第24話 薔薇姫の誓い 本祭①
「そろそろ目を開けてもいい?」
「もう少し待ってください! 目を開けないでくださいね!? メイクが崩れますので!」
メイド長のラナメにメイクをしてもらっているセレスが釘を刺されていた
薔薇姫の誓いの本祭で踊るとあってラナメも前日から張り切ってメイク道具を用意していたらしく手際が良い
「目を開けてもいいですよセレス様」
目を開けて鏡に映る自分を見たセレスは何度か瞬きをした
「ちょっと大人っぽすぎるんじゃ……それに仮面で顔隠すんだし」
「いいえ! 仮面をつけていてもどんな宝石よりも勝るセレス様の美しさを表現するならこれくらいではないといけません!」
ラナメの大げさとも言える表現を聞いてセレスは思わず笑った
ラナメが今度はくしや整髪剤などを持ってきてセレスの顔を鏡の方へ向けて髪を結びだした
「よし! 出来ました!」
「良くこんな複雑な髪型出来たわね……」
「しっかりドレスとメイクに似合う髪を前日から考えたんですよ!」
そう言って取り出したメモ用紙には髪の結び方がイラストとともに書かれていた
〘セレス様の本祭での髪型〙
1 前髪残して髪の両端とる
2 両端三つ編み
3 三つ編みちょっと崩す
4 三つ編みでハーフアップする
5 後ろ髪真ん中残し両端とる
6 両端編み込み
7 編み込みをハーフアップのとこにうまいこと混ぜる
•首が見えないようにするために真ん中残す
8 残した真ん中の髪うねらせる
•三つ編みにパールとかの装飾品つける
花とかでもいい
•大人っぽくする←1番大事!
「次ドレス着ますよ! 立ってください!」
セレスよりも楽しそうにメイクアップなどをやっているラナメを見てセレスが安心したように微笑んだ
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「サミさんおまたせ」
玄関で待っていたサミダレが外套を着ていてドレスは見えていないがメイクや髪型で大人っぽい雰囲気のセレスを見て少し黙ってからセレスに手を差し出した
「エスコートいたします 麗しいレディ」
王家から選ばれた姫達の舞を最前列で見ようと開会前から夕方の広場は人が混み合っていた
サミダレと人の波を上手く抜けて広場のステージ裏に行ったセレスが受付に王家からの手紙を渡して受付を済ませて仮面をつけた
王家の手紙は身分が高ければくるというものではなく見た目の美しさや教養もあるがなにより舞の美しさが最も重要視されている
そのため身分が低くても舞の美しさが話題に上がるのであれば手紙が届く確率は上がる
そして身分で今年の薔薇姫を決めることを防ぐため受付を済ませてから貰う仮面を付けて舞を踊るという決まりがある
「セレス様の順番は最後でございますので109番の部屋へお願いいたします」
以前の薔薇姫の誓いで選ばれた庶民の女性が他の女性にドレスを破かれたということがあったのでそれの対策として本番まで受付を済ませた後は広場近くのホテルで自分の出番まで待つというルールがある
「そちらの男性はナイトということでよろしいですか?」
「ええ 私のナイトであってるわ」
待機している非力な女性が外部から狙われることが無いように1人だけ護衛を自分の側に置いておく
護衛を『ナイト』と呼びナイトも薔薇姫のことを『レディ』と呼び互いに名前を呼ばないようにする
部屋に通されたセレスが椅子に座って足を組んで顎に手を置いて窓から楽しそうな広場の様子を眺めた
「複雑だな」
「複雑……ですか」
机の天板を指で叩きながらサミダレの方を向いた
「事実を捏造してる祭なのに楽しそうにしてる人を見るとこの祭も悪くないと思えるから変な気持ち」
複雑そうな笑顔を浮かべながら話すセレスの頭を優しく撫でたがセレスがすぐに手を払った
「綺麗にやってもらった髪が崩れるから」
「そこは注意して撫でましたよレディ」
髪が崩れていないのを確認して水を飲んだ
しばらくして広場のステージに王が登壇して広場にいた民衆が静かになった
「レディ話を聞いてますか?」
王の話の間ずっと興味無さそうに椅子の背もたれに頭を寄りかけながら水を飲んでいたセレスに呆れたようにサミダレが声をかけた
「聞いてたよ〜」
椅子を揺らしながらサミダレの方を向いた
「王家から選んだ姫達に舞を舞ってもらって見守ってくれてる薔薇姫に繁栄を皆で願おうっていう内容じゃなかった?」
ずっと椅子を揺らしながら適当に話すセレスに呆れたように子供を諭すように話した
「王の話はちゃんと聞いてください……」
「だって王って話長いし……」
唇を尖らせながら不満げに言うセレスに頭を抱えてため息をついた
バイオリンの音とともに1番最初に舞う人が広場のステージに立った
「赤いドレスとルビーのピアス……この祭りでよくある組み合わせでつまらん」
「そのような内容のことを他のレディに言わないでくださいね?」
窓の枠に肘をつきながらステージに立った人を見た
薔薇姫の誓い本祭の最初の舞が始まった
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