本編1(仮)
〚朝は地獄の時間!?〛
ドッ 「えぅ!!」
とてつもない衝撃をお腹に感じて目を覚ますと、握り拳を固めた女子が僕のベッドの横に立ってる。
「ねぇ…暴力的に人を起こすの止めない…?」
「いやぁ…どれだけ声をかけても〚琥珀〛が起きないかったから、…仕方ないね。」
5月の始めの日から腹パンで人を起こす暴挙を行うこの女子…〚日向 楓〛は僕の〚シェア・パートナー〛…つまるところの寮の相部屋をしている相手である。
数年前なら男子と女子が同じ寮部屋で過ごすなんてありえなかったけど、6年前の〚第一次付喪事変〛以降、私立高校では男女を互いの好き嫌いに関わらずパートナーにして寮の部屋…〚シェアルーム〛に入るのが定番となっている。
実を言うと僕は楓のことが結構好きだから本当にラッキーだと思ってる。
友達の中には互いに嫌いあってる男女が相部屋とかいう地獄みたいなことになってる〚シェア・パートナー〛もいるし…
僕…〚葵 琥珀〛は殴られたお腹をかばいながらシェアルーム唯一のプライベートゾーンである着替え用個室にいって私服から制服に着替える。
朝食はそのシェアルームで暮らす二人が交代制で材料を買って作るように校則で決まっている。
今日の担当は楓だ。
着替え終わってからキッチンに行くとおいしそうなにおい…ではなくどこか焦げ臭い香りがしてくる。
楓とシェア・パートナーになった上での問題点、それはさっきみたいに楓がすこ~し暴力的なところ、そして絶望的に料理が下手なことである。
今日、楓はアジフライをメインに作ってくれたんだけど、衣が厚すぎて中まで火が通ってないし、逆に汁物の味噌汁は火が通りすぎてジャガイモが崩れて溶けちゃってる…。
「う…。…にが……」
「…何か言った?」
案の定アジフライは苦いし味噌汁はへんなとろみが付いてるけど、あんまりいろいろ言うとまたお腹殴られるからやめとこ…。
楓も自分の料理が壊滅的だってことは知ってるみたいで不快そうな顔をしながら自分で作った朝食を頬張ってる。
…いくら普段料理しないからといってもここまで料理下手になるもんかな…。
この時代にはめずらしく、楓には〚母親がいる〛
僕の場合、家族は〚第一次付喪事変〛により全員しんでしまった。
今の時代では家族のいない子供を優先的に私立学校が入寮を条件に入学させてくれるようになったけど、〚第一次付喪事変〛直後は 孤児が溢れかえって小中高等学校が引き取りきることができなかったらしい。
今ではもう家族の顔も思い出せないけど、母親がいる楓のことはすごく羨ましい。
ただ、母親がいるから楓は生まれてから一度も料理をしたことがないらしい。
煮込み料理や燻製料理が作れないってならわかるんだけど、楓は卵焼きはおろかシェア・パートナーになったばかりのころはお湯を沸かすこともできなかったんだ。
母親がいるのは羨ましいけど、素直に羨ましがれない…。
「「ごちそうさま。」」
意味のないことを考えながら朝ご飯を食べ終わって高校指定の鞄を肩に掛ける。
「楓、そんなに落ち込まないで、昨日のぐちゃぐちゃハンバーグより食感は良かったから。」
「…慰めになってないんだけど。」
凛が僕をジロリと睨むのを感じる。
マズイ…また殴られるかも…
今日は少しソーシャルディスタンスをとって登校しよう…と決心した。
〚神舞う空へ〛 ゼロ・チッカ・ニア @zerotikkania
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