監禁

ネルシア

監禁

ある日を境に私の彼女はちょっとおかしくなった。

テレビを壊し、私のスマホを没収し、家中の窓という窓を全部塞ぎぐ。

さらには家のドアの鍵も内側も外側も鍵がないと開かないものにして、鍵も彼女しか持ってない。


うーん、いわゆる監禁ってやつだけど、特に生活には困らないし、彼女がいるからいいかなって思ってしまう自分がいる。


彼女がリュックサックを背負い、仕事に行ってくると挨拶する。

いってらっしゃいとキスをする。

私がいなくなるのを待ってから私の彼女はドアを開けて外に出る。


1人で暇だが、オフラインのゲームならしていいということで、ありとあらゆる種類の携帯ゲームをたしなむ。


さすがに当時はびっくりした。

いきなり私を監禁するなんて。

思わず、何やってるのと激しいつかみ合いになったが、私が彼女に力でかなうはずがなかった。


当時は慣れないことで焦りと恐怖でパニックになったが、彼女は常に私のこと考えてくれたし、毎晩毎晩謝ってくれるし、生(性)活も順調だ。

毎回帰ってくると疲れてる様子で、そんな彼女を慰めるのも私の仕事だし、満たされると感じる。

幸せだとも思う。


だから私はこの状況なりにこの状況を楽しもう。


--ごめん、私の彼女。

こんな監禁状態にしてしまって。

理由は絶対にばれてはならない。

大好きだからこそ絶対にばれたくない。


今日のターゲットを確認し、自室(もちろん彼女が入れないように鍵付き)で準備を進める。

武器や弾薬のチェック。

予備のリュックや懐中電灯、ライト、携帯食料など物資に不足はないかを確認する。

よし、今回も準備万端だ。


行ってきますというと、私にキスをしてくれる。

それが今日の活力になる。


ドアから離れるのを待ってから扉を開ける。

さぁ、戦いだ。


ドアを開け、聞き耳を立てる。

物音はない、よし、行こう。

物音に注意しながらアパートの屋上にたどり着く。

幸いにも屋上庭園とがあり、植物を育てるには困らない。

鶏の飼育小屋もあるから肉も調達できる。

さすがに魚、豚、牛肉は手に入らない。


旬の野菜を収穫し、次の時期の野菜の準備をする。

すると、ガンガンガンと乱暴な足音が響く。

すぐさま警戒態勢に入る。

物陰に隠れ、リュックから獲物を取り出す。

折り畳み式のさすまただ。

これにはあるしかけも施してある。


足音がどんどん激しくなり、ついにその姿を現す。

およそ2メートル強。

シルエットは人間だが、黒いドロドロとした液体が人間を包み込んだような形状だ。

激しい猫背に、腕は異様に長くなっており、床を引きずっている。


その怪物が体をかがめ、地面の匂いを嗅ぐ。

私のほうに近づいてくる。

まだ。

まだ出ない。

まだ。

今だ。


怪物にさすまたを突き刺し、壁に押し付ける。

さすまたの持ち手のスイッチを押し、ギミックを作動させる。

さすまたの先から液体がにじみ出、怪物がこの世とは思えない声を上げて溶けて、跡形もなく蒸発する。


何故か知らないが、こいつらには聖水が効く。

聖水と言えば聞こえはいいが、要は私が彼女を守りたいという強い祈りがこもっているだけだ。


こうして、怪物との戦闘を終え、野菜も卵も収穫し、また聞き耳を立てて家に戻る。


お帰りと明るい顔で出迎えてくれる。


あぁ、この子には何も知らないまま幸せに過ごしてほしいと思いながら、戦いで疲弊した心を休ませる。


Fin.

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監禁 ネルシア @rurine

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