第9話 君のいいとこ悪いとこ
「じゃ、じゃあパ、パフォーマンスを決め、ます」
体育祭のメンバー決めも終わり、次はパフォーマンスについての話だ。
前でカラメルが説明しているが、ところどころ落ち着いていない気がする。
まぁ、さっきの一件のせいかもしれないが。
「パフォーマンスかぁ、今年はどんな感じだろうねぇ」
俺と同じ生徒会種目に出ることになった、久遠さんが斜め後ろの席から話しかけてくる。
「あの、本当にいいのか? しかも話したこともあんまりないし」
別に傍から見れば、そこまで不自然でもないっちゃない。ただ、私がやると最初に切り出して引き受けたカッコいい女子、みたいな感じだろう。
ただ俺らからすると、明らかに変だ。久遠さんとの面識はあまりない。だが、これはまぁそこまで関係ない。
俺が気になったのは、あそこでカラメルが出る感じだったのに、すかさずそれを止めたように出てきた、ってとこだ。
「だいじょぶだいじょぶ。それに何ならこれから仲良くなればいいって話だし」
「いや、まぁそれはそうなんだけど、ね」
俺と組みたい、ってのはなさそうだし何が狙いなんだ……? と思ったが、ここでは何も言えるわけもなく。
「と、斗真、聞いてる?」
とカラメルに注意されたので、ここで一旦話を中断する。
「えと、今年もフォークダンスというか、男女ペアで踊るって感じになってます。
ペアは基本的自由なので組みたい人がいれば自由に。困ったら私に言ってください」
どうやら今年も、フォークダンスのような男女ペアのダンスらしい。
「うわ、どうしよ」
「正直桜葉さんと踊りたいよなぁ」
「お前、彼女いるとかいいよな」
「円谷君と踊りたい~!」
などと色んな声が上がる。
「こういうパフォーマンス、うちの学校は伝統だよねぇ」
という久遠さん。
「まぁ、地域に密着してる学校だしな。生徒同士の関係とか雰囲気も、より良くしたいとかあるんだろ」
「なるほどね。てか、安佐川君組む人いる? いなかったら私と組もうよ」
「何が狙いなんだ……?」
あまりにも怪しいというか、積極的というか、流石に不審に思う。
「ん―安佐川君なら別に良いし、仲を深めるって意味でもさ」
「あーまぁ言われてみればそうか?」
まぁ、久遠さんと言ってることは納得できる。
この違和感は気のせいかもしれない。
そうやって2人で話していると、瑞希がやってきた。瑞希も“さ”なので、結構近い席だ。
「斗真君、一緒に組みませんか?」
クラスが少しザワっとする。
「俺、か? 祐樹とかでいいんじゃないのか?」
少し焦りながらもなんとか冷静に答える。
「クラスの男子もそこまで仲良くはなってないし、斗真君が一番最初に仲良くなったので……ダメですか?」
「な、なんだそういうことか。確かに安佐川だしな、そんなことはねぇだろ」
「でも距離感おかしくない?」
などとひそひそと声が聞こえる。
「いや、それは大丈夫だけど」
流石にこちらもこの展開で断れるわけもなく。
「ならよかった」
と満足そうに言って席に戻っていった。
「しょうがない、今回は桜葉さんに譲ってあげるか」
久遠さんはボソッと、そう、言った。
「そんな競争倍率高くないでしょ」
「そんなこと分からないかも、よ。案外見てる子はいるから、さ」
「そうか? 信じられないな」
俺なんかを好きになる、見てくれる子はいるわけもないと思ってしまうけど。
少し思わせぶりな久遠さんに――
ドキッとした。
あ、そういえばと思い出し、カラメルにパートナーが決まったことを連絡する。
「カラメル、俺と瑞希でよろしく」
「う、うん」
何か暗いような、そんな表情が気になった。
「大丈夫か?」
「え、全然、大丈夫だよ」
「ならいいけど」
なんか最近の女子は分からないな、とふと思った。
そんな色々な出来事があったホームルームも終わり、掃除の時間。だが、掃除するわけもなく、祐樹と雑談していた。
「斗真~なんで譲ってくれなかったんだよ!」
一応俺もパスは出したが、
「断れる空気でもないだろ! そこの所は俺より仲良くなってくれ」
流石にあそこまで言われると断れない。
「ちぇっ。あ、それより久遠さんとお前仲良かったんだな」
思い出したのか、祐樹は久遠さんのことについて話し出す。
「いや、全然だよ? 急にビックリしたというか」
「え、そうなのか? てっきり仲がいいのかと。まぁ確かに、俺も絡みはないけどさ」
そこで俺は一つ思った。
「あんまり特定の人と仲良くしてるって印象はないよな。絡んでる人は多いけど、さ」
久遠さんの友達、って誰だ?
放課後。今日は、瑞希と遊ぶという約束がある。教科書や今日の課題をバッグに入れ、学校から出る準備していると久遠さんが話しかけてきた。
「ねっ、今日ヒマ?」
もしよかったら遊ばない? というノリで話しかけてきた。
「あ―今日はちょっと無理かな」
細かくは言わず、曖昧にして答える。
「あ、そうなんだ。ならさ、とりあえずレイン交換しとこ?」
「お、おう。そういや久遠さんって何部だっけ?」
押されながらも交換し、もう一つ気になっていたことを話す。
「うん? 帰宅部だよ?」
「えっ、運動もできるし意外だな」
てっきりバスケ部とかバレー部とか、運動部かと思っていた。
「まぁ色々あってね。でもリレーは出るよ! 任せなさい!」
そう言って、またね、と手を振りながら教室を出ていった
「……」
ふと見ると、瑞希が何か言いたそうな表情でみていた。
「……なんだよ?」
「人生がクソとか言ってた割には青春を謳歌していると思いますが」
皮肉を言われる始末。
「まぁ、それは否めないが……異性の友達ならカラメルや瑞希もいるし、そこまでじゃないか?」
確かに普通の高校生よりはいい、のかもしれないがしょせん友達だしな。
「好意を寄せているとかは感じないんですか?」
「ははは。ないない」
こんなダメ男に惚れる奴がいるわけないだろ。あれ、瑞希も冗談言えるようになってきたな。
「なら、まぁいいですけど。じゃあ、少し話しませんか? ここら辺にカフェありますよね?」
「今度は下準備ばっちりだな」
前のゲーセンと違って、今度はしっかりと調べてきたようだ。
「ほんと、えっち、です」
「だからなんでだよ!」
カラメルとかがほんと変なこと教えてるんじゃねぇんだろうな!?
「私の話、聞いてくれますか?」
そうして俺らは学校の近くのカフェに向かうのであった。
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