第51話 マクティスの提案

 ハーフエルフの女に案内され村長の元へと向かうロッサ達。


「ここだよ!じゃあね!」


 ハーフエルフの女は名前も名乗らずに去って行ってしまった。そしてロッサ達は村長の家の中へ入って行った。すると見た目が若く見えて身長が高い青年の様な出で立ちでまるでロッサ達を待っていたかのような素振りでそこに居たエルフはこう言った。


「待っていたよ。森に入って来た時から気付いていたがまさかドリアード様に目を付けられるとはな・・・。中々面白い存在のようですね。」


 するとドリアードは微笑しながら目の前にいるエルフに言った。


「マクティスさんには何もかもお見通しのようですわね。」


 ドリアードによるとエルフの名前はマクティスと言うらしい。ロッサはエルフ特有の若い見た目が気になり聞いてみた。


「見た所若そうですけど、おいくつなのですか?」


 興味本位で聞いてみたロッサだったが村長のマクティスから驚きの年齢を聞く事になったロッサ。


「私ですか?私は今年でちょうど千歳になりますね。まぁまぁエルフの中でも長生きしていますかね。」


「私の十倍くらい生きてるのぉ?!」


 マナは物凄い顔で驚いていた。その様子を見てマクティスはマナにこう言った。


「ヴァンパイアでも千歳は余裕で生きますよ。あなたはまだまだですね。魔王ロックハートも若い頃はありましたからねぇ。」


 魔王ロックハートの年齢は知らないが魔王ロックハートの若い頃を知っている口ぶりなので相当昔からこの地で生きているんだろうとロッサは思った。するとロッサは何故空中のエルフ達と離れたのか気になって長年住んでいるであろうマクティスに聞いてみた。


「そう言えば何故空中に行かなかったのですか?」


「ふむ。長い話ですが簡潔に話しましょう。」


 マクティスは何故空中に行かなかったのか説明してくれた。簡潔に言うとこの地の自然を守りたかったらしい。昔はこの辺りの自然は枯れていたらしく美しい自然を取り戻す為に地上に残ったという。その甲斐あってか今は緑が生い茂る美しい森になって行ったという。


 「ドリアード様のおかげもありますよ。」


 最後にドリアードの顔を立てたマクティスはこうも言った。


「ただし最近は自然を広げすぎたのか人間の物流がしづらくなっているらしいのですよ。この大森林はいつか焼き払われるんじゃないかと心配で・・・。」


 そうマクティスが言うとマナがいきなり大声で言った。


「大丈夫よ!そうはさせないわ!ロッサが!」


「だからなんで僕がぁぁぁぁ!」


 するとマクティスは嬉しそうにロッサに言った。


「おお!それではこの村と大森林に関してお話ししましょうか!未来の魔王になる素質を持つ方にこの大森林をどうにかしてもらいましょうか!」


 マクティスはそう言うとロッサを奥の部屋に連れて行き長時間マクティスに拘束されるロッサであった。


 数時間後。全身が溶けそうなくらい疲れ果てていたロッサは奥の部屋から出てきて皆にこう言った。


「なんか、この村の村長になれって言われたぁ。」


 皆はそれを聞くと声を合わせて驚いた。


「ええぇぇぇぇ!」


 更にマクティスが出てきて皆に言った。


「魔王に守られるのなら安心でしょう。それに広がりすぎた森を開拓して行って未来には巨大な国なんか作れればいいじゃないですか。亜人や人間が差別なく暮らせる夢の様な場所にしたいですねぇ。」


「色んな人達が暮らせるって言うのは僕も賛成だけど…話が急すぎて…疲れた・・・。」


 国を作るにしても今ロッサ達は修行の旅の途中でこの大森林に留まっている時間は無いのだ。


「修行がなぁ・・・。」


 それを聞いたマクティスはロッサ達にこう言った。


「修行の旅が終わってからで良いですよ。それまでは私がドリアード様とこの大森林を守りますから。」


「任せてください。」


 そう言う二人にロッサは渋々受け入れたかのような返事をしてとりあえずこのエルフの村を拠点にしようとロッサは提案した。


「とりあえずここにいつでも帰って来れるようにポータルでも作るかな。」


 ロッサは大森林の片隅に魔法陣の台座を作り鍛冶台で魔法陣が刻まれている指輪を作った。この指輪に魔力を込めればいつでもこの大森林に転移できるのだ。


「これでいつでも帰って来れますよ!」


「そうですか。一先ず安心ですね。」


 ポータルを作った後マクティスに今日はもう休めと言われたので休むことにしたロッサ達。ロッサは次の日になったらここから南西に旅立つことをマクティスに告げた。すると旅の無事を祈るかのようにマクティスが宴を開いてくれるという。


「それでは今晩は村全体でもてなそう。」


 すると賑やかな宴が開かれるとロッサは言った。


「この世界の人間は宴が好きだなぁ・・・。」


 隣に居たグローリがロッサの言うことに違和感を感じたのかこう言ってきた。


「ん?この世界?」


 ロッサはすかさず言い返した。


「なんでもないよ!」


 危うくロッサが転生してきた事がバレる所だったが何とかもみ消した。


 豪勢な宴が開かれた後ロッサ達は眠った。とても過ごしやすいのかすぐに眠ってしまったロッサ達。改めてロッサはこの大森林を守って行かなければと感じるのであった。


「未来の魔王の拠点が決まったなぁ。」


次回へ続く・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る