第180話 剣技大会?
あの後はアルフとイチャイチャしながら寮に帰ってフェリノを無理矢理連れてきて抱き締めながら眠った。やっぱり幽霊なんて嫌いだ。怖いもん。
次の日起きた時フェリノがぷるぷる震えて抱き締められていた。何で震えてるの?顔が赤いのだけど風邪でも引いてしまったのだろうか。
「大丈夫?」
「へゎ!?だ、大丈夫だよ!?」
一応心配なのでフェリノの額に額を付けて熱を測るが平熱のようだ。こういう時魔法とかで体調が判れば良いのだがそこまで繊細な魔法は出来ない。制御の素因を持つ私で出来ないのだから多分この世界で出来る者は存在しないだろう。
「ん、熱がある様子は無いけど体調を崩すようならすぐに休むんだよ?」
「うん。分かった」
とりあえず抱き締めているのを解放するとフェリノはゆっくり立ち上がってそして座り込んだ。変な動きだが本人が大丈夫と言っている以上あまり突っ込まないでおこう。
「今日はフェリノの剣技大会だったよね。見に行くよ」
「うん。頑張るよ!」
「ん、頑張って」
フェリノの頭を撫でると凄く気持ち良い。一応フェリノと私の年齢は一緒の筈だけど妹みたいに感じてしまう。まあ可愛いから良いか。
寮を出て体育祭の剣技大会の舞台にまで歩いてくる。アルフの時とは違い既にちらほらと男達が最前列を埋め尽くしかけている。空いていた最前列の席に座ると男達から睨まれた。まあじとっとした感じの恨みがましい視線だからそこまで怖いものでもない。
「おぅい!そこの女ぁ?その席を我に譲れ。ついでに我の隣に侍ることを許してやる。光栄に思え」
剣技大会開催まで後二時間くらいかな。朝食用にパンが届いたから食べてみよう。というか預けて一日で白パンを作って届けに来たメリーが凄いなと本気で思う。しかも白パンにも種類があるみたいで食べ比べるのが少し楽しみだ。
「聞こえているのかぁ!?女ぁ!?」
クロワッサンのような形に作り上げられている白パンが一番気になる。サクサクしているのかな?でも白パンの白パンたる所以はふわふわもちもちってイメージなのだけど合うのかな?食べてみたらあくまでクロワッサンのような形というだけのようだ。ふわふわもちもちで控えめな甘さが口の中に広がる。あっ、これ中にチョコか何か入ってるな。上品な甘さが口の中を蕩けさせてくる。美味しい。
「お前ぇ!!この我を無視するのか!!」
スタンダードなロールパンの形をした白パンも美味しい。パン本来の甘味を最大限生かした作り方をしているみたいだ。少ししっとりとした舌触りが甘さを際立たせてくれる。
「この我を虚仮にするんだ。相応の覚悟は出来ているんだろうなぁ?」
フランスパンのような形のパンもある。但し少し切れ込みが入っていてソーセージなどを入れてくださいって言われた。この世界には意外に無いホットドッグ形式のパンだ。自分で作り出したのだろうか。とりあえず以前焼いたオーガジェネラルの肉でも入れておこう。ヒヒが連れて来たオーガジェネラルのものだが原型を留めていないからギルドに出せないんだよね。まあ美味しいから別に良いけど。
!?美味しい……。蕩けるような肉と肉の素材の高さを決して損なわないどころかむしろ補って余りあるパンとの調和が凄い。今まで食べていたホットドッグとかは多分これの未完成形だったのだと言いたくなるほど美味しい。
「もう良い!やってしまえ!」
私のパンを横から(スイが避けたから誤解です)取ろうとした不届き者の手を捻りあげて舞台に向かって投げ入れる。更に背後からパンを盗もうとした(スイが避けた略)盗人にティルを絡ませると舞台に投げる。その後私のパンを切ろうとした(スイが略)馬鹿を蹴飛ばして舞台に落とす。それを指示した屑の鳩尾に足の爪先で抉るように蹴る。何か吐きかけたので顎を軽く蹴って口を閉じさせたあと振り上げた足を下ろして肩を砕く程度の力で地面に叩き伏せる。ちなみにこの間スカートだったけど見えないように魔法で光を発生させています。
「ん?この人達何?」
やった後に気付いたけど誰だろうか。貴族っぽいけどまあどうでもいいか。とりあえず痛みか叩き伏せたせいか気絶している人を舞台に投げ入れておく。元の席に座ろうとしたら図々しくも座っていた馬鹿が居たので首根っこを掴んで最後尾付近まで投げておいた。
「剣技大会まで後一時間くらいかな。フェリノ大丈夫かな?」
「大丈夫だと思うよ」
ディーンの姿を最近見ていないのだけどずっと見えなくするのは辛くないのかな?それとも修行の一環かな?まあ長時間持続するようにって言ったのは私だけどさ。
「声だけじゃなくてディーンの可愛い姿も見たいな」
そう言うと困ったような雰囲気の後ディーンの姿が現れた。自然に現れたからあまり誰も気にしていないようだ。現れたディーンの姿を見ると私の膝をぽんぽんと叩く。
「おいで」
「い、いや、さ、流石にそれは……」
「でも席はもう無いよ?立っていたら迷惑だから早く」
「席じゃない場所にしゃがめば……」
「多分駄目じゃないかな?それが出来るなら誰も席なんて気にしないと思うよ?」
「な、なら少し離れた場所に」
「私と一緒に居るのは嫌?」
「嫌じゃ…ないけど」
「なら良いね。さあ、早く。おいで?」
観念したようにディーンが歩いてきたので私の膝の上に乗せる。やっぱり軽いね。ぎゅっと抱き締めるようにするとディーンの耳が少し赤くなりかけている。可愛いなぁ。頭を撫でて耳をすりすりしていると剣技大会が始まったようだ。一時間近く私はディーンの頭とか耳を撫でていたのか。可愛すぎるのがいけないと思います。
始まる前に舞台にべちゃって感じで落ちている貴族?っぽいのに一瞬困惑した司会者だったけどすぐにスタッフ達に適当に追い出させた。手馴れているね。何回か似たような事あったのかな?
そうしているとフェリノが入ってきた。アルフと違って早い段階で出るんだね。そう思っていたら司会者からとんでもない言葉が出てきた。
「ええっと、正直変な感じではあるのですがフェリノ選手に対抗できる選手が居ないと判断したので全選手の意向を聞いた上でフェリノ選手の勝ち抜き戦という形になりました。ちなみに私達の提案ではなくフェリノ選手からの提案ですので叩かないでください」
司会者の言葉を本当かフェリノに目配せで訊くと頷かれた。それなら良いや。まあフェリノ速いからね。剣技大会では無双状態だと思う。
「あっ、ディーン羨ましい!私も後で撫でて!あとディーンも撫でさせて!」
「ん、頑張ったらご褒美で撫でてあげる」
「僕は……うん、まあ良いよ。フェリノ姉頑張って」
「よっし!気合い入った!さあ早く出てこーい!」
フェリノはそう言うと剣を振り回してる。残像が出るレベルで。うん。速いね。あれ受けられる人居るの?ルゥイならいけそうだけど体育祭に剣聖なんて出てきたら駄目だろう。王騎士の息子なら居るけどさ。
試合の話はした方が良いのだろうか。今私の手の中で幸せそうに目を瞑りながら撫でられているフェリノの姿で大体察してくれないだろうか。
何というかフェリノの試合は大胆だった。というか剣技らしい剣技を見せなかった。基本一振りで吹き飛び偶然受け止められた子も二振り目で吹き飛んでいた。決勝戦で出てきた子は他の子に比べたら強いのは間違いなかったがフェリノの超高速剣に振り回されて九振り目で剣が折れて吹き飛ばされていた。うん。大人気ないとしか良いようがない。いや基本的にフェリノより年上の子しか居なかったけどさ。目当ての子が吹き飛ぶ度に男達の残念そうな声が響き渡るのがうるさかった。フェリノしっかり吹き飛ばせ方を練習でもしたのかスカート等が見えないように平行に飛ばしていたものね。ついでにフェリノ自体も見えないようにしていた。無駄に高い技術である。
とりあえず私はいつまでフェリノの頭を撫でておけば良いんだろうか。
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