正義のヒーローは異世界で好き勝手する。

あさ

第1話 俺は死んだはずなのに

「・・・・」


意識が覚醒していく。


「寝ていたのか・・・」


俺は目を開けると、そこは見たこともない白い空があった。テンプレのセリフを言いそうになるが天井じゃないのでやめた。


「知らな・・・白い空??」


上半身を起こし、周りを見渡すがそこには見渡す限り真っ白な何も無い空間だった。


「ここは一体?」


俺はなぜこんな場所にいるんだと眠りにつく前のことを思い出そうとして気づく。


「俺は眠ったんじゃない、死んだはずだ」


「俺は宇宙の禁忌を破って日本を救った。その代償として命を落としたはずだ。それが何故こんな場所にいる」


そう、俺は日本を襲った災害からたくさんの命を救った、その行為は宇宙の禁忌に反しており、守りきったあと命を落としたはずだった。




俺の名前は朝原朝人(アサハラアサト)、朝人としての年齢は30歳、もうひとつの名前はレッドファルコン、地球を守る正義のヒーローだ、自分でヒーローと言うのも何だが・・・

俺はある惑星から宇宙の平和を守るために派遣された宇宙防衛隊の一員であり、俺の担当は知的生命体である人間が住む太陽系第3惑星地球だった。

普段は朝原朝人と言う人間として生活し、太陽系の外から現れる邪悪な宇宙人から、人知れず地球を守っていた。

普段は普通の人間として働き生活していた。趣味はアニメや特撮、インターネット、ラノベを読むのも好きだし動画で地下アイドルのライブを見るのが一番好きだった。

アイドル好きと言っても地方住みの為、ライブとかには行けず動画を見たりSNSでいいねをしたりリプを送る程度のファンだった。

推しは、原谷を拠点に活動している「原谷SUNエンジェル」、略してハラSUNというグループだ、何でも原谷から太陽のような、天使のようなアイドルを目指すと言う意味で結成されたグループだ。大手プロダクションの傘下にあるらしい。

俺はハラSUNの中でもリアと言う女の子が一推しだった。

「もっとハラSUNのライブに行きたかったけど、死んでしまったらもう無理だな、結局行けたのって1回だけか、でもその時に死んじゃったし。ほんとこうなるんだったら遠いけど頑張ってもっとライブや特典会に行けばよかった・・・」


とか考えていると前方に何か気配を感じ、朝人としてではなく、ファルコンとしての俺を前面に出すことにする


「・・ァルコン、レッドファルコン」


前方から俺を呼ぶ声が聞こえた。


「誰だ」


いつの間にか、目の前に女が立っていた。

金色の背中まで伸びたストレートの髪、顔は今まで見た中で一番の美形

細い身体で胸も控えめでめちゃくちゃ好みのスタイルの女だ。

神話に出てくる女神のような真っ白い服を纏っておりひと目で神聖な存在だと認識できた。


「貴女は神なのか。」


「はい、私の名は女神テレサ、貴方には私がどのような存在がわかったのですね。」


「ああ、わかる」


「さすがレッドファルコン、本来なら亡くなった貴方の魂は昇神し、貴方の世界の神として招かれようとしていたのです。」


「俺は神ではない、ただの人間だぞ。」


まあ、人間では無いんだがと思いながらも答える。


「でも、あの世界の人間たちからしたら貴方は神のような存在では?」


「いや、俺は人々からすればアニメや特撮の中の存在だ、俺という者が実在するなどとは考えもしなかっただろうし、知られないように戦っていたしな。」


知られていないはずなのになぜかわからないが、俺の名前と同じタイトルの特撮番組があった。姿も似たようなもので、俺はむず痒い思いをしながらも結構気に入って見ていた。

俺も人々にとって理想のヒーローになろうと思い参考にさせてもらったからな。


「でも、絶体絶命の危機に貴方はその姿を現して人間たちを守ったのでしょう?」


「ああ、あのままほっとけば数万人の命が奪われてしまいそうだったからな」


推しを守りたかったとは言わない。


「そのせいで自分の命が失われると分かっていても?」


「目の前に救いを求める命があり、俺には守る力がある。ならば俺は救う、俺が俺である為に。それに命を救う事に理由がいるのか?」


「いえ、そんな貴方だからこそ、私は貴方を私が管理するこの世界に呼び寄せたのです。貴方の身体と魂が貴方の世界の神界に招かれる前に」


「それには感謝しよう、神になるなんてゴメンだからな。それで俺に何を望む」


「この世界に数百年ぶりに魔王が生まれました、その魔王の手によって魔神の封印が解かれようとしています。魔神は私たち神の一柱で遥か昔にこの世界を滅ぼそうとしました、私たち神も魔神と戦いましたが魔神は強く策略に長けていて倒すことはできませんでした。神々の力を合わせなんとか封印することでこの世界は滅亡を免れたのです。魔王誕生と魔神復活の兆し、その事をこの世界の人々はまだ知りません、唯一私が神託を下した聖女とその国の重鎮達以外は。」


「ならば、その魔王とやらを倒せばいいのではないのか、そうすれば魔神は復活しないだろう」


「いいえ、魔王や魔族は魔神の魔力が封印から漏れ出て生まれるのです。今代の魔王を倒しても、すぐに新たな魔王が生まれ魔神の封印を解こうとするでしょう。それだけ魔神が力を取り戻しているのです。今までは魔神が力を取り戻しておらず魔王が誕生することはありましたが、魔神を復活させるだけの力はありませんでした。しかし、魔神が力を取り戻しつつある今代の魔王は魔神を復活させようとしているのです。魔神復活を食い止めるには、魔王も魔神のように封印しなければなりません。

封印することができればその魔王の命がある限り新たな魔王は誕生しませんので魔神が復活することはないでしょう、ですが全てがうまくいくとは限りません。貴方には万が一魔神が復活した場合に魔神を倒していただきたいのです、そうなる前にうまく魔王を封印するのが一番なのですが。」


「保険か・・・まあ、それで俺は生き返らせてもらったのだからな。魔王はどうすれば封印できるんだ?」


「魔王の封印は勇者が持つ聖剣でのみ成すことができます。」


「勇者って・・まるでゲームかラノベだな」


「ゲーム?ラノベ?どのようなものかわかりませんが、この世界には過去にも勇者が現れ魔を打ち払い安寧をもたらしました。」


「その勇者ってのはどこにいる?」


「神託を下した聖女のいるアストラ聖王国で勇者召還が行われようとしています。それにより異世界から勇者が召喚され、研鑽を積んだ後、魔王封印に向かうことでしょう。」


「魔神復活までに間に合うのか?」


「魔神復活までの時間はハッキリとはわかりませんが、もうしばらくは大丈夫と言った所でしょうか。」


「それなら、今俺を呼び出す必要はなかったのでは」


「いえいえ、貴方はあの世界で亡くなったのですよ、先程も言いましたが貴方をこの世界に召喚しなければ、身体と魂は貴方の世界の神界に行くことになっていたでしょう。」


「・・・そうだったな」


そこで俺はさっき気になる言葉が出てきたことに気が付く


「ちょっと待て、勇者を召喚するってことは俺の居た世界から召喚するのか?」


「詳しいことはわかりませんが、おそらくそうでしょう。」


「召喚するってことは元の世界の何もかもを捨てさせることになるんじゃないのか、本人の意思とか関係なく。召喚される者の気持ちはどうなるんだ。」


「それは私にはわかりかねます、召喚を行うのはあくまで人間なのです」


「止めることはできないのか」


「私はこの世界の管理者ではありますが、人の行いまで関与することはできないのです」


「神であってもできないこともあるのはわかっているが・・・案外役にたたないもんなんだな。」


「いじわるですね・・・それに人間たちからすれば大事の前の小事、個人の感情など些末なことでしょう。」


俺はため息を漏らす、日本でそんなことをすれば騒ぎ出す奴らがいるだろうに、この世界では権力者の考えが絶対なのだな。


「それでは、貴方にはこの世界で復活して頂きましょう、何か望みはありますか?」


「その前に、俺が行く世界ってどんな所なんだ?」


「貴方の世界とは文化や文明が違います、簡単に言えば剣と魔法の世界です」


即座に俺は突っ込む


「ラノベかっ!!」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「望みはありませんか?」


「俺の力はそのままと考えてもいいのか?」


「はい、貴方はレッドファルコンとして蘇っていただきます。他に力は必要ないでしょうか。」


「俺は魔法とやらは使えないんだが、使えるようにできるのか」


「はい、どのような魔法が必要ですか?この世界の魔法は火、水、土、風、雷、氷、光、闇、時空、重力などの魔法があります。」


「その魔法は人の姿の時は便利そうだな、火くらいはもらっとくか・・・」


「全部持って行ってくださっても構いませんよ、いえそうしましょう」


「ちょっ、いいのか」


「貴方にはこちらからお願いをするのです、それくらいは便宜を図るのが当然でしょう。」


「そうか、なら素直に頂こう、ついでに一つ頼みたいんだが、魔法を作ることは可能か。」


「新たな魔法を作るということですか?」


「ああ、簡単に言うとそう言う事だが、無理ならいいぞ」


「大丈夫です、魔法創造と言うスキルを授けましょう、剣技や身体能力に関しては、すでに貴方はこの世界の理を大きく上回っています、さすが正義のヒーローですね。

では、今から貴方を新しい世界に送ります、あっ、新しい世界では宇宙の禁忌とかありませんので、貴方の力を思う存分振るっていただいても大丈夫ですからね、それではこの世界を宜しくお願いいたします。」


女神がそう言うと目の前が真っ白になりその白い空間を飛ばされていく。

「あっ、言い忘れていましたが、今の年齢よりもちょっとだけ若い姿になってますからね、ちょっとしたいたず・・親切です」


女神が気になることを言ったが、気にしないことにする

白い空間を飛ばされながら、俺はこの異世界に来るまでの事を考える。

もう戻ることは出来ない、リアに会うことも出来ないと。

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