第9話 バリアール
山奥の朽ちた教会の二階、窓から午後の日差しが差す小さな部屋で、安楽椅子に揺られた灰色のローブ姿の老婆が寝息を立てていた。静かに扉を開けて、天然パーマ茶髪を生やした小柄で美男の小間使いが入ってくる。
「バリアール様、王都からお手紙が」
老婆は薄目を開けて手紙を受け取ると、軽くため息を吐いて
「ニャミル、私は行かぬと伝えて」
「宜しいのですか?七賢者様よりの魔王討伐の要請ですが」
老婆は今度は大きくため息をついて
「私はそろそろ闇神様より召されるはずなんだよ。何の手違いか未だに健康でねえ」
一階からギッと入り口の扉が開く音がして、ニャミルは慌てて走っていく。バリアールも
「やれやれ」
安楽椅子から立ち上がる。
バリアールが一階へと降りると、身なりの良い白髪の老婆とその腕に抱かれた黒猫が、ニャミルの応対を受けているところだった。黒猫は嬉しそうに
「ばあば、僕の言ったとおりだにゃ。このばあばに似てる人の手を握るにゃ」
「はいはい」
嬉しそうに身なりの良い老婆はバリアールの前に進み出てくると、両手を彼女の目に差し出した。バリアールは一瞬驚いた表情をしたが、黙って両手を握り返した。
次の瞬間、身なりの良い老婆は蒸発するように消えてしまった。驚くニャミルを見ずに黒猫は
「バリアール、ちょっと修正を手伝って貰ったにゃ。これで因果が少し変化したにゃ。ばあばも元の世界に戻れたにゃ」
「ま、まさか」
黒猫は驚いているバリアールの肩に乗ると
「僕は本体じゃないにゃ。眷属だにゃ」
バリアールはシワだらけ顔をほころばせると
「ニャミル、七賢者の要請に応えます」
ニャミルは不思議そうな表情で
「よ、宜しいのですか?」
「ええ、魔王さんと少し遊んであげましょう」
老婆は黒猫を抱きしめて頬ずりすると微笑んだ。
その頃、ライフは美狩と青空の下、無人島のビーチに居た。非の打ち所の無い完璧な肉体を局部しか隠れていない紐ビキニで露わにして、マントで前傾姿勢の身体を隠している美狩の肩に腕を回している。
「ここは私の癒しの場所だ。美狩にもぜひ楽しんで貰いたい」
「わっ、私、体育の授業のプール苦手だって……あの……」
ライフはあっさりとマントの紐を解いて脱がすと、
「はっはっは!柔らかい可愛らしい身体が丸出しだな!私から取り戻してみろ!」
楽しげにマントをはためかせ、砂浜を駆け出した。肉がこぼれているビキニ姿の美狩は全身真っ赤になりながら
「うー……こっ、こんな……青春ドラマみたいなシチュエーションは……わっ、私には、似合わないけど……」
ブツブツ言ったあとに、深呼吸して、意を決した表情になると、全身恥ずかしさで真っ赤なまま胸を張って
「ほっ、欲しいんでしょ?私の緩んだ身体!ライフちゃんが捕まえてみたら?」
と言って少しずつ砂浜を後ろ向きに後退しだした。ライフは明らかに戸惑った表情になった後に、欲望に負けた自らに恥じらうように、マントを持ったままゆっくりと美狩の方へと進み始める。
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