第2話 桜葉さんとデート? ~クレーンゲーム編~
「ところで遊ぶにしてもどこに行くんだ?」
なぜこのような状況になった? と思いつつも、桜葉さんと遊ぶことになった俺は、どこで遊ぶのかと問いかけた。
「……どっか」
と桜葉さんはポツリ。とても可愛いシーンなのだが、うん、うんうん。うんうんうんうんうん。
「いや決めてなかったんかいぃぃいぃぃいいいいぃい!」
とつい大声でツッコミを入れた。
「だってしょうがないじゃない! 全然こういうの知らないんだから」
言われてみれば。
「あー確かにそういえばそうだな。じゃあ行ってみたいところはないの?」
桜葉さんにツッコミを返され、それもそうかと気づいた俺は改めて問いかける。
「うーん…………ゲームセンター」
「ゲーセンかよ」
もっと猫カフェとかおしゃれなものかと。
「私にとっては憧れなの! いい?」
ということでゲーセンに決定。駅から近いところの商業施設に行くことに。
「桜葉さんって普段はお上品に喋るけど、感情によってめっちゃ変わるね」
とゲーセンに向かう道中で、つい思ったことを言ってしまった。
「そう?」
「怒ってたら冷徹だし、時々子供みたいにもなったり……ところどころキャラ変わるよね」
「気持ち悪いよ、それ」
「うげっ」
その一撃は流石にクリティカルすぎる。
「まぁ、普段は綺麗に喋らないと親に怒られるし。なるべく気を付けてはいるけど」
「大変だな。清楚なお嬢様系ってとこか」
桜葉さんはいつも清楚系の上品なキャラという印象だ。でも感情が出ると、友達とかいうか子供っぽいというか……喋り方が変わる。
「まぁ、そうね。でも時々、方言やため口みたいに話しちゃう時もあるのも事実だけどね。気を付けないと」
俺としてはさっきの子供みたいな桜葉さんが一番かわいかったけど。まぁそれを言うと本当に気持ち悪いのでやめておこう。
「そういや男に絡まれてたのに助けなかった安佐川君、妙に親切だよね?」
と嫌味で攻めてくる桜葉さん。
「俺もなんでこうなったかは分からないわ、ほんとに。でも、なんていうかな。自分が悩んでいるときに楽観視してる奴見るとウザいなぁって感じるみたいな」
自分がダメ男だとは思っているけど、いざ俺みたいなやつを見ると腹が立つんだろうなと思う。プロデュースに近いような感情なのかな。俺は輝けないから、君は輝いてくれみたいな感じだと思う。
「なんとなくわかるかも。安佐川君が見えた時は助けてくれるものだろうと思ったけどさ。もし逆の立場だったらなぁとか思うと何も言えなくなる」
「まぁ、それは本当に悪かった。本当に人生は難題で大変なんだよな。てか、桜葉さん。そういやあの状況でよく大丈夫だったよね? 俺が言える立場じゃないけどさ」
あの状況でよく抜け出せたというか。俺を追いかけてきたんだろうけどめっちゃ早かったし。
「あぁ、これ防犯ブザーのおかげで」
「小学生かよ」
久しぶりに防犯ブザーって聞いたわ。言われなかったら一生思い出さなかったわ。
「仕方ないじゃない! これが最善手だし」
「いや悪い。つい、ツッコミを入れたけどよくよく考えれば賢いかもしれない」
つい、お笑い好きでツッコんだが、そもそも防犯ブザーって力で負ける子供のために開発された奴だろうし、よくよく考えれば、賢いなと思った。流石は桜葉さんといったところだろうか。
「でしょ?」
と少しふふんとする桜葉さん。本当の桜葉さんはどんな人なんだろうとふと思った。色んな感情、雰囲気が変わる桜葉さん。
一体本当の桜葉さんはどこに――
と話しているうちにゲーセンに到着。様々なゲームがあり、桜葉さんは目を輝かせていた。
「これがゲームセンターなのね。漫画とかで見たものと一緒だ」
あれ、意外だな。
「そういう娯楽系は禁止されてないのか?」
「いや、禁止は大体されてるけどね。でも同級生の子が話したりしてるのを聴いたり、読んでる漫画をチラっと見たときとかに、いいなと思って。テレビはニュースとかは観れるし、たまに流れる時とかもあるから」
「ハハッ、何だ一緒じゃん」
桜葉さんはきょとんとする。
「桜葉さんだって皆と一緒だなって。親の目を盗むのとかさ、本当によくわかる」
隠れてゲームしたり、深夜番組をみたり、何かとバレないようにしようとするのが子供だ。皆どこかで悪知恵を知る、学ぶ、使用する。
「あぁ、言われてみれば!」
桜葉さんも気づいてなかったようだ。
「桜葉さんそしてはさ、しっかりと親の言いつけを守ってるって意識だったけど違うでしょ? 人生ってそんなにルールが単純じゃないしさ。誰しもどこかで少し悪くなるんだよ」
大小関係なく、悪いことをしたり間違うのが人間だ。
「私、とっくに悪い子だったのね」
「いいんだよ悪い子で。最低限のルールだけ守ってれば上手く生きれるでしょ」
人生は上手く生きないといけない。人間だれしも裏の面はある。その裏の面を上手く隠して生きていけるのが成功者だ。
「それは一理あるわね。難しい」
「だろ? でもそんな簡単にいかないのが人生なんだよ。マジでクソだ」
日々変わる生活。読めない未来。少しでもミスをすると一気に奈落の底に落ちる時もある。センスもいるし、努力もいるし、運もいる。
「安佐川君は人生楽しくない?」
桜葉さんの問いの答えは決まっている。
「そりゃ楽しいこともあるよ。趣味を
俺の答えはいつも決まっている。人生は理不尽で大変だ。なんて最悪なのだろうか。
「そう、よね。私も楽しくない。親の人生なんかじゃないのに。私の人生なのに」
桜葉さんも毒親で悩んでいる。人それぞれ悩みの種は違うが、そのひとつひとつの種が凶悪で強大だ。
「結局人生ってなんだろうな。何のために生きてるかほんとわかんねぇ」
と長々2人で話していたが、暗くなりすぎたので
「まぁ、とりあえずゲーセン来たんだし遊ぼう。こういう楽しめることは嫌なことを忘れることができる麻酔みたいなもんだし。何したいとかある?」
とりあえず遊ぶことで、一旦辛いことを忘れることにした。
「じゃあ、あれ」
と桜葉さんが指をさしたのはクレーンゲーム。
「クレーンゲームか。いいよ。なんか気になった奴とかあった?」
「これって大きいもの取るのは難しいんでしょ? だったらこの小さいキーホルダーとかな」
流石に未経験で、大きいぬいぐるみやフィギュアなどの大きいものを取れないだろう、と判断した桜葉さんは、小さいキーホルダーをターゲットにしたらしい。
「そういや遊ぶのはいいけどお金は大丈夫?」
親の影響で小遣いとか貰えないんじゃないか? と思ったが
「参考書用にもらったお金があるから大丈夫。私たち悪い子だね、にひひっ」
もうすでに悪い子に染まりけていた。あと、クスクス笑う桜葉さんがめっちゃ可愛い。つい、
「普段からそうしてればいいのに」
とまた本音が出てしまった。
「学校では不必要な人間関係は作らないようにって言われてるの。だからツンツンしているというか……人と関わらないというか」
「あぁ、なんかそう言いそうだな……でもなんていうかフランク? な方がいいとは思うけど」
絶対その方が可愛いし、人も寄ってくるだとう。
「私だって友達が欲しくないわけじゃないし」
桜葉さんもやっぱりほしいんだな、友達。
「まぁ、そうだよな。俺はたまたまできたけど、やっぱ一人は寂しいよな」
「円谷さんと唐沢さん?」
桜葉さんはいつも1人だけど、よくクラスを観察している。俺も中学の頃はほとんどボッチだったし、観察してしまうのもよくわかる。
「そうそう。本当話す相手ができてよかったよ」
「羨ましいなぁ。私も、欲しい」
「まあでもあの2人は人気だし、ほんとに凄い。桜葉さんも本当は明るいキャラのようだし、カラメルと似てると思うんだよな。そんな明るく、少しフレンドリーな感じで行けば友達はすぐできるよ」
「カラメルって唐沢さんの愛称よね? 仲良さそうで本当に羨ましい。私はさ、友達作れないからさ。」
「そう、フルネームを略してカラメル。友達とか人間関係については、もういいじゃん。悪い子なんだし。まぁ、どうせ親は低俗な奴らと絡むなとかいうんだろうけど」
「そうかな?」
「きっと桜葉さんはもう飛ぶ寸前まで来てる。あとは飛ぶだけだよ」
まだ、少し恐れているけど飛び立ちそうな一人の女の子。
けどその女の子は強い。
「そっか」
「うん」
桜葉さんはどこか良い表情になった気がした。意思を強く持って羽ばたく寸前のこの一人の女の子は、とても美しかった。夜空に打ちあがる花火のように――
と話しているばっかりでつい本題を忘れていた。
「てか本題忘れてない? とりあえず一回クレーンゲームやろうぜ。3本爪の小さいクレーンゲームだし、比較的簡単だよ」
「じゃあ、一回やってもらってもいい? 見てみたい」
と目を輝かせる桜葉さん。
「まぁ、いいよ」
ラノベを買う資金が減る悲しさもあるが、桜葉さんともうこんな機会はないかもしれないしという気持ちが勝ち、まずは俺がやることに。男で可愛い女の人に勝てる奴は1人もいない。間違いない。本当に。
「じゃあ、行くよ」
こういう時にささっと見本のようにスマートに獲るのが、できる男だ。でも俺はできない男なので、
「あぁ……」
するっと3本爪から可愛い熊のキーホルダーが逃げてしまった。
「なるほどね、わかった」
と桜葉さんは100円を入れて、集中モードに。初心者とは思えないぐらいにクレーンをてきぱきと動かしていく。
「いや、そこ重なってるし取りにくいんじゃない?」
と、俺の忠告も気にしない様子で
「たぶんクレーンの動きと重なり方的に大丈夫かなって。よいしょっ」
すると今度はクレーンが久々に出会った家族との抱擁のように離さない、離さない! しかもパズルのようにクレーンと2つのキーホルダーが完璧にハマっている。
「ほら2個取れたでしょ? いやこの場合2匹?」
世の中はやっぱりセンスも重要だなとつくづく感じました。全然俺の出る幕はありませんでした。すみませんでしたぁぁぁぁあ!
すると桜葉さんは、
「はい、これ」
と1つ獲れたキーホルダーを渡してきた。
「うん?」
いやいやいやまさか。
「2個取れちゃったし、あげるよ」
「いやお揃いになるでしょ」
俺と桜葉さんなんか釣り合わない。君は俺となんか絡んではいけない。
「……? 何がダメなの?」
君は俺とは違う人間だ。そんな顔でみないでくれ、桜葉さん。
「いや、それはそのさ。なんか恋人みたいというか、親友みたいというか」
「考えすぎじゃないの? お近づきの印みたいなことでいいじゃん。もう他人じゃないんだし」
桜葉さんはまっすぐ進み続ける。俺も君のように進みたい。
「まぁ、それはそうだけどさ……」
でも俺は君の差し伸べる手を受け取る資格はないんだ。でも、俺の本能が語り掛けてくる。
素直になれと言われている気がする。
「改めて友達になってくれますか?」
差し伸べられた手を取りたい。
俺は君ともっと仲良くなりたい。
もっと君を知りたい。
容姿や境遇、言動などどこに魅力を感じて、どこに惹かれたのか。具体的で明確な理由はわからない。けど本能が俺を動かす――
「……ダメ男でよければ」
君と繋がりたい、というこの気持ちを誤魔化せず,OKの返事をしてしまった。
「何でこうなったんだろうね?」
桜葉さんもそりゃ不思議に思うよな。
「ほんと分からないよな、人生って。まぁでも、人生を楽しめてない同族? だからさ。こうなったのかもな。仲間を作りたいって意識が潜在的に働いたのかもな」
ここから俺の青春はスタートするのだろうか。
人生とは何なのかと答えを見つけ出せるのだろうか。
けど今は不安な未来を無視する。そして一つ言えることがある。
とっっっっっっっっっっっっっても今が楽しい。
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