姉さんと僕とストーカーとスズキさん

@mia

第1話

 僕の姉さんは、弟の贔屓目ではなく、とても素晴らしい人だ。

 まず、性格が良い。優しくて思いやりがある。優しいといっても優柔不断ではなく、決断できる人だ。カッコいい。

 それに容姿もいい。顔は可愛いというか綺麗というかとにかく美しい。

 勉強もできる。定期テストは、物理はちょっと苦手だけど、それでも学年で10位以内には入っている。その他の教科は、大体いつも3位以内に入っている。

 歌を歌わせてもうまい。テレビで見るアイドルなど目じゃないし、運動神経もいい。欠点など何もないような人だ。


 もちろん、そんな人だから姉さんに憧れる人は多い。

 校内にファンクラブが三つある。非公認だけど。卒業した中学校にも、同じぐらいあった。

 高校生にもなると他校との交流も盛んになるので、よその高校にもファンクラブはある。もちろん、非公認。

 出かければモデル事務所やら芸能事務所やら、スカウトの声をかけられる。

 姉さんを好きになるのは当然だと思うが、迷惑をかけるのはやめてほしい。

 登下校する時に校門で待っていたり、どこか出かける時についてくるのは、本当に嫌だ。

 ファンクラブの人たちが管理してくれているので、校門にいて騒いでいる人達はうっとうしいが害はない。図々しく話しかけてくる人に比べればずっとマシだ。

 どこに出かけても、しつこく話しかけてくる人がいる。中には話しかけてくるだけではなく、メールや手紙などしつこく送ってくる奴もいる。

 自分はしつこい人間だと、自覚があるやつはまだマシだ。僕と目が合うと目をそらし、近寄ってこない。

 だが、全然自覚がなく、自分は友達だと思い込んでいるおかしいのもたまにいる。 

 馴れ馴れしすぎて、怒りがわいてくる。

 追い払っても追い払っても、寄ってくる。     

 そういう時は、スズキさんに相談する。

 そうすれば、二、三日もするとおかしいストーカーはいなくなる。


 スズキさんが何をしているのかは知らないし、知らなくていいとスズキさんも言っている。

 ストーカー行為をする犯罪者が悪いのだから、僕が気にする必要は少しもない。

 姉さんは気にしているようだが、そんなのを気にするなんて優しすぎる。

 高校生になり一緒に出かけることも少なくなったので、僕が声をかけてくるヤツを直接追い払うわけにもいかなくなる。

 見ていて歯がゆくなる。

 だから僕はこんな思いを解消してくれる、スズキさんの存在をありがたく思う。


 買い物があった僕は一人で街を歩いていた。

 幻覚を見た。

 一瞬だけど、姉さんの幻覚を見た。

 本物ではない。だって、姉さんが一緒にいたのは、スズキさんだったのだから。

 二人が知り合いのはずはないから、幻覚だ。


 幻覚でも姉さんは、素敵だった。

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