第8話 

【教室】


『質問3つ目、イツキさんとユウヤさんはどっちが受けでどっちが責めですか?』

『……は?』


『ボーイズラブは分かるよね?』

『この質問は完全にアウトだろ。俺はノーマルだ!』

『はい、イツキ君はノーマルです』


『質問4つ目、イツキ君はスキンシップの多いあざとい女をどう思いますか?これは、今の私の事かな?』

『あざといか。どこまでがあざといかは分からない』


『この質問はもやっとしてるよね』

『そうだな』

『1つ1つ聞くね。男子生徒の顔に触ったり、腕を触ったりするボディタッチの多い女子生徒はどうかな?』

『嫌がられていなければ有りだと思う』


『うん、いつも笑顔の子はどうかな?』

『悪くないだろ?』


『男子と距離が近い子はどうかな?』

『スキンシップと同じで嫌がれてなければ有りだ』


『上目遣いの子は?これは私の事になるかな』

『新妻が小さいだけだろ?問題はない。というか、新妻だと思って新妻に言わせてるとしたらそいつ性格悪すぎだろ』


『むう、でもそういう子は女子から嫌われて嫌がらせを受けるよ?』

『俺はそういう事で嫌がらせをする女子が嫌いだ』

『イツキ先生、解説をお願いします』


『解説、か。そうだな、嫌がらせをする奴は嫉妬だろ?あの子だけ好きな男子と仲良くするのが気に入らない、だからいじめる。それは見ていて気分が悪い。羨ましくて人の足を引っ張るくらいなら黙っているか自分もまねをすればいいと思う』


『……イツキ君』

『ん?』

『サムライだね』

『そうか?』

『武士道だよ。曲がった事が大嫌いな武士だよ。汚い心は許さないんだね』


『そこまででは、でも嫉妬する気持ちは分からんでもない。本人に迷惑が掛からないように悪口を言ってしまうのは分かる。俺も悪口は言っているかもしれない』

『ふむふむ』

『てかこれは俺の勝手な意見だ。他の意見もあっていいとは思う』


『……思ったのは男子にだけ良い顔をして裏で態度の悪い子は嫌われるよね?』

『それは嫌だな』


『今思った』

『どしたの?』

『俺新妻と話してるだろ?』

『うん』


『新妻と話している俺、爆発しろくらいはみんなに思われてるだろうな』

『イツキ君、それは私も思われてるよ』

『この話はやめようか。てか、もう時間過ぎてる!』


『もう終わりだ』

『これにて放送を終了します』




【放送室】


 つい熱くなってしまった。

 俺は新妻の話を聞いて、新妻がいじめられている事をイメージしてしまったのだ。

 思い返すと、恥ずかしくなってくる。

 中二病全開の発言だった。


 新妻が放送のスイッチを切ろうとした瞬間に俺は話しかけた。


「新妻、何とか終わったな」


 そういった瞬間に新妻の体がビクンと跳ねた。


「悪い、びっくりさせたか。男が苦手だったよな。無理をさせた」

「うんう、それよりごめんね。私が発言して、それでイツキ君が放送委員になっちゃったから」


「嫌ではあったけど、もう終わった事だ」

「ありがとう」

「それよりも、新妻は大丈夫か?男が苦手だろ?しかも苦手な放送委員だ。責任を感じて無理に立候補しなくても良かったんだ」


「いいの。それに、前私が図書委員になった時立候補してくれたよね。委員会はみんなやりたくないのに」

「……そんな事もあったな」

「私ね、男の人だと、イツキ君が一番話しやすいよ」


「俺は安全な男、紳士ですから!」


 俺は放送委員に任命した先生のマネをして親指を突き出した。

 新妻も親指を突き立てて合わせてくれる。

 新妻は優しいな。


「でも、俺も思春期男子だ。気を付けろよ」

「ふふ、イツキ君は何があっても大丈夫だよ」

「思春期男子舐めんなよ。気を付けろって」

「イツキ君なら何があっても大丈夫だよ」


 俺を信頼してくれているのか。

 でも少し話が噛み合っていない気がする。

 いや、気のせいか。


「あ、質問を1つ忘れてたよ」

「次にしたらいいだろ?てか何?何の質問?事前に言ってくれないと困るんだよなあ。さっきのは全部困らせるための質問だろ」


「今日、手を繋いで一緒に登校したでしょ」

「男避け対策の件について?」

「うん。それもあるけど、大丈夫だったのかなーって」


「大丈夫だ。てか新妻、1人で登校して大丈夫か?危なくないか?攫われるイメージしかないんだけど?俺が本気を出せば、新妻位なら簡単に誘拐できる」

「たまに、男の人に、声をかけられるかな~。腕を掴まれた事もあったよ。ははは、告白されるのも、呼び出されるのも苦手だよ」


「危ないだろ」

「誰かがボディーガードになってくれないかなあ。ちら、ちら」

「登下校か。いいぞ」

「いいの!」


「大丈夫だ。バイトを首になって振られた。余裕があるんだ」

「ありがと、ああああああ!」

「どうした?」


「放送のスイッチ、切ってない」


 俺と新妻は同時にスイッチをに手を伸ばした。

 そして俺達はぶつかり合いながら同時にスイッチを切った。

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