異世界に行った俺は妹に生かされています。
カティ
第1話 異世界転生したくないが
俺は楠木マサキ、今年25歳になる社畜だ。
これまで自身の生い立ちを不幸だと感じていたが、今ほど不幸を感じることは無かった。
「誠に申し訳ありません!!」
俺の目の前には土下座を決めた女性がいる。
「頭を上げてください、謝られる理由もわかりませんし、そもそも土下座なんてされたら困ります。」
「怒っていませんか?」
「怒るも何も事情がわかりません、そもそもここはどこなんですか?それで貴女は誰なんですか?」
俺は周囲を見るが真っ白で何もない、目の前にいるのは土下座を決めた、高校生ぐらいの歳の巫女服の女性だけだった。
「え、えーと、私はイヨと言って、神の秘書をしているものです。
それで楠木マサキさん落ち着いて聞いてください。
アナタは死んでしまいました。」
「はい?えーと、今話せているけど?」
「ここにいるのは貴方の魂だけで、身体は地球に残っているんです。」
「・・・えーと、夢かゲームのどっちかな?」
「夢でもゲームでもありません。」
「しかしな、死んだと言うなら死因はなんでしょう?」
イヨは目を逸らしながら申し訳無さそうに言う。
「・・・私のミスです。
本来なら貴方の住んでいる家の隣の家の楠マサキの魂を連れて来るはずだったのですが。」
俺は隣の家の家族構成を思い出す。
・・・隣の子と言えばミユキという中学生の少女だったはず、マサキという名前はいなかった・・・
そこまで思い出した時に気づいてしまう。
「隣の家?楠だったがマサキって子はいない・・・
おい、ちょっと待て!隣の家のマサキといえば犬じゃないか!」
マサキが犬という、事実を。
「申し訳ありません!!帳面を見ていただけでして、まさか隣に似た名前があると気付いていなくて。」
「俺は犬の代わりに死んだのか?」
「そうなります・・・
あっ、でも楠マサキさんはこれから70年生きる予定になりましたよ。」
イヨは誤魔化すように手をポンと叩いて良いことのように言う。
「犬が70年も生きたら騒動になるだろ!」
「あはは・・・」
イヨは気まずそうに笑う。
「なあ、間違えたなら俺を身体に戻してくれないか?」
「それも簡単にはいかないんです。
手続きが色々ありまして、最低でも1年はかかるのですが、魂を長い間身体から離していると意識が無くなって消滅してしまうのです。」
「おいおい、それじゃお前のミスで俺に死ねと言ってるのか?」
「い、いえ!こういうときには救済処置があるんです!
地球での生を諦めてもらいますが、別の世界で生まれ変わるというものです。」
「物語では聞いたことあるが・・・」
「そうですよ!さすが日本人話が早い、少しですが私の権限で能力もつけて差し上げれますので、これで決まりでいいですね!」
「いや、俺は異世界に興味は無い、日本で生き返る手段は無いのか?」
「・・・いや、手続きが。」
「手続きがあるということは生き返る手段があるということだろ?意識が無くなるというのは後付か?」
「そんな事は無いです、そのままだと意識が無くなり、生き返る事は出来ません。」
「そのままじゃなければ生き返れるのだな?」
「うっ!」
「どうなんだ?」
「生き返れます。でもこれはオススメ出来ない方法なんです。」
「それならリスクを教えてくれないか?何も知らずに生き返る方法を放置したくない。」
イヨは俺を見てため息をつく。
「わかりました、説明します。
生き返る為には最低1年、場合によってはそれ以上の時間がかかります。」
「手続きの時間か?」
「それもありますが、生き返る為の準備も必要です。
話を続けますがいいですか?」
「ああ、頼む。」
「先程準備と言いましたが、マサキさんの魂が生き返らせる程の魂だと、示してもらう必要があります。
そしてそれは貴方のチカラで魔王を倒してもらう事です。」
「魔王を倒せと?」
「はい、他の神に認めてもらうためです。」
「魔王なんて倒せる存在なのか?」
「無理を通す必要があるんです。
そして、一番の問題があります。」
「魔王を、倒すより問題って何があるんだよ?」
「貴方の身体です。」
「身体?」
「はい、魂の入っていない身体は電池の無い玩具みたいなものです、マサキさんの知っている言葉でいえば脳死状態でしょうか?
生き返る為には条件を満たすまで生命維持を続けもらう必要がありますが、マサキさんのご家庭は生命維持をすると思いますか?」
「・・・俺の貯金はそれなりにあるはず 生き返る事を伝えられるなら維持してもらえるかも知れない。」
「マサキさんが魔王のいる世界に向かう前に一度だけ、夢の中で家族と話す時間を作ります。」
「その時間で話をつけろということ何だな。」
「はい、私の権限ではそれぐらいしか出来ません。」
「わかったよ。それで魔王というのを倒すのにチカラはもらえるのか?」
「申し訳ありません、私がチカラを貸すと他の神に認められないのです。
マサキさん個人のオチカラで何とかしてもらうしか・・・」
「なんだ、そのハードゲームは・・・」
「ヘルモードですね。」
イヨが軽く言うことに苛立ち俺はコメカミをグリグリする。
「誰のせいだ誰の!」
「申し訳ありません!わたしが悪いんです!」
イヨは半泣きになりながら謝罪するのだった。
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