Column14 英語 —— 「はい、チーズ!」じゃ、笑えないよ!

 エリザベスと話をしていたときのこと。(*エリザベスは、学校で英語を教えている先生のことです。詳しくは、2月のColumn4をご参照下さい)


 ベスが、

「写真を撮るときに『はい、チーズ!』って言うけど、あれじゃ口がとがっちゃうよね」

 と言うので、「……ん? 『笑ってー』って意味でしょう?」と私が聞くと、

「だって日本語で『チーズ』って言ったら、唇突き出すじゃん」

 とのこと。


 私は「チーズ、チーズ……」と呟いてみると、確かに「ズ」という口の形をすると唇がとがります。


「だからさ、あれは英語で言わないといけないんだよ。写真に写る人たちに『チーズ』と言わせて」

「『Say cheese』?」

 私は英語っぽく、「cheese」と言います。すると、ベスが大きくうなずきました。

「そう! 『cheese』って言うと、口が『にっ』て笑う形になるでしょう?」


 意識してもう一度「cheese」と言ってみます。確かに、英語だと唇がにっと笑った形のままです。なるほど。


「だから、日本語で『チーズ』じゃなくて、英語で『cheese』って言った方が笑顔になる……ということに気づいたって話。別にそうしろと言う話じゃなくて」

「うん、分かる」


 とはいえ、日本では「はい、チーズ」と言うと、「(写真を撮るときの)ポーズをとる」という意味になっているので、ベスの言うように、やっぱり英語で言う意味はないのだと思います(笑)


 調べた限り『明鏡国語辞典 第三版』には、「写真を撮る際の笑顔を作る合図として、感動詞的にも使う」と書いてありましたが、それ以外の国語辞書(『ことば』でよく登場するもの)には、“食べる方のチーズ”しか載っていませんでした。

 人によっては「3、2、1」という掛け声をかける方もいますし、「はい、ポーズ」という方もいますから、辞書を作っている人たちからすると書かなくても困らない、もしくは経験のなかで分かるだろうからあえて載せなくてもいい、というのもあったのかなと、私は想像します。


 ちなみに「Say cheese」は、英語の辞書『ウィズダム英和辞典 第4版』『エースクラウン英和辞典 第3版』『ジーニアス英和大辞典』、全てに載っていました。英語圏の人たちはよく使うのかもしれませんね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る