第40話 力の無さ

 ヴァンパイアの村で休息をとったロッサ達は村を出て更に先へ進んでいた。待だんだ先の長い険しい道のりがロッサ達を襲う。


 流れの早い川が出てきたり、道の途中で岩壁に道を塞がれたり、はたまた魔物が沢山いる場所に出くわせてしまったりとまるで意図的に仕組まれているのではないかと思うくらいに大変な道のりだった。


 ヴァンパイアの村を出て一日と数時間経った頃。ロッサ達は一つの町へ辿り着いていた。町全体が元の世界で言うイギリスの様な町並みで異国の地と言う感じがしていてヴァンパイアの町と言われてもおかしくない程それっぽい町だった。町に入ろうとすると一人のヴァンパイアらしき女が声をかけてきた。


「ようこそ!ヴァンパイアの町カストロへ!」


 女はそう言うと町の奥の方にある城の方へと案内してくれると町の中を進み始めた。そんな女の様子を観察していたロッサが疑っていた。


「な、なんか怖いくらいスムーズに進んでいるんだが・・・。」


 そんな風に警戒しているロッサにマナが言った。


「魔王がなんか企んでるんじゃない?」


「それはあるな。罠かもしれん。気を付けよう!」


 二人の会話を聞いていたグローリが全く逆の意見を言っていた。


「意外とウェルカムだったりしてな。」


 そう言いながら城の前まで案内されたロッサ達は異様な静けさを感じ取っていた。まるで標的を確実に落とす動物に狙われているような寒気さだったのだ。


「なんか嫌な予感がするんだけど。」


 マナがそう言うと先行していた女が立ち止まり振り返ってこう言った。


「ここであなた達には死んでもらいます。」


 その言葉を合図に一瞬にして取り囲まれてしまったロッサ達。大勢のヴァンパイアが周りにいるがロッサは落ち着いていた。魔法鑑定で個々の能力を見てみると冒険者で言うAランクぐらいの実力の戦士達だった。だが、今のロッサ達の実力は一応冒険者で言うところのSランクである。大勢に対して四人と二匹では多勢に無勢かと思われたがそんなことは無かった。


 ロッサとグローリが特攻していきマナとアリッサがそれぞれ後ろから援護する形で気絶させていった。数分足らずで大勢のヴァンパイアを倒したロッサ達はこのまま城の中へ入って行った。


 城の中へ入るとさらに大勢のヴァンパイアが待ち構えていた。


「よっしゃあぁぁぁぁぁ!やるぞおぉぉぉぉぉ!」


 ロッサの気合の入った雄たけびに応える三人。


「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 全力で行くロッサ達はとてつもない速さでバッタバッタとなぎ倒して全員無力化していった。


「よし!終わった!」


 そう言うと一瞬の隙を見せたロッサに天井からロッサに向け剣を持った何者かがロッサを斬ろうとした。ロッサはすかさず剣を抜きその攻撃を受け止めた。自分の攻撃を受け止められた謎の男はこう言った。


「流石だな。私を倒そうとしているだけあるな。」


 剣を引くと後方に下がる謎の男は言った。


「我の名は魔王ロックハート!夜の帝王にしてヴァンパイアの王だ!」


 突然現れた魔王ロックハートに皆がそれぞれ言った。


「あ、あなたが魔王ロックハート!」


「あれが私と同じヴァンパイアの王様・・・。」


「凄いオーラだな。本当に魔王の中で一番弱いのか?」


「細っこいし顔が白すぎるぜ?ちゃんと食ってんのか?」


 魔王ロックハートはそんな反応を見て少し呆れながら言った。


「おいおい君達人聞き悪いんまなぁ。私は魔王だぞ?そこら辺の冒険者と一緒にしないでくれるかな?」


 予想以上のオーラにロッサは少し驚いていた。魔王の中で三番目の強さを誇る魔王ゾールとオーラの大きさがほぼ一緒なのである。この時になってロッサは魔王ゾールと戦った時に手加減をされていた事を知る。魔王ゾールはオーラと強さを抑えて戦っていたのだ。


「僕は自分で勝手に強いと思い込んでいたのか・・・。馬鹿だな。僕は。」


 ロッサは自分を強く非難した。


 するとロッサは魔王ロックハートに戦いを申し込んだ。


「魔王ロックハート!僕と勝負しろ!」


 魔王ロックハートはそれを聞くとロッサに向けこう言った。


「いいだろう!少し退屈していた所だ。ヴァンパイアの王の力をみせてやろう!」


 魔王ロックハートの武器はレイピアの様な細い剣だった。それに対してロッサの剣は少し重い日本刀の様な剣だ。ちゃっかりレアな金属を使って自分専用の武器を魔法の鍛冶台で作っていたロッサだったのだ。


 ロッサは最初から全力で魔王ロックハートに向かって行った。物凄い速さで動き魔王ロックハートを押していくロッサだが魔王ロックハートは余裕そうな笑みを浮かべていた。そしてロッサに向けこう言った。


「そんなものか。人間の中では一番かもしれないが魔王と戦うにはまだまだみたいだな。」


 軽く受け流されるロッサは受け流された力をまた更に流れるように太刀筋に力を込めて魔王ロックハートに斬りかかった。


「あ!当たった!」


 見事一太刀入れることが出来たロッサだったが魔王ロックハートの傷は直ぐに癒えた。


「良く当てたな!褒めてやろう!だがヴァンパイアの王の私には普通の剣は効かないなぁ。」


 ロッサはまた懲りずに攻撃を仕掛ける。ロッサが子供の様に扱われている様子を見ていた三人は言った。


「ロッサも凄いけど魔王ロックハートもすごいわ。これで最弱って魔王はどれだけ強いのよ!」


「こりゃあ俺達また敵わねぇな・・・。」


「む、無念。」


 そんな話をしているとロッサが吹っ飛ばされていた。


「君もやるけど、うん。今日はここら辺で終わりにしようか。」


 ロッサは立ち上がりながら言った。


「ど、どういうこと?」


 すると魔王ロックハートが腕を組み言った。


「ゾールから久しぶりに連絡があってな。近々そっちに強者が来るからボコボコにしてやれって言われてな。それと、鍛えてやれとも言われたな。」


 話を終わらせると遠くの方でロッサ達を見ていた三人に対してこう言った。


「君達は三人がかりでかかって来なさい。」


 三人は顔を合わせると息を整え魔王ロックハートに向かって行った。するとグローリの剣は効かずアリッサの弓矢も効かずに唯一効いたのはマナの魔法ぐらいだった。


「私の最大火力の魔法で多少のダメージか。」


「まぁでもすぐ治るんだがね。」


 マナは魔力が尽きその場に倒れた。他の二人も頑張って攻撃を続けたがすぐにやられてしまった。すると魔王ロックハートが嬉しそうにこう言っていた。


「これは鍛えがいがありそうだな。ロッサと言ったか?次から私と毎日戦いの日々を送ってもらうぞ!いいな?」


「は、はい!」


 ボコボコにやられたロッサ達は一先ず一日休み魔王ロックハートと戦う毎日を送るのであった。


「意外と武闘派なんだなぁ。」


次回へ続く・・・。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る