第7話 07
中二の女神はすっかりスライム役を引き受けることに慣れてしまっていた。
そんな時、悪意を持った作者たちに目を付けられたのだ。
悪意の作者は女神のスライムを連れて、ダンジョンへ行かなかった。
と、なれば。
当然、スライムのレベルは上がらない。レベル上げをしに行かねば神の力を取り戻せず、女神に戻ることはない。
これらはフィクションといえども設定された結末を迎えるまで、具現化は終了されない。上級の神たちが決定したことなので女神にはどうすることもできない。
設定された終局地点へのプロセスはダンジョンでのレベル上げということだ。
悪意の作者は女神の美しい容姿と極上のプロポーションを知っていた。スライムになった彼女をホテルに連れ込んだ。
あくまでもスライムは主人公が成り上る為の手段であり、脇役に過ぎないのだ。ダンジョンには行かず、攻略のプロセスを踏ませない陰湿行為が横暴をきわめていく。
「男を磨くにはダンジョンよりもホテルで夜を明かすことだ」と、必須事項であると言い放ち、強引に連れ回したのだ。
面白いドラマとし成立するか審査もあるため、神たちの目にやり過ぎという見方をする者はいない。そのシーンでは抵抗すればするほど高評価に繋がった。
ジャンルとしてバッドエンドも怪事件の迷宮入りも許されている。ドラマを盛り上げるために痴情のもつれなどは返って肉薄するので、有効とされる始末。
小説が実写化を超えて現実のこととして具現化されている全ての世界の出来事には、何処かで神たちの視聴の目が光っている。
何といっても神たちは永遠の寿命がある。
不死身の存在なので時間ならたっぷりとある。
たとえ神族の名誉を損ねる過剰な作品だったとしても、人間達からはいつでも力をはく奪できると、とても悠長な姿勢であった。
上級神たちは、常に売れっ子と上流階にいて貴族のゆえ、下劣な役は下級の者に命じて嫌な役を回避する。
上級神は位が同等なので、「尊重されないなら全てを白紙に戻して権限と名誉をはく奪する」と作者に交渉できる。さすがに作者たちも今さら下界の片隅に戻されたくはない。ほとんど脅迫だが、彼らもお偉いさんには媚びを売るしかない。
人間の小説を最初に取り上げたのも上級神だ。彼らさえ楽しければそれで良いのだ。神界も格差と差別が横行している。
転生者の小説が話題になる以前は、そこまで酷い仕打ちはなかったと、中二女神は俺の前でまぶたを腫らすのだった。
ダンジョンも魔物も、魔法もギルドも勇者も、冒険者も。神と地上の存在以外は全て転生者たちの書いた創造の産物だという。
転生者たちは上級の神貴族たちの寵愛を受けると、それらを逆手に取り、女神たちを破廉恥冒険譚に引きずり込んでいくようにまでなった。
一つの冒険が終わると転生者は普通の人間に戻され非力となるため、可愛い女神を手籠めにするにはそういう甘い罠という手段を用いる。それを良しとする女神も多々いるようだが。
中二の女神はその意に従いきることができずに、ついに逆らったのだ。
役の申し出を拒絶し、しつこく陰湿に迫る作者の一人を『スパァ──ン!』と平手打ちにしてしまった。
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