髪を持つ男
夜空に瞬く無数の星を静かに見つめながら、その男はただそこに立っていた。
どんな時でも星の光は綺麗なものだな・・・。
プラチナシルバーの長い髪にアイスブルーの瞳を持つその男は、
目印どころか、道自体もないような乾ききった土地をずっと変わらない速度で、ただひたすら何時間もの間歩き続けていた。
刺すような強い日差しを地上に落としていた太陽も次第に沈んで行き、夜がやってくると、その暗闇の中で足元すら見えなくなってしまったので、男はやっと立ち止まることにしたのだ。
どこまで歩いても何もないただの砂地だ。
この土地に辿り着いた時から、人の気配がないので予想はしていたが、これからどうしたらよいものかと疲れ切った頭で考えていた。
全く、人どころか生き物すらいないのではないかと思えるような土地だな。
用意してきた水と食料はあと僅かしかなく、この土地で調達する以外に方法はないと仕方なくここまでなんとか歩いてきたが、この様子ではこのまま進んで行ったところでありつけるとも思えなかった。
・・・仕方ない。男は歩くのを諦めた。
ただ黙々と歩き続けて体力が消耗するのを感じていたところで何の解決にもならない。
さて、これからどうしたものか。
もう何日もまともな食事をしていないので、これからのことを考える余力すらなかった。
夜の闇の中で彼の身体は優しい白銀の光に包まれていた。
それは彼自身が発する光だった。
もし今ここに誰かがいて彼を見ることができたなら、その静かに発光している光に気が付くこともできたであろうが、そこには人間どころか生き物すらいなかったので、
それを見るものはいなかった。
そして彼自身は普段はっきりとその光を見ることはできないので、
いつでもそんな光に包まれていることは自覚していなかった。
しかし能力を発揮する際にはその光の存在は自身も感知することができたので、
能力を使う時だけその光を見ることができたのだった。
それにしても私の光はなぜこんな色なんだろうか?
どうせならはっきりした分かりやすい色だったら面白かっただろうに。
そんな風にさえ思っていた。
そしてその光にまつわる能力と言ったら、こんな時には一向に役に立たないものだったので、こんな能力があったからといって食料も水も出せないようでは意味がないではないか・・・全く使い勝手が悪い能力で困ったものだとすら思っていた。
一休みしてなんとか食事にありつかねば本当にまずいだろうな・・・水だけでも
確保しなくては。そう考えながら、疲れた体を休めようと瞼を閉じて少しだけ休息することにした。
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