第26話 告白
狭山ヒノメ。(座席表より)
年齢は十六歳。(おそらく)
髪型は下の方に一本縛り。
狭山先生の親戚。
いつも笑顔……らしい。(盗み聞きより)
それにしてはよく怒っている気がする。
表情筋がゴミ社畜。
学級委員長。
お堅いイメージが付きまとう肩書きだが、実際の人物像とは大いにかけ離れている。
望んでなった訳ではない。
推薦だった。
言ってしまえばその場のノリ。
友達に推薦されて流れで……といった具合だ。
感情よりも空気を優先する。
いや、空気こそが己の感情だと、自分は大衆の一部、あるいは代表だと思っている人種。
素直に思うが友達になれそうもない。
しかし見殺しには出来ない。
ならば己の心は殺す。
作戦決行だ。
放課後、委員長を教室に呼び出した。
ロッカーに手紙を入れて。
空はもう暗い。
来ないのか? いや、部活が遅いだけかも。
鶴橋は帰ったので、天音は一人ぼっちだった。
念願の一人だというのに、気持ちは晴れ晴れしていない。
人を待つのはどこか不安だ。
少し、心細い。
ガラガラ、と。
教室のドアが彼女に道を譲る。
狭山ヒノメだ。
疑っているような、困っているような、総合的には不安そうな顔だ。
「部活、お疲れ」
天音は、用意していた言葉をすんなり言えた。
「あぁ、どうも」
不思議そうな顔。
それを見て、表情が分かるって素晴らしいなと思う。
「今日はお願いがあって呼んだ」
「まあ、そんな気はしてる」
居心地が悪いのか、目は合わせない。
天音は、体が
窓が開いていて、遠くの太陽と目があった。
覚悟を決める。
「俺と、友達になってくれっ!」
名付けるなら、ド直球大作戦――!
……名付けなくてもいいか。
頭は下げない。
敬語も使わない。
友達は対等なもので、下に行ってはおしまいだ。
狭山ヒノメは、目を見開いて驚いたかと思うと、一言。
「え、なんで?」
昨日の自分と同じ反応をする。
「え、なんとなく」
「それならならなくても良くない?」
「いや、なりたい」
「あぁ~~ね」
あぁあぁと、機械音のような声をしばらく出し続けたかと思うと、目があった。
「別に……いいけど?」
語尾が上がったので、疑問系に聞こえる。
しかし、それは間違いなく、肯定の言葉。
そしてこれは、地獄のような日々の始まりであった。
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