第16話 抗がん剤治療(テセントリク・アバスチン)1回目
11月1日(火)
父、抗がん剤治療の第1回目。最初なので、2泊3日の入院で、様子を見ながら点滴するとの事(この治療方法は、点滴で行う)。
コロナの影響で、面会は禁止で、入院する時と、退院する時にしか、病院に行く事ができない。多くの人が、この環境で、辛い思いをしているのだろう。患者さんや、その家族もそうだけど、医療従事者の方々の仕事も増えているんだろうな。
妹3から、病院の待合席で車椅子に座っている父の写真が送られてきた。「これから、入院します」という感じの写真だった。
夕方、妹1から電話が来た。今日の報告だった。
病院につくと、手際が悪く、3時間も待たされたそう。看護師さん達の様子を見ていると、「父が入院する事を忘れていて、今、急いで準備をしています」と言う感じだったらしい。あまり時間がかかるので、母には先に帰宅してもらい、妹1と妹3が、手続きなどをしたが、約一日かかってしまったらしい。ホントに、医療従事者の方々が大変なのはわかるけど、投薬ミス等をされないように、祈る。今の私に出来る事は、祈る事だけだから。
11月2日(水)
夕方、妹3からライン。病院から父の状況報告が来たらしく、無事に投薬が終わり、夕食も食べ、今の所は特に問題ないとの事。
吐いたり、頭痛で苦しんでいなくて良かった。ご飯も食べれて、良かった。
11月3日(木)
父が退院する日。私も様子を見に、実家に帰省しようと思っている。
午前11時半頃、妹3からラインがきて、父がラーメンを食べている写真が掲載されていた。良かった。無事に退院できたんだ、と思った。これで、安心して帰省できる。父が、グッタリしていたら、気持ちもうち沈むので。
4時頃、実家に向かう。渋滞もなく、スイスイと進む。夕焼けがとてもキレイ。途中、真正面を大きな流れ星みたいな物が、弧を描きながら落ちていった。火球?
自宅に着き、父の様子をみると、少し、顔がむくんでいる様な感じではあるが、元気だった。吐き気や頭痛、倦怠感はなく、食欲もいつも通りとの事。薬の副反応は、これから出るのかも知れないし、もしかしたら、あまり効果がないのかも知れない。16日に、血液検査をして、次の判断をするらしい。
父に、「病院は、どうだった? お食事は美味しかった?」と聞くと、「うん。食事は、良かったよ。朝から、目玉焼きと野菜炒めが出た。前の病院は、美味しくなかったし、量も少なかった。卵焼きなんか、小さいのが一個で、アレ? 落としたかな? と辺りを見回したよ」と言っていた。こういう会話の中から、父が、何をどれだけ理解しているかを測る事が出来る。大丈夫そうで、良かった。
母は、相変わらず、忙しそうだ。常に家の中の片付けをしている感じがするが、物を、右から左に移動する様な片付けで、その内にどこに置いたか忘れて、いつも何かを探している。血圧も高いらしく、父よりも高い。昔は、すごい低血圧だったのに。いつか、脳の血管がプチンと切れて、急死しちゃうのではないか? と思ってしまう。父よりも、危ない気がする。
11月4日(金)
午前中は、父と歩行器を使って近くのドラックストアーまで散歩をして、店内を見て、買い物をして帰宅した。約一時間。
歩きながら、父が「転んで、病気が解って良かったよ」と言っていたので、一応は、自分のこれまでの流れが理解出来ていて、気持ちも前向きなんだな、と思った。人間、こういう時に、自分が置かれた現状を、どう受け止めるかで、進む方向も、気持ちも、全然変わってしまうんだろうなあと思う。
お昼は、おそばを作って食べた。父は、食事と散歩とトイレ以外は、ほとんどベッドで横になって過ごしていた。時々、起きて、おやつを食べる。以前は、血圧や血糖値の心配があったので、父の食べ物の事では、口うるさく言ってしまう事もあったけれど、今は、何でも良いから食べれる時にたくさん食べてね、と思う。
夕方も、父と散歩をする。
11月5日(土)
今日は、2階の日よけを直す日。殆ど、妹1と妹3がやってくれた。私は、父の散歩と、家事炊事が担当。朝ご飯が終わったら、すぐに昼ご飯の支度をして、それが終わったら、夜ご飯の支度。それで、だいたい1日が終わる。
11月6日(日)
午前中、父と散歩をしてから、実家を後にする。妹1も同乗して、一緒に帰る。
少し前から、母が、とても小さくなった気がする。小さい、おばあさん。祖母と重なる。私も、きっと、あんなおばあさんになるんだろうな。
今回の帰省で、母の落ち着きない行動や、ヒステリックな所、理不尽な行動が、目についた。これは、もしかしたら、認知機能が低下しているのではないだろうか? と思う。そして、今は、皆が、父を中心にしていて、父にとても優しくしているので、淋しいのかも知れない。
年老いた父と母を見ていると、我が子が幼稚園児だった頃に感じた、心配や愛おしさみたいな気持ちが沸いてくる。それプラス哀愁も。人は、誰かに助けてもらわないと生きていけない状態で生まれ、長い年月を経て、また、同じ状態にもどるのだろうか。年を取るって、こういう事なのだろうか。
そんな風に思いながらも、昨日母から「もう、あんまり帰ってこないで!!」と強い口調で言われた事も、脳裏を突き刺していた。私と妹1が、いろいろな事に口出ししたり、母の欠点をハッキリと指摘したりするので、イライラしていた様だ。親子と言っても、長年、別々に暮らしていたので、まずは、相手に信頼してもらってから、「こういうやり方もあるよ」と理解してもらわないと伝わらないのだろう。その手の本にも、そう書いてあった。解っているけど、お互いに頑固なので、難しい。
11月7日(月)
夕方、妹3からラインが来た。散歩に行こうと歩行器を外に出したら、父が地面を見ながら「これは何だ?」と言うので、見たら、歩行器のネジだったらしい。大事にならなくて良かった。気が付いて良かった。父、ホントに、いつも、間一髪の所で最悪の事にならない。強い何かに守られていると思う。
11月8日(火)
妹3が、ダスキンに、歩行器のネジの事を相談したら、新しい物と交換してくれるとの事だった。レンタルって、こういう所が利点なんだな、と思った。
そして、父の為に新しく買った、四本足の杖の組み立て部分が外れたとの事。これは、ネットで購入した物で、届いた時に、すでに傷がついていた。やはり、ネットで買うと、こういう事もあるなあ。
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