第8話 束の間の休息
徒歩で東の国ブラウンへ歩き続けていたロッサ達は途中で森に阻まれその森の中へと入っていったのだった。
「熱いなあ!この森の中!」
少し苛立ちを隠せずにいたごろーりだったがすぐさまいつも調子で笑い出した。
「がっはっはっは!この熱さも鍛錬てな!」
なんでもプラス思考にするのはグローリの良い所だ。その後数十分森の中を歩いているとある広場があり、そこには小さな村らしき集落が見えてきた。いきなり見えてきた小さな集落にロッサは呟く。
「こんなところに村がある・・・」
そう言うとロッサ達は歩き続けてもう三日経っていたので少し休憩をしようとその村に立ち寄ろうとする。気を抜いたであろうロッサは森の中で罠に気付かず吊り下げ式の罠に足を囚われ宙吊りになってしまった。罠にハマったロッサをグローリが助けようとする。
「今助けるからな!!」
ロッサを助けようとするグローリだったが彼もまた罠に気付かずに足を囚われ宙づりになってしまった。そんなグローリを見て黒猫のマロンはため息をついた。
「まったく。なにやってるんだか・・・」
マロンに呆れられているとロッサは苦笑いをして、この後どうしようか悩んでいたその時。村の方から数人の獣耳をつけている獣人が槍を持ってこちらに近づいてきたのである。近づきながら獣人達は何やら喋っている。
「人間が子供をさらいに来たのか?」
もう一人の獣人が攻撃的な発言をした。
「さらわれる前に人間を倒すんだ!!」
それに反応して数人の獣人が雄たけびを上げていたが村の奥から先日王都ステイルで助けた少女が必死に大きな声を出しながら走って近づいてきた。
「その人達は違うよおお!その人達は私を助けてくれた人だよぉ!やめてぇぇぇ!」
それを聞いた獣人達は殺気が無くなり少女から説明を改めて聞くと納得したのかすぐに縄を解いて降ろしてくれた。ロッサが普通の状態なら難なくわなから抜け出していたのかもしれないが丸三日歩き続けていたのだから疲れ果てていたので本来の力が出せずにいた。それと空腹によって意識が朦朧としていたのである。食料は買い込んであったがグローリが予想以上に食べるため無くなりかけていたのである。
罠から解放されたロッサ達に少女が近づき言う。
「もう大丈夫だよ!どうして私達の森へ入ってきたの?」
そう言われるとロッサは答えた。
「東の国ブラウンに向かっているんだけど途中でこの森に阻まれてね。森を抜けようとしていたんだ。」
少女は「そっか!」と言うと村で休んで行きなと村の中へ招いてくれたのである。村の中へ向かう時に先程罠にかかったロッサ達に攻撃しようとした獣人の男が話しかけてきた。
「さっきは悪かったな。あの娘が攫われたばかりで村の中はピリピリしてたんだ。」
獣人は人間より強いはずだが何故少女が攫われたのか聞くと、数人で王都ステイルへ物を売りに出向いていた時一緒に付いてきていたあの少女を大人達が目を離した隙に攫われたのだという。なんと注意力の無さかとロッサは少し呆れたが結果助け出す事が出来て良かったとも同時に思った。
村の中へ入ると猫耳や犬耳の獣人がいてこちらを注目している。そんな中村の奥にいる長の元へと案内された。中に入ると狐耳の獣人がいて長と言う割には若い見た目で日本で言う巫女さんみたいな格好をした女性は少女を助けてくれた事を感謝すると数日間この村で療養して行くと良いと言ってくれたのでロッサ達はそれに甘えることにした。
早速村の離れに温泉があると言うので向かう前にロッサ達は久々にお腹いっぱいになる食事を済ますとグローリ・マロン・ロウガと共に温泉に向かった。するとそこには大きな温泉があり湯気を立てて少し黄色く濁っていて村の長によると体の疲労に良く効くらしいので、すかさず服を脱ぎロッサ達は温泉に飛び込んだ。温泉に入るとロッサは深い息を吐きながら言った。
「ふわぁ。なんという開放感!このまま寝れそう・・・。」
グローリも久々の入浴でくつろいでいる。
「やばいなこれは!身体から疲労が抜けていくようだぜ!」
するとマロンが温泉に入らない姿を見てロッサはマロンに問いかけた。
「マロンは入らないの?」
マロンがロッサに返答する。
「僕はいいよ。ずっと君の肩に乗っていたからね。今ぐらいは身体を休めてくれよ!」
すかさずロウガが話に入ってくる。
「マロンは猫だしお風呂が苦手なのでは?」
マロンはそう言われると図星のようで、すかさず平然を装い体を丸め寝始めた。ロッサ達は今までの事を話したりこれからの事を話したりして温泉を楽しんだ。その後は客人用の部屋に案内され静かに眠りにつくのであった。
「お風呂は苦手です・・・」
次回へ続く・・・
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