【第一部】第三章 実技訓練【二】魔法の練度確認

――訓練場――


 デバイスと武器を装備したアレンは、カールやエリスと合流する。デバイスの機能に、使用したスキルの強度から“練度れんど”を算出してくれる機能がある。練度はアルファベットで上から順に“S、A、B、C、D、E、F、Gの8段階”で判定される。


 魔法は属性での分類の他、習得難易度や強度から上級、中級、初級とおおまかにランク分けされている。まだエクスプローラーになってもいないアレン達は初級から習得を進めていた。



「魔法って苦手なんだよな……」


 カールがぼやく。確かにカールは魔法よりも武技を得意とする戦士系だ。大きな盾で身を守りながら槍で敵を攻撃するタンクタイプと言えるかもしれない。


 だが魔法をまったく使えないという訳ではなく、土属性の初級魔法である岩塊がんかいで敵を攻撃する<ロックブラスト>と、岩壁がんぺきを作り出す補助魔法――<ロックウォール>を習得している。


 どっしりと構えるタンクタイプに土属性はしっくりくるな。ただし、まだ練度は低く、どちらも“F”の様だ。



「わたしは魔法好きだけどなぁ。見て見て! また練度が上がったのよ!」


 嬉々としてデバイスの練度表示を披露ひろうするエリスはカールとは対照的に魔法を得意としている。得意属性は火。


 初級の攻撃魔法である<ファイアボール>をはじめて使った時は目をキラキラさせて喜び、しばらくはそればかり使っていた。


 ファイアボールはその名の通り炎の玉が敵を焼く魔法だ。『好きこそものの上手なれ』を実践するがごとく、今やエリスのファイアボールの練度は“D”になっていた。


 しかし、今デバイスを見せてもらうと、今しがた本人が言っていた通り練度が上がり“C”になったようだ。

 

 他にも、初級の補助魔法である炎の壁を作り出す<ファイアウォール>や、武器に炎を付与エンチャントする<エンチャント―ファイア―>を習得している。両方とも練度はまだ“E”のようだ。



 自分も習得魔法の練度を確認してみよう。


 アレンは二人に軽く断りを入れ、少し離れた場所にある遠隔攻撃用のブースで訓練用ターゲットに向けて攻撃魔法を放つ。

 

 アレンの得意属性は風。初級の攻撃魔法である<ウインドカッター>の呪文詠唱を開始する。アレンの周囲に風属性の魔素まそが集まる。詠唱に伴い刃を形成し、完成するとターゲットに向かい飛んでいった。


 ターゲットを断裂だんれつするまでには至らなかったが、深めの裂傷れっしょうを与えていた。


 デバイスから機械音が鳴り、練度算出された結果がモニターに表示される。


――『ウインドカッター 練度E”』


 うん、前から変わってないな。この練度、上がるだけならいいが、下がることもある。


 単純に強度からの算出であるため、鍛練や努力におかまいなく、現実的な評価を突きつけられる。この辺りは勉学と似ているかもしれない。――下がってなくてよかった。


 魔法を使ったことにより若干の精神疲労を感じる。魔法は無限に使える訳ではなく、魔素制御に伴う精神の消耗がある。魔法の強度や使用者の適正、練度により消耗の度合いは異なる。


 熟達した魔法使いは精神的に鍛えられるからか、その容量キャパも大きくなりちょっとやそっとでは疲れなくなるらしい。体力と同様、睡眠などの休息により回復する。



「何ホッとしてるのよ。まだ“E”でしょ。もっと上を目指さなきゃ!」


 魔法大好き娘エリスからの激励だ。確かにもっと練度を上げて強いモンスターとも戦えるようになりたいし他の魔法も習得したい。そうすれば行ける場所も拡がるひろがるし、何度も夢に見るあの場所だって探しに行けるだろう。


「そうだな。もっと頑張ってみるよ」


 エリスは一瞬呆気あっけにとられた顔をしたが、すぐに笑顔になり、自分が体得した魔法のコツとやらをドヤ顔で教えてくれる。



 アレンもそれを聞くのがまんざらでもなく、エリス達と楽しい一時を過ごすのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る