③竜人と鉄人

シトール

プロット

◯参考作品 なし


◯世界観

 人類の最終戦争が終結してウン千年。

 神の祝福によって再構築された世界では、いわゆる『人間』はおらず、ほとんどが亜人種と呼ばれる人種によって構成されていた。

 亜人種は頭部と四肢を有し、二足歩行をするという、基本的なシルエットを『人間』と同じくしていながら、どこかに他の生物の特徴を持っていた。

 例えば水かきが大きく発達し、顔面が魚そのものの『ディープワン』、毛むくじゃらで『逆関節』にも見える足を有する『コボルド』、羽を有しホバリング程度の飛行が可能な『フェアリー』など。

 その中でもとりわけ屈強で、肉体労働に向いている種族とされていたのが、体表を鱗で覆われ、あらゆる環境をものともしない『リザードマン』であった。

 そんなリザードマンが主に就いている仕事は、ディガーと呼ばれる遺跡発掘の仕事である。

 過去の戦争によって地中深くに埋もれてしまった、前時代の遺産を発掘し、それを現代社会に役立てることを目的としている。実際に研究や再利用を行うのはまた別の組織が担っているが、ディガーというのもなくてはならない仕事である。

 そんな中、ディガーが発掘した『鉄人』と呼ばれる遺産が取り沙汰される。

 亜人種とは全く別の身体を持ち、書物に記される『人間』と瓜二つの外見をしていながら、その身体は鉄で出来ており、尋常ならざるパワー、あらゆる外的圧力をものともしない頑丈さを有する鉄人は、そのうち神格化される。

 鉄人教が世界中に広まり、ディガーの仕事にも別の意味を帯びるようになった。

 そして、鉄人教に反発する集団もまた、多く出現してしまう。


 そんな世界となってから有余年。

 ディガーとして働いていたリザードマンのリュウは、とある遺跡でお宝を発掘する。

 それはマジで生身の少女。

 鉄人の様で鉄人ではないその少女は、過去の戦争で誰もが追い求めたものを持っているのであった。

 そしてリュウは少女と共に、鉄人教や反発組織の戦いに巻き込まれながら、『人間とは』という問題に一つの答えを見つけていく。


ディガー

 主にリザードマンが生業としている遺跡発掘人。

 遺跡は基本的に地中深くに存在しているため、あらゆる環境に適応し、体勢をかなり低く出来るリザードマンは閉所への侵入も可能になる。

 またリザードマンは屈強な身体を有しており、遺跡の壁なんかをぶち抜いて進むことも可能なため、適している。


遺跡

 過去の最終戦争で埋没した都市や研究施設などの事。

 何千年も経過しているためにあらゆる箇所が経年劣化しており、そのほとんどが機能を失っているが、ごく稀に生きた機械を見つけることがある。

 ディガーはそれを現代の研究機関に売りさばいて生活している。

 鉄人教が発足した今では、ディガーが発掘したものは基本的に鉄人教が買い上げており、鉄人の復活と、自分たちもまた鉄人になるための研究を続けている。


鉄人教

 発掘された『鉄人』をご神体とし、自分たちも『鉄人』へと至ることを目的としている宗教。

 新興宗教ではあるが、『鉄人』の破壊的な魅力に取りつかれる人々は後を絶たず、急速にその勢力を強めている。

 現在はディガーの発掘した遺跡の部品などを研究解析し、現代の世のために使うようにしている。

 そのため、鉄人教の恩恵を受けた一部の都市では『機械』を模倣した技術が試験運用されている。


鉄の世界樹

 世界にいくつか存在している鉄人教の拠点。

 地面に深々と突き刺さった巨大な樹のような建造物を根城とし、そこで生き残っていた機械を使って、遺跡から出土した物品を研究解析している。

 今回のお話の舞台となる場所から一番近い鉄の世界樹のあった場所が、かつて『エデン』と呼ばれ、世界最高の技術を持っていた国家であり、リュウとアインが目指す最終目的地でもある。

 実のところ、世界樹と呼ばれている鉄の杭は、最終戦争の末期で使われたやけくそ兵器であり、敵地へ杭をぶち込みながら、中に兵士を数百万単位で搭乗させ、杭が刺さった後はそのまま侵略活動を行うという、一種の特攻兵器である。

 現在は地中深く突き刺さった杭を取り除く事も出来ず、ただ内側に人間が活動できるスペースを見出し、そのまま活用しているだけである。


反鉄人教組織『錆』

 急速に発達した鉄人教に反発する人間が集まった組織。

 鉄人は過去の最終戦争を引き起こした原因であるという推論に基づき、鉄人を現代世界から排除しようと活動している。

 ある一面で世界の役に立っている鉄人教とは違い、『錆』は妄想ともとれる思想を基本に置いて鉄人教に反発しているため、世間からの信頼は受けず、組織の人間は狂人ととらえられがち。

 また、ディガーに対しても『鉄人教を支援している』として反発している。


◯主要キャラクター

 リュウ 主人公、男性

  リザードマンの青年。精神年齢は二十代半ば。

  世界各地を放浪しながら、その日の糊口をしのげる程度に働き、ブラブラと旅を続けている。

  その来歴からある程度の荒事にも慣れており、窮地を脱する能力や知識も備えている。そのため、たまに用心棒まがいの仕事を請け負うこともある。

  また、世界各所で知人友人を作ったり、悪縁を招くこともあり、あらゆる意味で顔が広い。

  武器と呼ばれるものが流通し始めたこの世界でも、徒手空拳を貫き、その腕一本で生き抜くだけの技量も持ち合わせている。

  彼の旅の目的は過去に生きていた『人間』へのあこがれ。

  過去の世界で覇を唱えた種族、人間に自分もなりたいという、年柄に合わない子供っぽい憧憬が原動力となり、あまりお金にはならないディガーの仕事も請け負い、日夜遺跡に潜っては過去の遺産に目を輝かせる。

  ディガーとしての能力は頭抜けており、どんな遺跡でも最奥まで潜りこめるとディガーギルドでも噂されるほどで、隠れたファンも多いとかなんとか。

  そんな中、とある遺跡の最奥に安置されていたカプセルを見つけ、その中に入っていた少女と出会い、鉄人教やその反発組織が少女を狙っていることを知り、巻き込まれながらも少女を守りながら追手から逃げ続けることになる。

  その果てに、少女から『人間とは』という答えの一つを授かる。

「俺ぁ、『人間』ってもんを見てぇ。いや、なりてぇ。だからテメェをエデンまで連れて行ってやる」

「それが『人間』だっていうなら、俺は何のために、ここまで来たってんだ! テメェの下らねぇ言葉遊びに、いつまでも付き合ってらんねぇんだぞ!」


 アイン ヒロイン、女性

  リュウが発掘した遺跡の最奥に眠っていた少女。神秘的な銀の長髪、白い肌に赤い瞳、アルビノっぽい外見特徴。でもアルビノではない。おっぱいはそれほど大きくないけど、小さいわけじゃない。身長を含め、全体的に標準的な体形。

  カプセルの中で冷凍睡眠をしており、リュウが解放することで意識を取り戻す。

  肉体年齢は十代半ばであるが、喋り方や立ち居振る舞いから老成したようにも見える正体不明の『生身の人間』

  鉄人のように固い肌や、内蔵武器などを持たず、針で刺せば血が出て、当然のように腹を空かせ、また排泄行為も行う。真っ当な人間。

  ただ一つ、違うことがあるとすれば、肉体の成長が止まり、あらゆるケガや病気は瞬時に治ってしまう特異な体質のみ。

  正体は最終戦争で誰もが追い求めた『不老不死』であった。

  究極のナノマシン技術によって生み出された少女は、最終戦争でも死ぬことなく、全滅した同朋の後追いをすることも出来ずに、自らをカプセルに閉じ込めて永遠の眠りにつくつもりだった。

  それをリュウに邪魔され、カプセルも再起動不可となったため、代案を探すためにリュウを連れまわして世界を回ることにする。

  目的地は『エデン』と呼ばれる、最終戦争以前に最大の技術力を有していた国の跡地。そこへ行けば、アインを殺す手段も、リュウを人間にする手段もあるかもしれない、なんて嘯きながら。

「あーあ、最悪の目覚めだわ。爬虫類なら爬虫類らしく、地べたを這いずり回りなさいよ、デキ損ない!」

「……アンタは『人間』なんかになるんじゃない。あんな最悪に醜くて出来の悪いモンは、もうこの世の中に必要ないのよ」


 ブラッド 鉄人教、男性

  鉄人教の実行部隊。コボルドであり、その外見的特徴に見合って鼻が利くため、追跡などが得意。

  過去の世界で地上に覇を唱えた『人間』に憧れた一人であり、鉄人教の教えに従えば、いつか自分も最強の肉体を手に入れ、鉄人になれると信じている。

  そのためにどんな悪事もやってのけるし、善人だってぶっ殺す。

  今回は鉄人教の指示によって、目覚めた『不老不死』を追跡し、それを鉄人教の本部である『鉄の世界樹』へと持ち帰ることを目的としている。

  リュウとは何度か顔を合わせたこともあり、爪を交えたこともある。

「生身の『人間』になってなんになるッ!? ひ弱な身体じゃ、何も成し遂げる事なんてできやしねぇッ! お前もなりたいのは、絶対無比の鉄人なんだろぉッ!?」


 アスカ 反鉄人教組織『錆』、女性

  鉄人教と反発している世界的な組織『錆』の構成員。牛の特徴を持つ『タウラス』という種族の女性。おっぱいがでかい。黒い短髪で側頭部から牛の角が生えており、しっぽもある。

  過去の最終戦争の再来を危惧している組織に所属しており、鉄人の発掘がその引き金になるのではないか、と考えている。

  実際、過去に鉄人の一部が発掘され、その暴走によって故郷が壊滅している。

  事件は鉄人教によって隠蔽され、生き残りもほとんどが殺されたが、彼女は唯一生き残った。

  そのため、鉄人を崇拝している鉄人教とは真っ向から反発しており、組織理念を体現したような人物。

  そのためディガーとも折り合いが合わず、リュウとも反発し続けている。

  今回、リュウが発掘した少女は鉄人に見えないながら、他の亜人種とは明らかに違う何かを感じ取り、その調査のためにリュウに接触する。

  その過程でアインが鉄人ではないにしろ、危険な何かであることを確信し、その抹殺に乗り出す。

「あなたは! あなたたちは、またこの世界が滅びるような、過去の最終戦争が再発しても良いっていうのッ!?」

「私には守りたい世界がある。大切な人がいる。あなたは……そうじゃないの?」


◯物語構成

 プロローグ、エピローグを抜いて四章構成。


 一章

  世界観の説明とリュウがアインと出会うまで。

  とりあえずこの世界にまともな『人間』はいないこと、リュウが生業としている『ディガー』の説明と、過去の遺産が眠っている『遺跡』、そして遺跡が機械の集合体で出来ていることを読者に理解してもらうために、一章を丸っと使う。

  ディガーと鉄人教の関係も描ければなおよし。錆の存在はにおわせる程度で。

  一章の最後で遺跡の最奥で眠っていたアインと出会い、ケンカして脱出するところまで。


 二章

  鉄人教と錆と反発するリュウとアイン。

  一章で発掘して来たものを捌くためにディガーギルドを訪れて、鉄人教の人間にアインを疑われる。

  アインも引き取るという鉄人教に対して、リュウはそれを断る。

  アインはリュウが『人間』になるための手がかりだと考えているし、アインも嫌がってるし、アインを目覚めさせてしまった責任もあるため。

  鉄人教は表向きは素直に手を引くものの、すぐに実行部隊を送り込み、リュウを殺害してでもアインを手に入れようと動き出す。

  そこで出動したのがブラッド。得意の追跡能力を駆使してリュウを追いかけ、ひと悶着を起こす。

  さらに錆の勢力も介入してきてゴタゴタしてきたところで、アインはブラッドの手に落ち、鉄の世界樹へと連れ去られる。


 三章

  アインを追って鉄の世界樹へとブッ込みをかけるリュウ。

  連れ去られたアインを追って、錆を利用して鉄の世界樹へと突撃するリュウ。

  当然のように鉄人教に迎撃されるが、錆の勢力も鉄の世界樹へと強襲をかけたので戦況はごちゃつく。

  一方でアインは鉄の世界樹がある場所が『エデン』だと勘付き、もはやこの場所でも自分が永遠の眠りにつく事は不可能だと悟る。

  生きながらえることに絶望し、死にすら拒否されたアインは心根を折られかけるが、そこへリュウが助けに来る。

  アインはリュウへ絶望を語り、人間なんて憧れるようなものではないというが、リュウはそんな言葉を蹴飛ばす。

  自分の夢見た『人間』はそんなものじゃない。

  自分の目指す『人間』はもっと素晴らしいものだ。

「いくらテメェが見てきたモンが真実でも、俺の中の理想まで取り上げさせないッ! テメェが『人間』を下らねぇと抜かすなら、俺がテメェに誇れる『人間』になって、テメェの絶望だって挫いてやるッ!!」

  希望を失わないリュウに中てられ、何とか立ち上がるアイン。

  二人で手を取って、いつかお互いに目的を果たすことを誓い、改めて旅仲間としての契約を結ぶ。


 四章

  ラストバトル。

  鉄の世界樹から脱出しようとするリュウとアインだったが、それを阻むのはブラッドと、目覚めた鉄人。

  長年の研究によって、ほぼ故障していた鉄人は再起動し、リュウとアインに襲い掛かる。

  だが、アインはナノマシンの全力を出して鉄人に応戦。

  体組織を劇的に変貌させ、鉄人にも負けず劣らずの性能を手にし、鉄人の相手を引き受ける。

  リュウはブラッドと対峙し、同じ夢を有した二人は、その小さく、しかし見過ごせない差異の所為で拳を交えることになる。

  またアインはナノマシンの力をフルに使って、鉄の世界樹に眠っていた未研究の発掘品の一部を復活させ、その大火力でもって鉄人を灰と化す。

  大勝をおさめた二人は、そのまま鉄の世界樹から脱出し、二人の目的成就のため、世界を渡り歩くのだった。


二巻への展望

 鉄の世界樹に眠っていた遺産を復活させるほどの能力を持っていたアインは、鉄人教にとっては、どうあっても手に入れたい存在となり、さらに鉄人教に狙われることになる。(ちなみにアインの能力では、完全に故障している発掘品を復活させるのは不可能だが、鉄人教はそれを知らない)

 また、鉄の世界樹を制圧し、表舞台では勝利者となった錆は世界的に有名なテロリスト集団となる。誰も手が付けられない、と噂される組織となったのだが、鉄人教がアインを手中に収めれば状況は逆転されると思い、アインを追いかけることになる。

 当のアインはリュウと共に、しばらくはリュウの夢を叶えるための旅を続ける。

 目標はミュータント研究施設があったとされる地であった。

 そこならばリザードマンのトカゲ要素を抜き去り、人間要素をぶち込むことが出来るのではないか、という感じ。

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