たとえ声が聞けなくとも
かゆぅ**
第1話 あなたの瞳が美しかった。
涼しい風が吹き抜ける、夏のある夜。
今でも鮮明に思い出されるあの瞬間。
緊張してドギマギしていた私の瞳と、不思議そうな顔をしたあなたの瞳が重なったあの瞬間。
そうだ、、あの時からだ、、
私は、、きっと、、。
蝉の声が校内にまで響く、中3の夏。
皆、夏休みだってはしゃいでいるけど、私の目の前には大きな壁が立ちはだかろうとしていた。
「このままでは、志望校には行けませんね
ぇ。」
先生に一人一人呼び出されて、見せられた実力テストの結果。私は絶望した。
私の志望校は玲花女子高校。県内トップ2ぐらいの女子校である。しかし、今目の前にある点数は、志望校だと言うのも恥ずかしいぐらいの点数だ。定期テストではまぁまぁ上位層にいたし、玲女も行けると言われていたけれど実力テストだと途端にできない。
すぐに感情に流される甘い性格で、真面目に努力してこなかったことを大いに後悔する。
「本当に玲女なんていけるのかなぁ、、。」
膨らむ不安を抱えながら重い足取りで家路に着く。
家に帰ると、ポストには塾のチラシが入っていた。周りの子たちは皆んな塾に行っていて、母にも相談したことはあるけれど、「中学校の勉強ぐらい自分でやれるでしょ」の一言で相手にされなかった。でもこのままではいけないと思い、その日の夜、思い切って母にもう一度相談した。
「今回のテスト、自分なりに結構頑張ったんだけど思うように出来なくて。やっぱり自分じゃ限界があるから、塾に行きたいかな。」
すると母は、意外にもすんなりと言った。
「まぁ確かに、このままだと玲女厳しいもんね、、。ちょっと塾探してみるわ。」
意外にも素直に受け入れてくれたことに内心感謝しながら、私は母と塾探しを始めた。
こうして私の、人生を変えた夏が、動き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます