刺し花

智依四羽

刺し花

花と共に在る。


産声を上げれば、あなたは剣山。

或いは、フローラルフォーム。

生まれたからには、人は花まみれになる。


ある日は、言葉遣いという花を。

ある日は、英会話という花を。

ある日は、スイミングという花を。

ある日は、作法という花を。

ある日は、文学という花を。

ある日は、法律という花を。


刺されることを望んだだろうか。

否。

望んでいない。


にも関わらず、人は花を刺され続ける。

それは最早、理想の体現。

否、押しつけと言うべきか。

とにかく人は、人に花を刺す。

花を刺し、理想の人間へ近付けさせる。


ある日は、理想という花を。

ある日は、建前という花を。

ある日は、遠慮という花を。

ある日は、怒号という花を。

ある日は、罵声という花を。

ある日は、暴力という花を。


誰も、刺されることなど望んでいない。

刺されたところで、美しくもない。

ただ、痛いだけ。


人は、花を指す。

赤、白、黄、色鮮やかな花を刺す。

やがてそれは大きな束となり、芸術となる。


しかし人は芸術にはなれない。


棘だらけの花を刺され。

棘だらけの花を握る。


そんな生き物が、芸術に成れる筈が無い。


剣山は、刺される花を望めない。

フローラルフォームも、また然り。

しかし、人は幾つもの花を刺す。


それが例え。

棘しか無い、ただの茎でも。

枯れ果てた、醜い花でも。


命を腐らせる、毒の実でも。

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刺し花 智依四羽 @ZO-KALAR

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