第17話 

「そうだな。2人は恋人を作らないのか?」

「私は出来ないのよ」

「僕も出来ないよ」


 出来ないんじゃなくて作っていないだけだ。


「ユウはよくスマホのID交換をお願いされて断っているだろ?」

「え~、お姉ちゃん知りたいな~」


 レナはユウの顔を下から覗き込んで頬をツンツンしていた。

 長くなるだろう。


 俺はその間に食事を始める。

 ユウとレナは仲がいい。

 知らない人が見たらお似合いのカップルに見えるだろう。

 お互いに、兄弟を超える理想の相手が見つかるのか?

 ユウ目線で見て、姉を超える恋人が現れるのか?


 2人は見た目が良く、性格もいい。

 あのヒステリーを起こす母の元で、まっすぐに育った。

 きっと2人とも自頭がいいのが影響している。


 俺の見えない所でいろいろ学んで、そのおかげで性格が歪まずにいられたのかもしれない。

 そんな事を考えながら2人を見つめて食事を終わらせた。


 金を置いて立ち上がる。


「じゃ、また学校でな」

「またね~」

「また」


 ファンタジーコーポに帰るとすぐにサヤからメッセージが来た。


『手伝って欲しいことがあるの』

『すぐに行く』

『お願いね』


 サヤの部屋に着くとすぐに扉が開いた。


「入って」

「道具は必要か?力仕事なら任せてくれ」

「道具はあるから大丈夫、入って」


 俺は部屋に入った。

 昨日は整理されていたサヤの部屋だが、タオルが床に置かれていた。


「何を手伝えばいいんだ?」

「その前に飲物を飲も、お話がしたいな」

「おう」


 電気ケトルがこぽこぽと音を立ててコーヒーの用意が進んでいく。


「サヤ、コーヒーを飲めるのか?苦い物は苦手だったよな?」

「コーヒーは苦手だよ。でも手伝って貰うのにコーヒーくらいは出したいよ」

「でも、ドリップセットとか全部用意してあるだろ?」

「やってみたかったんだ~。匂いは良いよね、苦いけど。イツキ君の苦いモノなら飲めるよ」


 また俺をからかう。

 サヤは器用にコーヒーをドリップして俺に渡す。



「うまい」

「手間をかければ美味しいのかな?」

「そうだな、お店の味がする。粉をお湯で溶かすのとは違う」

「えへへ、良かったあ」


 俺はコーヒーを飲み干した。


「お代わりもあるよ?」

「それよりも、手伝いをしたい」

「うん、オイルマッサージを手伝って」


「おいるまっさーじってオイルマッサージか!あのリア充が行ういにしえのエチエチイベントのアレか!」

「うん、私にオイルを塗ってマッサージするオイルマッサージだよ?背中にうまく塗れなくて困ってたの」


「せ、背中なら、何とか」

「お願いできる?」

「大丈夫だ」


「よかった」


 サヤがワンピースを脱いだ。


「え、ちょ!下着だけ!」

「お願いね」


 そう言って大きいタオルに寝転がる。


「あ、ブラも取らなきゃだよね、うっかりしてたよ」


 サヤが黒いブラを外した。


「イツキ君、お願い、来て」


 その言い方はワザとか?

 俺は無言で背中にオイルをかけた。

 そしてオイルを手で塗った。


「ん、んん、あ、あんあ!はあ、はあ!」


 サヤの体がビクンビクンと反応する。

 そして横に膨らんでいる胸がぽよんぽよんと動く。


「くすぐったいか?」

「私、くすぐったいのに弱くて」


 く、サヤの声で、煩悩しか現れない。

 煩悩しかない。




 俺は強引に思考を切り替えた。

 朝起きてからの行動を思い出す。

 今日朝起きてから、そうだ、下着を着替えて電気ケトルのスイッチを入れたんだ。その隙にトイレに行って手を洗って、コーヒーを……ゆっくり飲んだ。通学用の靴じゃなくてランニングシューズを履いてドリームに歩いて向かった。朝日が気持ちよくて、サヤの肌が柔らか!


 駄目だ!意識を持っていかれる!




 俺は何とか自我を保った。


「終わった。もう大丈夫だ。拭けばいいか?」


「イツキ君、塗って欲しいと言ったけどオイルマッサージは塗った後が本番だよ?オイルマッサージはマッサージがメインだよ。もっとマッサージして」

「わ、分かった」


「ああ!ん!ん!はひ!」


 マッサージは続いた。




 ◇




「はあ、はあ、はあ、はあ、凄く、いいよ。もっと、お願いしたいなあ」


 くすぐったいのに馴れるまで声が凄かった。

 エロ動画のような声だ。


「これ以上は、はあ、はあ、もうギブアップです」


 マッサージをしているだけだ。

 でも、サヤの声と反応が凄すぎて理性が持たない。


「はあ、はあ……そっか。少し休んでから、シャワー、浴びるね」

「俺は帰る」

「待って!」


 サヤが俺の腕を掴んだ。

 片腕で胸を隠しつつ俺の手を離さない。


「さみしいなあ。シャワーから出たらお話したい」

「……分かった」

「一緒に浴びよっか」

「からかうな」


 サヤがシャワーを浴びる。

 


 そして無防備な服装で出てきた。


「髪を乾かして欲しいなあ」

「それくらいなら、大丈夫だ」


 なんだろう、以前なら髪を乾かすだけでも断っていたかもしれない。

 でも、マッサージに比べれば余裕だ。

 サヤにドライヤーを当てて手で頭を撫でるように乾かしていく。


「うーん、気持ちいい。終わったら肩をもんで欲しいなあ」


 俺は肩を揉む。

 サヤは、触るより触られる方が好きなのかもしれない。


「ふ、ふ、気持ち、い、ん」

「くすぐったいか?」

「慣れてくる、から、あ、大丈、夫、ふ」

「肩が凝りやすいのか?」

「うん、筋肉、不足か、な?」


 胸が大きいからだろう。




 やっと声が収まった。


「イツキ君は凝ってる所は無い?」

「俺は大丈夫だ。もういいか?」


「もうちょっと」


 くすぐったいのに馴れるとサヤの、目がとろんとしてきた。


「おっし!終わり」

「もう一杯飲んでいこうよ」

「そうだな」


 サヤがコーヒーを淹れる。

 仕草が綺麗で動きが滑らかだ。

 その後俺は、コーヒーを飲んで、それが終わると食事を貰って食べた。

 さらにその後コーヒーを貰う。

 とにかくコーヒーを淹れたいようだ。


 サヤが俺に座りながら話を続ける。

 じわじわと侵食されている?

 でもそれが、心地いい。


 夕食を貰ってから帰った。

 結局俺は長い間サヤと一緒にいた。


 次の日になると朝からサヤが俺の部屋に来て、掃除と洗濯をしてゴミを出して戻って来ると食材とコーヒーセットを持って来て料理を振舞い、一緒に買い物に行って来てシャワーを浴びて帰ったのは夜になってからだった。

 コーヒーセットは置きっぱなしにして帰った。


 サヤがいるのが心地よく、体に良い物を食べて、気分も変わっていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る