第二部

挿話

世界のはじまりと戦乱


 世界は終わりから始まりました。

 破壊、侵食、混乱、苦痛、恐怖、絶望、狂気──。

 あらゆるものが押しつぶされ、引き裂かれ、混じり合いました。

 すべてであり無でもある混沌から、はじめに魔物たちが産み落とされました。

 魔物たちは互いに争い、食らい合いながら、長い夜を過ごしました。

 つぎに神々が産まれました。

 光の化身たる神々は、夜を遠ざけるために人をつくりました。

 さらに人のために、獣や草木をつくりました。

 人々は神々の願いに応え、大地に広がって夜を切り開きました。

 こうして昼夜の区別がつくようになり、時が刻まれるようになったのです。


          ──石板に記された創世神話より──



     *  *  *



 老いも若きも、男も女も、動ける者は皆、手に手に武器を取って戦いました。

 けれども、神々の力はあまりにも強大でした。

 腕のひと振り、翼のはばたきひとつで、あまたの兵が斃れ、人々は瞬く間に追い詰められました。

 そこに現れたのが、ドム・ナ・パラージャです。

 かの英雄は、魔物たちを率い、神をも凌ぐ力で光の軍勢を押し返しました。

 戦神さながらのその姿を、神々は魔王と呼んで恐れたといわれています。

 英雄は和睦の申し出をしましたが、神々はそれを拒みました。

 壮絶な戦いが何年も続き、やがて神々の姿を見ることはなくなりました。

 そののち、ドム・ナ・パラージャも姿を消したそうです。


          ──口伝『ドム・ナ・パラージャのいさおし』より──

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