◇相談箱◆ 「差配」と「采配」の違いを解説してほしいです。
2月12日、初音さんから「【2023年2月分募集中】日本語相談箱」に、解説の依頼をいただきましたので、今回はそのことについてお返事しようと思います。
初音さんからいただいた依頼文を引用した後に、回答を書きますね。
Q、
こんにちは。
最近ちょっとぶちあたったのですが、「差配」と「采配」の違いについて、彩霞さんの解説が聞きたいです。
こんなんでよろしければ、ご検討くださいませ。
A、
「差配」と「采配」の違いですね。難しそうですが、何とか解説してみようと思います。
「『差配』と『采配』の違い」ということは、きっと二つの言葉にある共通した意味の、微妙な違いについて知りたいということだと思いますので(もし違っていましたらお手数ですが、再度相談箱に入れて下さいませ……!)、まずは言葉の意味を正確に捉えるところから始めてみようと思います。(下記に選んだ辞書は、他の辞書と比較し、総合的に見てシンプルで分かり易く、意味が捉えやすいのではないかと思ったものを採用しています)
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【差配】『三省堂国語辞典 第八版』
①責任を持って指図すること。
②[古風]持ち主に変わって、貸家や貸し地を管理する〈こと/人〉。
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上記の引用を読むと、「差配」には「責任を持って指図すること」という意味があることが分かりますよね。
「差配」の「差」には「公が人をつかわす」という字義があり、「派遣する」「遣わす」という意味があります。しかしそれが時代と共に薄れたのか、「音の近似する『采配』『座配』等に通じて多く使われる」と『精選版日本国語大辞典』には書いてあります。
『角川新字源 改定新版』と『全訳 漢辞海 第四版』を使って「差配」を調べてみると、「それぞれ区別して取りあつかうこと」「役所が人民に労役や賦税を分けて課す」とあり、「指図」というのは「日本語特有の意味」として示されていました。
「差配」には元々「指図」という意味はなかったけれども、「采配」などの影響を受けてその意味を持つようになった……とも考えられるかもしれませんね。
もう一つ別の辞書を引いてみましょうか。
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【差配】『角川必携国語辞典』
①手分けして仕事をするように
②持ち主に代わって貸家・貸し地を管理すること。また、その人。
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こちらの語釈ですと、より具体的に捉えやすいのではないでしょうか。「責任を持って指図する」だけでなくて、「手分けして仕事するように指図すること」ということなんですね。また「手分けして仕事する」という意味は、漢語の意味にあった「それぞれ区別して取り扱うこと」も含まれているような感じがしますね。
次に「采配」を見てみましょう。
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【采配】『明鏡国語辞典 第三版』
❶昔、戦場で大将が士卒を指揮するために用いた道具。厚紙を細かく切って作ったふさに、柄をつけたもの。
❷指揮。指図。
⦿采配を振る
指揮をする。指図をする。采配をとる。
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一方の「采配」は、「戦場で大将が士卒を指揮するために用いた道具」でした。
つまり「采配」自体には「指図する」という意味はないのですが、それを「振る」ことによって、初めてその意味が意味が生じることが分かると思います。
今では「采配」=「指示する」という風にも捉えられてきているようで、「采配を振る」「采配をとる」以外にも、「采配に従う」(『てにをは辞典』より)という使われ方もしているようです。
「采配」も、もう一つ別の辞書を引いてみましょう。
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【采配】『角川必携国語辞典』
①指図や指揮をすること。
②厚紙を細かく切ってふさをつくり、柄をつけたもの。昔、戦場で大将が兵を指揮するために使った道具。
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こちらは①に「指図や指揮すること」という意味がきていますね。『角川必携国語辞典』の方針に「現代の言語生活の中で、辞典を引いて求める頻度のもっとも高いと思われる意味・用法のものをはじめに置き」とあるので、①の意味がそれにあたると言うことでしょう。
ですが、内容は『明鏡国語辞典』とほぼ同じですね。
さて、ここまでの内容を踏まえて「差配」と「采配」の違いについて、私なりに考えをまとめてみようと思います。
「差配」は狭義としてとらえると、「仕事の指図をする人(責任者)」に使えるのに対し、「采配」は「大きな物事(大規模なイベントなど)で代表して人々を動かす人(仕事以外でも使える)」に使う感じがします。
そう思うのは、「采配」の語釈には「指揮」という言葉があるのに対し、「差配」にそれがないためです。(他の辞書の内容は引用しておりますが、ほぼ同じ方向性です)
「指揮」とは、「全体がまとまりをもって動くように、多くの人々を指図すること」という意味。元々「采配」を振る人は大将で、戦場の兵を指揮していたわけですから、このイメージは捉えやすいかなと思います。
もちろん、「差配」にも「指図して、とり仕切る」という意味はありますが、「采配」の方がその指図する規模が大きいのではないかと、様々な辞書の語釈を比較した限り私は解釈します。
また同じ言葉の繰り返しを用いて、冗長を避ける場合は「差配」と「采配」を並列に扱うことも問題ないと思いますが(『三省堂 現代新国語辞典 第六版』には「采配」の項目に「差配」が類語として掲載されています)、もしこの二つの言葉に差をつけるのでしたら、「仕事で指図する人なのか否か」もしくは「どのくらいの人々に対して指図するのか(規模がどれくらいか)」の違いで使い分けられるのではないかなと考えます。
以上が、私が考える「差配」と「采配」の違いです。いかがだったでしょうか。
今回は私の手元にある資料のなかで、具体的に追及するものがあまりなかったため、辞書の内容に沿うだけの内容になってしまいました。もう少し学者の説明などがあると良かったのですが……、力不足な回答でしたらすみません。
今後、「差配」と「采配」を使い分ける際の一つの考え方として、多少なりともお役に立てたのであれば幸いです。
初音さん、ご相談ありがとうございました。
☆おまけ☆
今回「采配」を調べたところ、辞書によって取り扱い方が少し違っていました。
上記の引用で上げた『明鏡国語辞典 第三版』をはじめ、『三省堂国語辞典 第八版』や『岩波国語辞典 第八版』などは、「采配」そのものに「指図」があると考えているものもありますが、『新明解国語辞典 第八版』の語釈をみると、「采配」自体には道具としての意味しかなく、「采配を振る」として初めて「指図する」という意味が生まれるような書き方をしてあるようなので、この辺りは個人の感覚に委ねられるのではないかなと思います。
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