④大海のアクタ ~僕たちは世界の果てで出会い、そして恋をする~

ひのえ之灯

プロット

〇参考作品:なし


〇世界観

 はるかな未来、環境破壊が進んだ地球。人類が住むには適さなくなると判断される。自然回復の推定期間はおよそ一万年。地球とともに滅ぶか、コロニーで耐えるか、人類に与えられた選択肢の中から選んだのは新天地への旅立ちだった。


 安全が担保された猶予期間は百年。その間に人類が生存可能な惑星を探すため、数万の探査プローブを外宇宙へと射出。計画に携わった科学者や技術者の名前がつけられた探査プローブのうち、タイムリミットまでに居住可能惑星発見の報告を返してきたのはたったの七基。


 情報から人類が生存可能な生態系であることは間違いないが、辿り着いた先で何が起きるか分からない。どんな先住民がいるのか、どんな病原菌がいるかも不明。どんな危険があるかわからないがゆえに一つの目的地に絞るのではなく、すべての惑星へと旅立つことを決める。人類は七隻の巨大移民船に乗り込み、いつか自浄作用によって回復した地球に戻ることを夢に見ながら地球を後にした。


 それから四百年後、移民船アストラは探査プローブ〈Hayashi〉(日本出身の天文学者、林博士の名前がつけられている)の信号途絶を確認。しかしすでに出発して四百年が経過しているアストラは他に選択肢がなく、途絶えた信号が発信されていた方向へと進み続け、探査プローブが発見したであろう居住可能惑星を探す旅を続けていた。


 さらに五十年後、移民船アストラでは〈Hayashi〉が発見できないことで少しづつ暗い空気が漂い始める。林博士の子孫であり、アストラで司書として生活する十六歳の少年ナギ・Hayashi・フランドルは、先祖の名前がつけられた探査プローブからの信号途絶により、移民船内で有形無形の圧力にさらされ、鬱屈した人格形成を強いられている。


 ナギが不時着する惑星は「仮名アルファ」。


 アルファは全体の90パーセントを海洋で占める海洋惑星。存在が確実ではあるがいまだ発見されていなかった言語を介する先住民族〈地球外先住種族アクター〉が存在する。



〇主要キャラクター

◆ナギ・Hayashi・フランドル:主人公、男。

容姿:黒髪黒瞳、運動が苦手で少し華奢。

性格:抑圧された子供時代で鬱屈した人格になっているが、根は真面目で冒険小説に憧れる少年。

台詞イメージ:(自分の命を犠牲にして災害を食い止めるラストシーン)「僕はいくじなしなんかじゃない……僕が、僕がアクタを守るんだ!」


◆アクタ:ヒロイン。惑星アルファの先住民族で、海洋生物。

容姿:全身がつるりとしていて、青みがかっている。頭髪はなく、代わりに小指の先ほどの触覚が髪のように生えている。遠目にはボブカットに見える。二足歩行、陸上生活可能。両足の間に吸盤があり、海の中では両足を吸着させて一本にすることで、足ヒレで人魚のようなフォルムになる。

性格:愛嬌があり好奇心旺盛、物おじしない。寂しがり屋。責任感が強い。

台詞イメージ(ナギを助けに行くラストシーン)「ナギ、アクタを守る! なら、アクタもナギを守る! どっちかだけなんて嫌だ、一緒に守るの! 一人で死ぬなんて許さないから!」


◆オータム:ナギが不時着する際に乗っていた脱出艇の専用AI。

容姿:なし(声だけ)

性格:冷静沈着で理論的だが、人間くさく、皮肉屋。

設定:二巻以降で出す予定の裏設定として、アストラで秘密裏に行われていた人造人間プロジェクトで作られた人造人間。アストラの艦長の姉をモチーフに造られたが、別の人造人間が暴走したことで脱出艇に高性能AIとして組み込まれた。記憶は封じられている。


〇物語の構成

文庫一巻、十万~十二万字予定。四章構成。

二巻に繋げる際は惑星の他の生物との関わり合いや、アストラで秘密裏に行われていた人造人間計画で作られた人造人間の暴走、オータムが記憶を取り戻す話などに広げます。



【プロット】

◆一章:人類との離別

 ナギはいじめっ子から逃げ、閉鎖区画へと追い詰められる。隠れた先は緊急脱出船オータムの船内。しかし、いじめっこ達に見つかってしまい、外から操作されたことでナギを乗せたオータムは緊急事態が発生したと誤認、移民船からの脱出シークエンスに入る。


 脱出と同時にショートジャンプで危険区域を抜けるため、乗務員に座席に体を固定させるよう告げるオータム。焦ったナギは座席に座ろうとするが間に合わず、射出が開始される。不完全な体の固定によって振り回されたナギは頭を打ち失神。力の抜けた手が運悪く準備中だったショートジャンプ開始ボタンを叩き、座標設定が不完全なままにショートジャンプ航法が開始される。


 ワープに使用する別次元、暗黒空間(ヴェロウ・アダー)の狭間に呑みこまれたオータムは通常では存在しないはずのかつてワープに失敗した機体が散乱する空間にダイブ、オータムの操船でほとんどを回避するが、わずかながら接触して損傷。それでも通常宇宙へのワープを完了させ、偶然近くにあった人類が生存可能な惑星へと不時着する。



◆二章:地球外先住民族(アクター)

 惑星アルファ(仮名)に不時着したオータム。失神から目覚めたナギは見渡す限りの大海原と、そこに浮かぶ緊急脱出船オータムという状況に驚きながらも、初めて味わう移民船以外の世界に感動する。


 脱出船に搭載されたAIオータムの指示で脱出船の破損部位のスキャンと修復を実行。完了には数日かかると推定される。また、脱出船を救助待機モードに変更していると、巨大な白鯨が現れ、襲われそうになる。咄嗟にオータムが放った音響爆弾によって逃走させることができたが、代わりに音に惹かれて海から何かが現れる。


 ナギとオータムは敵性生物かと身構えるが、現れたのは海洋生活に特化した種族の少女だった。ナギは初めて出会う〈地球外先住種族(アクター)〉に驚いて思わず「アクター?」と口にし、少女は不思議そうに自分を指さして「アクタ、アクタ?」と繰り返す。それは名前じゃないと慌て、自分はナギだと自己紹介。改めて少女に名前を聞くが、少女は「アクタ」という名前を気に入ったようでアクタと繰り返す。言葉が通じないことで面倒になり、ナギはアクタという名前を受け入れる。


 オータムから少女が言葉らしきものを話しており、解析のために引き留めて欲しいと依頼を受ける。ナギはちょうど昼飯の時間だったこともあり、ナギに昼飯を勧めることにする。プランクトンから料理を作り出す調理プラントでカレーを作り、先に食べて見せる。アクタも気に入り、二人は打ち解ける。遠くに白鯨が見え、アクタはそれを指さし「ラプタ」と言う。白鯨(ラプタ)は船の様子を伺うように泳ぎ、すぐに離れていく。


 それから数日、頻繁にご飯を食べに遊びに来るアクタ。言語解析が進み、ナギは単語での会話ながらアクタと意思疎通をする。改めて名前を確認するが、少女の一族には名前がなく役割で呼ばれていて、少女は〈海巫女〉と呼ばれていることが分かる。しかし、少女のアクタと呼んで欲しい様子を察し、ナギはそれを了承する。


 魚の獲り方をアクタから習う。言葉が通じないため身振り手振りで真似をするがうまくいかない。ナギが失敗する度に「リライア!」と叫ばれるため、いじめっこにバカにされている気分になる。早くその意味を知りたいと思うが、同時に知りたくないという恐怖も感じるナギ。オータムはアクタの様子からそれほど悪い意味ではないと考えるが、どちらにしろあと数日で解析が完了するため何も言わない。


 オータムによる緊急脱出船のスキャンが完全に完了。ほとんどの部分は修復できたが、通信機器の使用にはワルター機関の修復が必要と判明。ワルター機関は通常可動には問題ないが、ショートジャンプや遠距離通信に使用可能な領域まで修復するには半年かかると判明する。それまで移民船アストラと連絡が取れないため、この惑星で暮らすことにする。


 アクタの案内で大陸を発見。アクタとともに探索したものの、長く陸地にいれないアクタのために海に戻ることを決意する。オータムから理由を問われ、アクタとの交流を記録に残して本にしたいというナギ。


 アクタの言語解析が完全に終了。オータムの補助プログラムを使って会話ができるようになる。アクタと会話できるようになり、アクタが暮らす海の中の集落について知る。失敗する度に発していた「リライア!」が「惜しい、前より良くなっている」だったと知り、馬鹿にされていたと疑心暗鬼になっていた自分がバカバカしくなり、アクタに謝罪する。ナギはアクタからバカにされるようなことはないんだ、と少しだけ信じられるようになる。



 アクタを信頼したナギは、二人まで登録が可能なオータムの製造システムに管理者として登録しようとする。ナギの許可がなくとも好きなように食事を作って食べたり、ナギのサポートで代わりに物を作ったりできるようにする。オータムは一度登録すると死亡するまで解除できないと言うが、半年後にはこの惑星を離れることから構わないとナギは判断。登録を完了する。


 赤い潮の襲来をアクタが教えに来る。一カ月に一度訪れる赤い潮の発生は、十日ほどで無害化して海に豊穣をもたらすが、無害化する前に赤い潮に触れた生物は死滅する。調査したいオータムだが、アクタが必死に逃げようと懇願するため、一旦距離を取る。


 赤い潮の無害化までの十日間、調査に行きたいナギを見張るためアクタが初めて泊まる。女の子と二人きりで夜を過ごすことに緊張するナギだが、アクタを探して集落の仲間達がやってくる。


 ナギのことを知らなかったため敵と誤認して攻撃をしようとする集落の面々。しかしアクタが必死に止め友人だと説明したことで、敵対するかどうかの判断を族長に委ねることになるが、戦士長からはよそ者として強く警戒される。弱肉強食の一族の価値観から、弱そうなナギの評価は低い。


 集落への移動途中の会話。海でもっとも強い生物である白鯨(ラプタ)がオータムを警戒しながらも離れようとしない理由について説明を受ける。赤い潮の無害化のあと、餌を食べに集まって来た魚を食べるために白鯨(ラプタ)がやって来る。ただし、白鯨(ラプタ)は食事中に高速で海の中を回遊する特性があり、その余波で集落が破壊されることが多い。戦士達はそれを防ぐために白鯨(ラプタ)と戦っていると語る。ただし戦いは常に白鯨(ラプタ)が一方的に勝利し、被害を抑える戦いに終始している。アクタは赤い潮が発生したため白鯨(ラプタ)との戦いが近く、みんながぴりぴりしていると語る。


 集落に到着。戦士長ほど頑なではないが、族長もまたがナギを隣人として認めることに否定的。ナギは積極的に集落に関わるつもりがなく、半年間だけ隣人としていたいと願う。多数決で全てを決めるアクタの一族は、戦士長の一派から弱い者を受け入れる余裕はなく、白鯨の対策で忙しい反発。反対多数で決定しそうになる。


 アクタとの交流を手放したくないナギは、認められるだけの強さを見せるため、白鯨を撃退して見せると宣言する。


 オータムの音響爆弾によって白鯨が逃げ出した事実から、音響爆弾が発する音波の中に白鯨が忌避する音があると推測するナギ。音響爆弾の作成には一発二日かかるため作成は現実的ではない。生物学の本の知識を思い出し、オータムとともに可能性の高そうな数種類の音波を特定。一つの音波に特化した小型の音響爆弾を作成する。音波を特定すれば、その音波を特定する道具を作成することでアクタ達が今後も自分達で対応できると考える。


 ナギを信用できない戦士長の一派が暴走。海に巨大な棘のついた柵を作り、白鯨を村に近づけまいとする。しかし、それによりわずかに傷を負った白鯨が怒り、村の方向へと進路を変える。


 集落を守るため、ナギは遠隔地から発射する予定だったが白鯨の前に立ち塞がり、音響爆弾を一つづつ発射。どれが効果があるか調べるために一個づつ発射する必要がある。予定外の行動のため、逃走のための限界距離ギリギリまで接近されても効果を確認できない。それでもアクタと一緒に逃げ出さず、最後の一発を使用。白鯨に効果が認められ、白鯨は集落から離れていく。



◆三章: 融和と弊害

 白鯨撃退によって集落の一員として認められる。オータムによって白鯨を撃退する音波を発生させる楽器の作成が行われ、実際に白鯨に効果が認められたことでより深く感謝される。時折生活に必要な道具などを作ってオータムの製作機能で作ってあげるようになる。オータムは本当に作ってよいかと問うが、ナギは問いの意味がわからず実行を命じる。


 それから集落の近くに脱出船を移動して、アクタ達の一族と近い位置で生活をするようになる。しかし、漁で使う必需品や、生活に便利な道具を提供しすぎたことで、集落の若い者がナギに物をねだるようになってくる。特に狩人に若い者が多く、傾向が顕著。


 ナギの道具に執着する若人に不安を覚える族長。族長は「若人の心が腐る」ため、あまり村に来ないようアクタに伝言する。言葉の意味が分からず、ナギをいじめていると勘違いして脱出船に泊まり込むアクタ。


 アクタは久しぶりに泊りがけで何日か生活することで、一族の若人がひっきりなしにナギに何かを作るように依頼し、狩りの道具の補修などの生活に必要な作業をサボるようになっている現状を目にする。


 自分が間違っていたのかと悩むアクタ。ナギも頼られることがうれしくて物を与えていた自分を顧みて、オータムに相談。オータムは怠け癖がつくことで、自分達がいなくなった後に彼らが苦労する可能性を伝える。ナギはオータムが本当に作っていいかと質問していた理由を理解する。


 優しく説得して断ることで依存を断ち切ろうとするナギだが、一度楽を覚えた若人たちは不満をあらわにし始める。過激な言動に不安を感じ、族長と相談して一度村から離れることを決める。


 若人達が族長とナギの会話を盗み聞きしている。若人達はナギの強さの源はオータムにあると思っており、それを手に入れることで自分達が村の主流になれると考える。ナギから脱出船を奪いさえすれば、強者を尊ぶ一族は全てを容認すると行動に移すことを決定する。面倒であればナギを放逐してアクタを捕らえればオータムを操作できると勘違いしている。


 村から離れるナギに別れの挨拶をするため、族長と戦士長、アクタもやって来る。暴走する若人から狙われる可能性があるアクタをこの地を離れるまで預かってほしいという族長。ナギと脱出船が手の届かない場所にいなくなれば、アクタが戻ってきても若人達も落ち着かざるを得ない。そんな中、若人達が接近してくるのをオータムが感知する。


 アクタを連れて行くかどうか悩んでいたナギだが、族長と戦士長が若人を止める時間稼ぎに出て、時間的余裕のなさからやけくそ気味にアクタを連れて行くことにする。脱出船は村から離れる。


 落ち着いた場所で夜を明かすナギとアクタ。ずっと一人でいてさみしくないかと問うと、アクタは「もう慣れた。それに、いまはナギが一緒にいてくれる」と発言。愛の告白のように感じ、ナギもまたうれしく思いつつ、自分が移民船に戻ったあとで一人残してしまうことを考え、自分もだとは言えない。せめて一族との間に軋轢が生まれないようにしたいと考えるが、いいアイデアが浮かばないでいる。


 しばらく落ち着いた生活を送る二人。そんな時、海底火山の活動を放出していたドローンで確認、それと同時に赤い潮が発生し、発生源の大まかな特定ができたことをオータムが報告する。


 事前にドローンに搭載していた分析装置で赤い潮を分析。人間が利用するワルター粒子が海水に触れたことで赤い潮が発生したと発覚する。ワルター粒子は自然には発生しない人間が作った粒子であるため、探査プローブHayashiが該当地点に沈んでいる可能性をオータムが提唱。いまは発信をしていないためビーコンが故障していると予想されるが、修理できれば移民船へ連絡できる。ナギはHayashiがあるということはここが移民船の目的地ということになり、移民船を呼べばここに定住でき、アクタと離れなくてすむと考える。そのため、Hayashiが存在することを願いながら探索を開始する。


 Hayashiを発見。赤い潮による防御フィールドの崩壊は三十分しか持たないため直接プローブに向かうことは現実的ではないと判断。かといって遠隔起動も電波が赤い潮によって阻まれるため、直接ケーブルを刺して簡易修復。通信に適したポイントまで移動、通信実施の計画を立てる。

 赤い潮の完全防御が可能なケーブルの作成に半月かかるため、一時間で崩壊する半被覆ケーブルを一本作成。


 泳ぎの得意なアクタにケーブルを渡し、十五分しか持たない簡易防護フィールド発生装置を身に着けてケーブルを装着しに行ってもらう。種族的特性で泳ぎが早いため、十分で問題なく行き来可能で、ケーブルの装着完了。プローブの自己修復装置を稼働させて仮補修。通信可能ポイントまで移動し、移民船へとHayashiからのビーコン信号を発信することに成功する。


 移民船アストラが通信を受信。Hayashiからの信号に沸き立ち、すぐに向かうことにするが、その瞬間、再び信号が途絶える。しかし、地球とは違い距離が近いことで、信号の位置をマークすることに成功。急行する。


 信号の発信を見守るナギ達。そこへ一際大きな海底火山の爆発が発生。強烈な地崩れが発生し、Hayashiが巻き込まれて修復箇所が破損。さらに落石によって破損が広がり、Hayashiは自動で緊急警報を発信する。安全よりも危険の有無を重視する探査プローブは、自己に危険が及んだ時全ワルター粒子を使い切るまで危険区域情報の発信を行うように設計されており、それによりこれまでに数倍するワルター粒子が放出される。


 爆発的に海に広がる赤い潮。これまでのように避難をしてどうにかなる速度ではなく、このままでは惑星の半分を呑み込むとオータムが警告する。しかし、プローブの自己修復機能を作動させるには直接操作する必要があり、接続していたケーブルも融解してしまっている。アクタの持つ防護フィールド発生装置は現在の高濃度の赤い潮では五分しか持たず、また操作方法を知らないため対応不可と判断。ナギは自分が持つより強力なオータムの防護フィールドなら十五分保つことを確認し、自分が行ってプローブを直接操作することを決める。(時間的にぎりぎり)


 止めようとするアクタを拘束し、必ず守るからと告げて海に飛び込む。抱き締められたことで、自分の胸の高鳴りに困惑するアクタ。拘束されたことでナギを止められない。


 プローブへ到着したナギはすぐに自己修復プログラムを稼働させようとするが、接続プラグが破損している。仕方なく外壁をはがし、配線を直結して直接動作させようとする。時間はギリギリだが間に合うと思った時、海底火山が再び鳴動。崖崩れが発生し、岩に挟まれてしまう。


 身動きが取れなくなり、怪我で意識が遠のくが、「僕はいくじなしなんかじゃない……僕が、僕がアクタを守るんだ!」と最後の力を振り絞ってプログラムを稼働させることに成功する。しかしそのまま意識が朦朧となる。


 巫女の力で崩落のイメージを読み取ったアクタ。迷わず助けに海へ飛び込む。


 岩がずれたことで激痛で目を醒ますナギ。アクタが海上からやってくる幻覚を見たと思ったが、それは本当にアクタだった。文句を言うナギを抱きしめて黙らせるアクタ。岩をどかそうとするが、うまくいかない。そこで二人の防護フィールドの崩壊が始まり、せっかく自分が守ろうとしたんだから、自分を諦めて一人だけで逃げてくれと諭すナギ。


 ナギはその言葉を拒否。「ナギ、アクタを守る! なら、アクタもナギを守る! どっちかだけなんて嫌だ、一緒に守るの! 一人で死ぬなんて許さないから!」と泣きながら言い、次にそんなことを言ったら自分も死ぬ脅してナギの口を封じる。その時、再び海底火山が鳴動。揺れに合わせて力を合わせて岩を動かことで脱出できた。海上を目指すが、途中で防護フィールドが完全に崩壊する。


 体を毒に蝕まれていくが、アクタは種族特性で多少の耐性がある。もう一度自分を置いて逃げろと言いかけ、自殺をほのめかしたアクタの気持ちにぐっとこらえるナギ。途中で意識を失ったナギを抱え、アクタは毒に蝕まれながら脱出船の甲板へ到着する。


 オータムから二人とも毒が致死量になっていることを説明されるアクタ。意識を失ったままのナギを抱き抱え、なら一緒に死ぬまでと目を瞑る。「ナギとなら、それもいい。好きだよ」と芽生えたばかりの恋心を言葉にする。そこへ空から轟音と光が降り注ぐ。

 


◆四章:恋は永遠に

 目を醒ましたナギ。ベッドの横にはアクタがいてナギを見つめている。体に毒素の影響の跡が残っているが、二人とも生きていることに驚く。オータムから状況説明を受け、自分がタイミングよく到着した移民船アストラに回収され、治療ポッドで治療されたことを知る。助かったことを喜び合い、二度と馬鹿なことをしないでくれとお互いに言い合って笑う二人。


 大陸に植民し、生活の基盤を作る移民船アストラと移民達。外交官の職をもらったナギは大地に根付こうと頑張る仲間達を尻目に海へ出る。そこでアクタと再び会い、二人でともに生きて行こうと言う。ナギは人間の習慣に則って指輪を嵌め、二人は結ばれる。

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