第2話 繰り返す日常、でも楽しみはあります!

目の前に、天井が見える。


(ドクドクドク・・・)


心臓が痛いほど早く脈打ってる


「ほんとに・・・夢だったんだ」


全身が脱力感に襲われる。

9月にもなるのに、セミの鳴き声が聞こえる。

その鳴き声を聞き、今日から高校1年生の2学期の始まりである、始業式があることを思い出す。

ただでさえ、夢と暑さのせいで湿る肌に、別の汗が上書きしてくる。

心が重い、気のせいではなく本当に。


(学校に行くの嫌だな・・・)


まだ今日は始業式だから早く帰れるが、明日から日中ほぼ学校だ。

授業が終われば帰宅部なので、すぐ帰れるのだけが救いだ。

そんなことを考えていると、1階からお母さんの声が聞こえてきた。


「明~、明!!もう起きてる?今日から学校でしょ!朝ごはんの支度できたから下りてきなさい!!」


今日から休日まで毎日聞く言葉だ。毎日、同じ時間に同じ言葉を聞く。

毎日同じ時間を繰り返しているかのようにも感じる。

そんな言葉に、こちらもすかさずいつもと同じ言葉を返す。


「はーい」


そう短く返事をする。この際、何かしら声が聞こえたら向こうは納得することを俺は知っている。

毎日の繰り返しに長返事は必要ない。

そう考えてるうちに着替え終わり、鞄を持って台所に向かう。

今日は始業式だけなので、荷物はない。むしろ手ぶらでもいいぐらいだ。


台所に着くと自分の席に座る。机の上には、ごはんと、ベーコンエッグ、味噌汁、漬物と並んでいる。はやり朝は、パンより白飯に限る!

学校に行くのは嫌だが、食事だけは唯一の楽しみともいえる。

食事をする、その行為が1日の半分以上の楽しみを占めているといっても過言ではない。


テレビを見ながら朝食をとる。

画面のなかでは、女性アナウンサーが必死に原稿を読んでいる姿があった。こんな早朝からご苦労なことである。

内容を聞いていると、とある学校でいじめが原因で自殺をした学生がいたみたいでVTRに切り替わり、その学校の校長がインタビューに答えていた。

どうやら自分の学校でこんなことが起きたことが信じられないらしく、調査した結果、他のクラスなどではいじめは確認できなかったと答えていた。

そのニュースを見て俺は鼻で笑っていた。

楽しい時間が台無しである。


そうこうしていると食事の時間は終わってしまい、家を出る時間だ。

時間ギリギリまで粘ったが行くしかない。

玄関に向かい歩く。


「気を付けて行ってきなさいよ~」


母の声が聞こえてくる。


「いってきます!」


それに答え学校に向かうべく外に出る。

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