第041話 『緊急事態』④
たしかに
どちらかといえば
それだって自分たちに危険が及ぶと判断すれば、危地に陥っている
カルネアデスの舟板、それ以前の問題なのだ。
冒険者とは自ら進んで、常に命の危険がある地に踏み入ることを是とする稼業。
ゆえに別にカインはことさらに偽悪を装っているわけではない。
冒険者を名乗るのであれば、それは絶対の不文律だというだけのことだ。
「それはもちろんそうなのですが、その……」
「まだ何かあるのですか?」
だがそんなことはアレンも十分承知しているはずである。
カインは例外としても、まだまだ子供らしい優しさ、あるいは甘さを捨てきるには至っていないシロウたちと違い、アレンは商人らしい損得勘定をキチンとできる大人なのだ。
ヒトの生き死にでさえ、算盤勘定が合わなければ理に従って冷静に見捨てることもできる。
『
名も知らぬ
利害が絡まないのに商人は動いたりしないものだ。
冒険者一党が全滅したとなればそれなりの騒ぎにはなるだろうが、そういう事件が絶無というわけでもない。
普通であれば十分対処可能なはずの『
ましてや
それなりの調査は行われたとしても、慢心は冒険者を殺すという少々手厳しい教訓を同業者に刻んで終わりになるのが関の山のはずだ。
その辺のこともアレンであれば充分に理解しているはず。
よってカインが、それでも動いた理由をアレンに問うのは当然のことだ。
「その
もっとも冒険者ギルドが立ち上げられた黎明期こそ徹底されていたそのシステムも、昨今ではほとんどまともに機能していないというのが実際のところ。
にも拘らず最初級の
だが監督官がいたからどうということもない。
というかその監督官の責務不行き届きだというだけに過ぎない。
もう少し大事であればまだしも、少々特別扱いを受けている新人たちを救ってまで冒険者ギルドに恩を売らねばならない理由などないのだ、今の『
「あー、もう、みなまで言わなくてもわかったよ。ネモ姉がその監督官ってことか」
だが言いにくそうに答えるアレンの言葉で、シロウはすべてを理解した。
カインも呆れたようなため息を一つこぼし、アレンがなぜこんなにも慌てて自分を――状況を打開できる戦力を持った『
「きつく止めておられたのですが、夜を待つまでの間に――」
「ネモネさんの隙をついて勝手に出発したんですね」
「はい」
「でお人好しのネモ姉は単独で後を追いかけた、と」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます