第3話 連絡を・・・

「ハルカ、ハルカ起きてくれ。」

「うにゅ?お兄ちゃん?お兄ちゃん!やっぱり生きていたんだね!」

ハルカは眼の前のマサキに抱きつき嬉しさのあまり涙も流していた。


「いや、生きてるといえるのかはわからない。」

「えっ?」

「どうやら神様になるのかわからないが手違いで魂と身体が離れてしまったみたいなんだ。」

「そんな!ねえ、帰って来れるんだよね!ねぇ!」

「難しいそうだが生き返る術はあるみたいだ。」

「よかった〜」

ハルカか、安堵のため息が出ているものの、俺は真剣な瞳を向けてハルカに頼む。

「だけど問題もあるんだ。」

「なに?私に出来ることなら何でもするよ!」

「俺が生き返るには条件を満たさなければいけないのだけど、俺が生き返るまで身体を維持してほしいんだ。」

「条件って難しいの?」

「かなりね、少なくとも1年はかかるみたいだ。」

「1年も!お兄ちゃんがいない1年なんて長すぎるよ・・・」

「俺も寂しいけど・・・それより、大事な話なんだ、お義母さんや親父に俺の身体を頼めないだろ、たぶん処分を考えると思う。」

「・・・うん、実際そんな話をしていた。」

「そこで俺の貯金を使ってくれ、何年も社畜をして貯めた金がある。

その予算が尽きるまでには帰って来るつもりだ。

暗証番号は○○○○だ。通帳はハルカから貰った写真立ての中に入れている。」

「ねぇ、もし、もしもだよ、お兄ちゃんが帰ってくるまでにお金が足りなかったら・・・」

「その時は・・・

身体を処分になるだろう。

親父達が予算を出してくれるとは思えない。」

「そんな!」

「この話は親父達にもするが信じてくれるとは思えない。

だから暗証番号を教えるのはハルカお前だけだ。

俺の身体を頼む。

なるべく早く帰ってくる。」

マサキの姿が薄くなっていく。

「お兄ちゃん待って!お兄ちゃん!」

消えていくマサキの姿にハルカはすがるが結果は変わらなかった。


・・・


「お兄ちゃん!!」

いなくなったマサキの姿を追うように目が覚める。

「今のは夢・・・ううん!」

ハルカはマサキの部屋に向かい写真立ての中を見る。

「通帳があった。やっぱり夢じゃないんだ。」

ハルカは大事そうに通帳を抱き締める。

・・・その名義がハルカの名前になっていることに気付くのはもう少し後の事だった。


「やはり、マサキの身体を維持するのはなぁ。」

父親である、ヤスシは渋い顔をする。

元々マサキを嫌っているヤスシは今更金を使う気にはならなかった。


「そうよね、やっぱりお金もかかりますもの。」

「お父さんもお母さんとお金お金って!お兄ちゃんに生きていてほしくないの!」

「・・・」

「・・・」


「はぁ、お兄ちゃんにかかるお金はお兄ちゃんのお金から出します!」

「なんだと!マサキの金があるのか!

ハルカお父さんに渡しなさい。」

「いやよ!このお金はお兄ちゃんの命を守るために使うんだから!」

「何を言ってる、そんな無駄な事に使っても仕方ない!お父さんが有用に使ってあげよう。」

「そうよ!お母さんに任せなさい。」

「いやです!絶対に渡しません!

お兄ちゃんを守るの!」

この日からハルカは肌見放さず通帳を持ち歩くようになるのだった。

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