第7話 スカートと衝撃の事実

 父さんと飯を食いに行った翌日。

 いつものように登校し、途中で車に轢かれそうだったタヌキを助け遅刻した。


 昨日、リリーにも注意されたから授業も真面目に受けた。物理の先生が『今から自由落下運動を説明する』といって窓から飛び降りようとしたのを全力で止めた。


「ふへェ」


 やっと息をつけたと思った昼休み。

 は突然、現れた。


「おい、与太郎」


 少し高い、特徴的な声。


「え?」


 そいつがこの場に居る事ですら、驚きなのに。

 目の前の光景に、


「お、おい。噓だろ?」


 俺はフリーズしていた。


「は? 何言ってんだ、ピエロ野郎」


 相変わらずの生意気な口調。

 学校に来たことでストレスが掛かってるのか、ムスっとした表情。


しょう……お前なんで」


 親友が、


「スカート穿いてんだ?」


 ありえない格好で現れた。


「なんでって、当たり前だろ。なんだから」


 俺の中で、何かが崩れる音がする。


「おい、与太郎。まさかお前……」


 伸ばしっぱなしのキレイな黒髪を乱雑に束ねている。小柄で可愛らしい姿に反した、狂犬みたいな性格。まぁ童顔なせいで、なんか子犬が一生懸命吠えてるみたいなんだが。


 俺の親友は、


「ボクのこと、男だと思ってたのか?」


 どうやら美少女だったらしい。


 及川 翔おいかわ しょう(16歳)。

 性別、女性。


 好きなモノ、ゲーム。

 嫌いなモノ、退屈な奴。

 不登校理由、ゲームで忙しかったから。


「どうした、与太郎。ボクの制服姿に見とれたか?」


 イタズラっぽく微笑む、目の前の美少女。


「ぱ」


「ぱ?」


 首をかしげて、しょうが俺の顔を覗き込む。


「ぱぁああああああああああああああ!!(発狂)」


 俺の情緒は狂った。


 



 数秒後。


「は……はにゃ?」


 旅立ちそうになった理性がカモンアゲイン。

 クラスの連中の声がする。


「普通、女子と男子間違えるか?」


「いや、でも与太郎だし」


「つか、及川おいかわさん。あんな可愛かったんだな。一年の最初のほうに見ただけだったから……」


「お、与太郎。起きたか」


 正気に戻った俺にクラスメイトの一人が手を貸してくれる。


「えっと……あの後どうなった?」


「こうなった」


 友人が指さしてくれた方向へ視線を向ける。

 そこにはリリーとしょうが教室の端が談笑してる姿。


「初めまして、及川おいかわさん。リリー・ベッカーと申します。スカブラ大乱戦☆スカッとブラジャーズの持ちキャラはCカップ紐黒色下着の淫乱地味子ちゃんです」


 リリーもスカブラしてたんだ……

 あとでフレンドコード送っとこ。


「よろしく、しょうでいいから。にしても、あのキャラ使うなんて。さては相当やりこんでるね?」


「ふふん、公式大会では『淫乱ピンク』で名を馳せてるんですよ」


 得意げに語るリリー。


「え、マジ? ボク『貧乳ブルー』なんだけど」


 ゲームの話ができて嬉しいのか、興奮気味の翔。


「どっちもヒデェ名前だな」


 もうちょっと良いの無かったのか、彼女らのアカウント名は。


「何と?! 私のライバルがこんなとこに!!」


「そっちこそ、絶対おっさんだと思ってたのに!!」


 おっと二人の様子が何だか不穏。

 バチバチと目線が交錯してるする中、両者とも手を出し……


「ちょ!」


 リアルファイトは御法度だぜェ!


「二人とm」


「「次こそ勝つ!!」」


 俺の心配を余所よそに、彼女らは固い握手を交わしていた。


「……友情、生まれたちゃった」


 なんだろう、親友とできたばかりの恋人を同時に失ったような錯覚さっかく


 コレが脳を破壊されるってやつか……


あの百合リリー×及川には挟まったら、ぶちのめすからな。分かったか、与太郎」


 百合カプ保存委員会の友人に釘を刺された。

 





 



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