Column8 フランス語 ——「アデュー」と言わないで

 ——アデュー!


 皆さんは、「アデュー」という言葉を使ったことはあるでしょうか。ご自身は使わなくても、物語の登場人物が言っているのを聞いたことなど、どこかしらで聞いたことはあるかもしれませんね。


 さてさて。

adieuアデュー」とは、フランス語で「長い別れを告げるときに使う挨拶」のことです。


『プチ・ロワイヤル仏和辞典 第5版』を調べてみると、「adieu」「さよなら,さらば」という意味の後に、補足として「長期間または永久に分かれる相手に対して.また会う相手にはAu revoir.」と書いてあります。


*****

——Adieu! On se verra ici l’année prochaine.

  さようなら,来年またここでお会いしましょう

——Adieu, mon pays natal!

  さらば,わがふるさと


『プチ・ロワイヤル仏和辞典 第5版』より引用

*****


 上記の例文をみて分かるように、少なくとも「また明日会う」人に対しては言わないことが分かりますね。


 何故このような話をしたのかというと、エリザベスが「アデュー」を使っていた子どもに「『アデュー』は、『長い別れを告げるときに使う挨拶』だから、使わないで欲しいな」と言ったというエピソードを聞いたからでした。

(*エリザベスは、学校で英語を教えている先生です。詳しくは、2月のColumn4をご参照下さい)


 私も「adieuアデュー」が「さよなら」という意味であることは分かっていましたが、まさか「長い別れを告げるときに使う挨拶」だとは知らず(というよりか気にしたことがなかったのです……<苦笑>)、ベスに言われて「へえ、そうなんだぁ」と初めて知ったのでした。


 私が「アデュー」を使っているのを見たことがあるのは、ノリの良い男子高校生が、帰る際に言っているようなときだったので、「『アデュー』は単なる『さよなら』だ」という認識があったのです。(「じゃあなー!」の代わりという感じ)


 国語辞典で「アデュー」引いてみると、意外にもほとんどの辞書に載っていました。日本語のなかでも、この言葉は馴染みがあるということかもしれませんね。


 語釈は、ほぼ全てが「長い別れを告げるときに使う挨拶」と書いてありましたが、『三省堂国語辞典 第八版』には、「さよなら(と言うこと)」しか書いてありませんでした。シンプルですね。


 日本語の「さようなら」には、「明日また会おうね」という意味がありますが、場面によっては「adieuアデュー」の意味としても使えます。

 もしかするとそういう理由で、あえて説明を書かなかったのかもしれません(というのは、私の想像なのでいつもの如くテキトウに聞き流して下さいませ)。


 日本語の「さようなら」を言うとき、人によっては「もう会わない感じがする」という感覚がある方もいるようです。もちろん、「さようなら」を使ってなんら問題ないのですが、フランス語にあえて「長い別れを告げるときに使う挨拶」として「adieuアデュー」があるのは、相手を思いやってのことなのかもなぁと、調べていて思いました。

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