第14話 とりあえず森に向かいます
仕事を受けた俺は、町の外に出ていた。
町の出入り口は商店街の大通り沿いに東と西に分かれており、東側を出たら草原があり、西側を出たら大きな川を介して森があるみたいだ。
おそらくおじいさんは、その川で俺を見つけたのだろう。
今回は食材採取だし森の方がよいと思い、西側出口から町を出た。
川にはつり橋が掛けられており、その先すぐ森となっていた。
森といっても人が通る道はあるので、そこを歩いて行ったら隣町などに行けるのだろうか。
とりあえず橋を渡ることにしよう。
「よし!」
俺は慎重に一歩ずつ、つり橋を進んでいく。
「こ・・・このつり橋大丈夫か!?」
つり橋はあまりにも古く、1歩進むだけでもギシギシとすごい揺れる。
そして、足場と足場の隙間が結構あいており、その隙間から下の川が見える。
川とつり橋の高さはそこまでないので怖くはない。
川はきれいで魚がちらほらいる。
「釣りもいいかもしれないな」
生まれて今まで、釣りなんてやったことがなかった。
しかし、ネットの動画で釣り実況をしてる人を見たとき、とてもやりたいと思う時期があった。
しかし、もちろん友達もいないし、外出すること自体が怖かった。
やりたいことも出来ないなんて、人生もったいないな。
そんなことを考えていた時、がくっという衝撃と浮遊感が身を包んだ。
「なっ!!」
足場が壊れた。
しっかりと木材を踏んだのに、その感覚がなかった。
そのまま川に落ちた。
しかし、川の流れは穏やかで、高さもなかったので、ただ濡れてしまっただけだった。
すぐ横に、ふわふわと水を漂っているものがあった。
それを取って確認してみると、それは茶色く古ぼけた布であった。
「ま・・・まさか!!」
俺は確かに橋の足場を踏んだ。
しかし踏んだ感覚はなく、今近くには布がある。
これらをまとめると・・・。
「こんな布で、足場を補修したのか!」
おそらく、橋の足場の木材が何らかの理由で損失してしまい、それを木でなく布で補ったという事か。
「足場の修理もできないのかよ・・・くそっ!ずぶ濡れだ!!」
とりあえず向こう岸に行こう。
体や服が水に濡れてひんやりするが、零体だし風邪なんかひかないだろう。
そんなことを考えながら、森の入口からあたりを見渡してみた。
ぱっと見は分らないが、集中して探してたら食料がありそうな気がする。
そこでふと右手にさっきの古い布を握っていたことを思い出した。
布を見てみると角に名前らしきものが書いてあった。
・・・ゲンゾウ・・・
「ゲンゾウ!俺はお前を忘れない!!」
俺の中に深く名前が刻まれた。
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