エナドリには手を出しません(確固たる意思)

今日の休み時間は寝たい気分だった。

夜中まで勉強をしていたせいですごく眠たい手をつねって必死に目をカッと開いて授業を受けていた。

先生は私の顔を見る度に「大丈夫か…?」とガチのトーンで心配された。

エナジードリンクに手を出そうか悩んだが、あいつは元気の前借りだ。

それで隼人さんの顔を拝むための寿命が縮むのは大変宜しくないことなので意地でも飲むつもりはない。

「だっる」

「遅くまで起きてるからでしょうが」

「正論すぎてぐぅのねも出ないって」

棗は私のおでこに手を当ててギョッと目を見開いた。

「熱い!アンタ熱計ったの?!」

そういえば朝起きてから体はだるいし頭もガンガンする。

「んへへ〜測ってましぇーん」

「保健室行くよ!」

「まだ…まだいける!」

私の言葉を無視して棗は半ば私を引きずるようにして保健室に連れて行った。


熱を測ると三十八度だった。

「先生お願いします…薬ください授業あるんです…」

起き上がってベッドから出ようとする私に我が高校のイケメン養護教諭は「大人しくしてくださーい」と言って強制的に横にさせられた。

「普通の女の子なら大人しくしてくれるんだけどね」

「それだと私がまるで普通の子じゃないように聞こえるんですけど…?」

「まぁちょっと個性的だよね」

「本音はどうですか?怒らないので言ってみてください」

先生は考える仕草をして数分後屈託のない笑みを向け私にこう言った。

「変わった子かな」

「ぶっ飛ばしたいです」

力が入らなくて出来ないけど元気だったらやってたと思う。

「今保護者に連絡したから来るまで休んでて」

「いや、授業…」

「だーめ、ちゃんと寝てなさい。元気じゃない状態でやっても頭に入らないでしょ?」

当たり前のこと過ぎて言い返せない。

私はいじけるように毛布を被った。

(今日隼人さんの顔見れないのかぁ)

寂しくて泣いてないといいけど…って隼人さんがそんなことで泣いたり心配したりすることは天地がひっくり返ってもありえないか。


お母さんが迎えに来て「病院行くよ」と拒否権すら与えられず連れて行かれた。

結論としては疲労と睡眠不足による免疫力の低下で熱が出たらしい。

薬を飲んで大人しく寝ていてくださいねと釘を刺された。

お母さんは帰ってきて私の参考書を没収して「今日のところは寝なさい」と言われた。

何故勉強しようとしていることが分かったんだと困惑しながら自室のベッドに横になっている。

いつもなら何とも思わないが、今日はすごく寂しい気がする。

(隼人さん何してるんだろ今…)

仕事してると思うけど。

スマホを触る気力もない程に体が動いてくれない。

明日元気になればお母さんに勉強道具は返して貰えるから早く治さないといけない。

ちょうどそう思っているとうとうとして瞼が重たくなってきたので私は流れに身を任せて眠ることにした。






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