砂ぼこりのおり、かき氷
相田田相
第1話
こわいなぁ、こわいなぁ、人って。関わることは足の指先から徐々に骨が失われてぐにゃりと地面に崩れてしまいそうな気分になる。それでも人がいなきゃ生きる意味が見当たらないと嘆く。人が人を大切に思うのは知り得る行方がどれも苦しいからである。
彼女の純粋は破られた。知った僕は彼女のはにかむ表情を浮かべて、それが汚れていくことにただ、またかと呟いて煙草の煙で肺を満たした。手を伸ばすことが馬鹿らしく思えるほどに遠い彼女が、どんな人生を送っていようが関係ないのだが、何故かしら奪われたと感じている。そもそも汚されたという表現は滑稽な初心から来るもので、奪われたという表現は被害妄想でしかない。身体は一本道で進んでいくけれど、心は各駅停車だから毎回降りるかどうかを決断しなくてはならず、あの日から僕は青春駅のベンチにて立ち尽くしている。いつしか過去に囚われることに何処か心地よさを感じるようになり、それは現実に起こる事象に左右されないために、この歳になり恋愛をして肉体を交わらせても心に変化が訪れない、つまり永遠の終電を前に諦めた行く末である。では僕をこのようにした彼女に問題があるのではないかと考えるが、むろん彼女は自分の人生を生きているだけで、とてもはけ口にはなりえないし、なにより僕の立場は勝手に好意を抱いた男で、そいつが勝手に絶望しているだけの話である。脇役にもなれず生徒Aの名前すら頂けないであろう僕は、つまりは最初から最後まで劇場に上がることのできない観客だった。なんて思いたくない。全てをネガティブを一蹴したくて仕方がない。この物語に自分がワンシーンたりとも登場していないはずはない、無垢な彼女が単なる女になるのを汚れたと言うのは当たり前のことで、妄想の中に理想の中にいた彼女を奪った事実もあると反論をする。数ある分岐を乗り越えてクラスメイトになった時点で運命的とも言え、中でも彼女とは喋る部類であったのだから、彼女の人生の一部ではある。そんな言い訳はいまさら。だけれど言い続けたい。彼女が好きだから。
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