第5話 歩きますとも、未知なる大地

意識が覚醒していく。


どうやらいつのまにか寝ていたようだ。

意識がぼんやりしている。

いつも寝起きの際に見ている天井がない。

目の前には青空と、周りに生い茂る木々が見える。

ときおり吹く風が気持ちよく、草の音を奏でている。

このまま目を閉じて寝たいぐらいだ。


・・・・・・ぐぅ


「って・・・ちがうだろ!!」


自分で自分に大声で突っ込んでしまった。


「どこだここ?」


周りを見渡したら、木々が生い茂る風景が広がるばかりで、日光が木々の葉から染み渡る。鳥のさえずりが聞こえる大自然の中、自分1人だけが取り残された気分になった。

そして何より、都会の空気と違い、自然の澄んだ匂いが鼻腔をくすぐる。


これは夢じゃないのではないかという感覚に陥る。

人間は夢を見ると、それは夢か夢じゃないかと考えることは少なく、稀に、そう感じて実際に夢から覚めると、やっぱり夢だったとなることがある。


しかし、昨日は自分の部屋のベッドで寝ていたはずなのだが、気付いたらここにいた。

これは夢だと確信できる要素がいくつもあるのに、夢にしてはリアルだ。


「昨日の夢に似ているな・・・」


何かしら昨日の夢とつながりがあるのだろうか。今は何もわからない。


「とりあえず、ここでじっとしていてもしょうがないか。どっちに進もう・・・。」


今の状況を把握するため、進むことを決意する。

どこを見渡しても木々が生い茂ってる同じ景色だ。


何も手掛かりがない。


こういう場合は、闇雲に歩き回らず、生きる為に必要なことをクリアしていくのがセオリーだ。

しかし、素人には何処に行ったらそれがクリアできるのかが分からない。

そもそもこの世界に人が住んでいるのかも分からない。

まぁ夢だしいつか覚めるだろう。


同じところを周らないためにも目印が必要だ。

「しょうがない、太陽を目印にするか。」

それで解決できるかは分からないが、今の俺にはベストな選択だろう。

そうと決まれば進もう!


歩きながら今後について考える。

夢の中でも空腹感など出るもしれないので、食べ物と水を探しながら進むことを決める。

そうすることで、万が一これが現実だった場合でも、生き続けることが可能だろう。


そして、しばらく進んだことで分かったことがある。

歩いたら疲れるし、汗が出るという事に。


「夢なのに、いらんところがリアルだな。」


まったく、夢なんだからもっと楽させてほしいものである。

嘆いてもしょうがない、先を急ごう。


・・・・・・・・ 


途方もない時間歩いている気がする。

ちょっと焦りが見え始める。

問題が解決しないのもあるが、時間が経つにつれて太陽が動いているのだ。

最初は太陽に向かって歩いていたのに、今太陽は背中側にある。

このままでは太陽は沈み夜が来てしまうのだ。


時計もスマホも何も持っていないので、時間間隔が分からない。

一体何時間歩いたんだ・・・。


心が疲弊する。


食べられそうな物はないか注意しながら歩いているものの、草が生い茂ってるばかりで、たまにキノコがある程度だ。

無知な俺でもわかる。キノコは素人が触れていいものじゃないと。

せめて木の実を見つけたい。


しかしながらこの夢はリアルすぎた。


何も見つからないまま日が暮れそうだ。

日が暮れてしまうと、目印の太陽がなくなってしまうので進むのは危険だ。

何より、周りに明かりが全くないので、真っ暗になるだろう。


お腹もすいたし、喉も乾いている。

それらの欲を満たすよりも、寝床を探すのが今は優先だろう。


でも・・・


「本当に何もないな!!」


しょうがない、今のところ動物も見かけないからこのままここで寝よう。

少しだけ開けた場所に出たので、ちょうどよかった。

開けたといっても学校の校庭よりも狭いぐらいだ。


近くの木を背もたれにして座った。


「喉が乾いたな。川さえ見つけることができたらいいんだけどなー。」


そう言い、うなだれる。


「動物がいないってことは近くに川がないからかな?」


夢なんだから、ちょっと歩いたら川ぐらい見つけたかったものだ。


そんなことを考えていると、よっぽど疲れていたのか、睡魔がやってくる。

そして、まだ夕方なのに寝てしまった。

まさか、夢の中で寝るなんて思いもしなかった。

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