第6話 SNSとダブルピース
あの後、
「楽しかった……な」
遊んだ後、帰宅する時間というのが俺はどうにも嫌いだった。
「静かだな」
友人と遊んでいた時の騒がしさが噓かのように静まりかえって。まぁ、何というか。
「寂しいんだよな……」
だからいつも、帰り道は
『若者が青春放り出してんじゃねーよ。遊んでこい』
とのこと。
だからその時間に、こうして翔と遊ぶことができている。
「ただいま。父さん、何か手伝えることある?」
だからせめて、出来ることはしたいんだ。
「おう、お帰り~。固定のやつと、サポーター頼むわ」
「分かった」
施術室の方から父の声。
道具関連が置いてある部屋へと向かい目的のモノを取る。
「息子さん、いい子だねェ」
「いやぁ、まだまだ毛が生えたて(意味深)のガキですわ」
微笑ましい声。
昔のことで、父に対して申し訳ないという気持ちが去来する。
「とってきたよ」
道具を渡し、施術も終わる。最後の患者も帰り、今日の業務は終了。
「よ~し、今日は飯食いに行くか」
「いいね」
父が車を出して、俺は助手席に乗り込む。
「何が良い?」
「中華」
こういう時に行くのはいつものお店、『佐藤焼飯店』。ここの炒飯は絶品なのだ。
「おっけーち●毛ー、出発進行ー」
「その小学三年生レベルの下ネタ止めなよ」
これが我が父、
地球環境に優しくない煙を出しながら、車は目的地へ向かう。
「父さん」
そう言えば、これは言っておくべきだろう。
「なんだ?」
とぼけた様な顔で、前を見つめながら父は応じる。
「彼女っていうか……
しばし、俺も父さんも沈黙。
「はははは!! そうか、がはははは!!」
「なんでそんな爆笑なのさ、ってか。父さんたちが決めたんだろ?」
リリーが言っていた半年前のリリーず
「いや~、もっと段階を踏んでくると思ったんだがなー。さすがベッカー家、押しが強い」
「段階については完全に同意」
まさかあんなセクハラまがいの求婚とはなぁ。
「つか、媚薬も盛られたんだけど」
「えぇ(困惑)。父さんを襲うなよ?」
「その時は、
実の父を襲う(意味深)なんて、悪夢はなはだしいってモンだ。てか特にあの
お茶を飲ませられてからというもの、少し体調が良いいくらいで目立った効果は無い。
「いや~、まさかあの引っ込み思案だったリリーちゃんがなぁ。大きくなったモンだぜ」
「え? 父さん、昔からリリーのこと知ってたの?」
「知ってるも何もお前……」
父さんが何か言おうとしたとこで、スマホにメッセージ通知が届く。
「おっと、ごめん」
「親子の会話に割って入るとは……生意気な板きれだぜ」
「スマホを板きれって表現する人、初めて見たよ」
画面を見ると、LI●Eの通知で見た事のない名前。『Lily~今夜、お前の貞操を奪いに行く~』と表示されている。
「名前の後に、サブタイトルみたいなのつけてボケる上に犯行予告とはたまげたな」
「がははははは!!」
俺の反応に、父さんは爆笑。
一瞬、運転する車がガタつくほど笑っていた。
「えっと……」
肝心のメッセージは、
『お友達から、与太郎の連絡先もらっちゃいました! 直接交換したかったですか? 残念!! 私、あなた以外の人と……』
「メッセージもやかましいなぁ、おい。おっと……」
ついつい声に出た。
「『了解、明日聞こうと思ってたから助かった』っと」
結局、俺自身もスマホで文字打つ時に声が出ちゃうから意味が無い。文字を打ちなら、そういえばと
メッセージを追加。
『リリーの画像が欲しいんだが、いい?』
何の気なしに送ってしまったが、今結構やばいこと言ってないか? 目的・用途を明かさず、『あなたの画像が欲しい』は怪しすぎないか?
マズいと思って『送信取り消し』しようとすると、
『ご注文はハ●撮りですか?』
爆速の返信。
内容に関しちゃ、さすがリリーさん。期待を裏切らないぜ☆。
『普通の自撮りでいいよ。てかいきなりごめん、もし無理だったら送ってこなくて構わないから』
送信。
さすがに、画像は送ってこないだろうな。
「……」
またも通知。
『画像が送信されました』の表示に、冷や汗をかく。
「まさか……な」
止まろうとする理性の命令を、指がきいてくれない。見え……
「…………アヘ顔ダブルピース、なのか?」
緑色のクソ芋ジャージに身を包んだリリーが、あの無表情のまま白目を
「まぁ、いいか」
可愛いことに変わりはねぇしな(思考放棄)!!
一応、『コレ友達に見せて良い? 俺の彼女~って自慢したい』と確認。返信は『よろしくてよ!!』と発言する往年のアニメキャラのスタンプだった。
人生初彼女を親友に自慢すべく、
『は?』
そう一言、翔からは返信が来ていたことに。
この時の俺は気付かなかった。
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