第5話 地獄の筋トレの始まり
「はぁ……やっぱり何もない訳ないよな……ダウンロードで転生したんだし……」
俺は暫し呆然とした後、納得がいったと言う風にため息を吐いていた。
薄々そんな気はしていたのだ。
ゲームの延長で転生したのに、肝心のクエストとか何の司令もないなんてそれこそゲーム崩壊じゃないか。
だから妥当といえば妥当なのだが……。
「だからってこのクエストは厳しいよなぁ……」
―――【クエスト:陰の
まず手助けはいいのだ。
ストーリーが始まるのは今から5年後。
主人公のステータス検査から話がスタートする。
だからそれまでに強くなっていればいいだけで。
勇者だからって魔王を1人で倒せるわけないんだし、勇者パーティーに入ってひたすら強力なバフを掛けまくればそれで十分な手助けになるはずだし。
だが、バレずにとなれば話は変わってくる。
大っぴらにバフを掛けると勇者に必ずバレてしまうし、密かに掛けるにしても他の仲間がいるからそれも難しい。
こうなってくると勇者パーティーに入るのは危険が多すぎるか……。
俺はこのクエストの難易度の高さにまだ始まってもいないのに難航しそうな気配をプンプンと感じていた。
と言うかそもそも一気に難易度上がり過ぎだろうが……詳しい説明も全くないし。
1番の問題点はそこだ。
この手助けとはどう言う状態のことを示すのか曖昧だし、どこまでがバレていないと言う判定になるのかも不明。
更にはどこまで手助けすればいいのかも分からない。
もしかして魔王と戦わないといけないとかないよな……?
魔王はマジで強すぎだから絶対に戦いたくはないんだが……。
このゲームの魔王は勇者1人で倒すことなど絶対に不可能だ。
まずステータスの桁が違うし、職業も《魔王》って言う固有職で性能もぶっ壊れだし。
勇者の《限界突破》でステータス10倍にしてやっとタメ張れる位だ。
俺はそんな化け物と戦うなんて御免だね。
何せゲームと違って命は1つしかないんだから。
だがクエストはクリアしないといけなさそうだし、そうなると必然的に俺が強くならなければならない。
正直今の俺は雑魚中の雑魚だ。
このままではrank1のモンスターにすら勝てない。
この職業、後に強くなるとは言え……始めのうちは紛うことなき最弱なんだよな……。
まぁそれに対する対処法もしっかりあるのはあるんだが……如何せん根性論になってしまう。
そしてその方法はと言うと―――
「―――38……39…………40っ! はぁはぁはぁ……死ぬ……まだ40回目、だけどっ、この体筋肉なさすぎでしょ……」
前世で誰しもが一度はやったことがあるであろう筋トレだ。
俺は全身滝のような汗を掻きながら腕立てを続ける。
一見おかしいと思うだろう?
何故ゲームの世界で筋トレなんかしているのか、ステータスもあり、Levelもあるのに上げないのか――と。
だがよく考えてみて欲しい。
今の俺のステータスは、間違いなく雑魚だ。
そしてゲームでこの職業を選んだときの初期ステータスもほぼ同じ。
ならどうやってレベルを上げたのか?
そんなの簡単だ。
ただひたすらに自分の体を鍛えてステータスを上げればいい。
それがこのゲームでは出来るのだ。
ただLevel1の時限定だし、ある程度で頭打ちにはなるものの、するとしないじゃ強くなる上で大きく差が出てくる。
だからこうして先程から必死こいて鍛えているわけだ。
まぁ結果はすぐに出ないからゲームのときも諦める人がほとんどだった。
あの時は何で辞めるのか全く理解できなかったが、今になって俺もその人達の気持ちが分かった気がする。
兎に角地味。
ファンタジーの中でも鍛えるなんて確かに面白くない。
それならLevelを上げていたほうがよっぽど楽しいだろうし。
「まぁだからといって止めるわけには行かないんだよなぁ……」
俺は深いため息を吐く。
何故晩年引きこもりの俺が今更体を鍛えないといけないのか……そんな愚痴ばかり出てくる。
が、止めることなく黙々と腕立ての後は腹筋や背筋と順番にやっていく。
そして全部が終わった頃には、
「ゼェ……ハァ……ゼェ……ゼェ……んあ、死ぬ……始めは30回で止めとくんだった……」
肩で息をしながら床に大の字になっていた。
この体の筋力が無さすぎるせいで、まだ終わって間もないのにすぐに筋肉痛になってしまった。
これからこれを毎日やらないといけないのか……地獄……!
軽く絶望する俺だった。
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