「ハズレ」天女のお騒がせな恋
有間ジロ―
第1話 プロローグ
この世界に伝わる伝説。
むかしむかし日照り続きで作物が実らず、人々は飢えて死んでいった。
そんな世界にある日天女が降りてきた。
天女は人間の男と恋に落ち、男の妻になりたくさんの子供を産んだ。
そしてその天女の加護のおかげで荒れ果てた野には花が咲き、作物はよく実るようになった。こうして人々は幸せになった。
千年も前から問題視されていた。
増え続ける人口、温暖化による陸地減少、減り続ける資源。そして過保護にされすぎて細菌やウイルスに抵抗できなくなった人間。人間たちは科学技術を駆使して問題に取り組んだ。しかし自らの力を過信した人類をあざ笑うかのように、ある時点で今度は急激な人口の減少がはじまったのだった。
この世にはいくつもの世界、パラレルワールドが存在しお互いに交わることがないという。
人類の未来が危ぶまれた時それぞれの世界は各々のやり方で抵抗を試み、結果それぞれ違う形で壁にぶちあたった。科学の力での限界を認めた時初めて人々は気が付いたのだった。この世には人知を超える大いなる力が存在するのだと。
ここにある一つの世界は全く女性が生まれなくなった。数百年前から次第に女性の出生が減り気が付いた時には全く生まれなくなっていたのだ。冷凍保存した卵で人工受精でもなぜか女性は生まれない。クローンも試みたが様々な問題が立ちふさがり結局とん挫した。
万策尽きた時、人々が行ったことは“神頼み”である。はるか昔、日照り続きで雨が降らなくなった時“雨ごい”なるものを行ったらしい。今この世界の各地で行われているのは“天女(あま)乞い”である。そして天は人々の声を聞き届けた。天女乞いに応えるように不定期に女性が天から降ってくるのである。降下してきた女性たちは“天女様”あるいは“落花様”と呼ばれ丁重に迎えられた。彼女たちは子孫を残してくれる、まさにこの世界の救世主だったのである。
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