第8話

 犠牲者 上杉・金田一議員・橋本・横井・桜塚志保・小野寺


 杉谷はまず、カモの部屋にネズミの死骸を置いた人物は瀬良だと推理した。食品工場ってのはやたらネズミがいる。

 斎藤たちは自動車工場に派遣される前に、瀬良の工場で働いていたが派遣切りに遭った恨みから、瀬良のチャリに火をつけた。

 瀬良は嗅覚が犬並みに優れ、普通の人が気づかない匂いから斎藤が犯人と断定した。  

 斎藤のアパートの郵便受けに『マル』の無料の宿泊チケットを置いた。瀬良がパソコンで作ったものだ。

 斎藤は『マル』に来たときアベから「そんなものを贈った覚えはない」と言われ不気味に思ったが、帰る気力もなかったので正規の宿泊代金を払い、泊まったのだ。

 斎藤は瀬良の胸ぐらを掴んだ。

「もとはといやぁ、お前が悪いんだ!チャリ、弁償しろよ!」

「悪かったよ。警察には言わないでくれ!」

「で?瀬良が横井を殺した動機は?」と、聡太。

「横井を殺したのは瀬良じゃない」

「じゃあ、誰だ?」

「まさかあなたが犯人だとは思いませんでした」

 杉谷は香美の顔を見た。

「え?でも、先生は横井が殺した日はホテルにはいなかった」と、窪塚。

「彼女は透明になれる魔法を使えるんだ」

 杉谷の意外な発言に香美以外は驚いていた。

「まっ、魔法!?」と、涼。

「ドラクエやFFじゃないんだから」と、窪塚。

「彼女の左薬指にしてるのはハデスの指輪です。私の友人にうつ病を患った派遣社員がいるんですが、彼は彼女と同じ指輪をしていました。メンタルポイントが下がると透明になれるんです」

 杉谷はおならを必死に堪えていた。

「ポイントが下がると魔法が使えるなんて面白いな」と、聡太。

「おめぇーは最低なクソ医者だ」

 杉谷は香美を罵倒した。

「レセプト間違えた無能な事務員のせいで横井に脅されてたんだろ?ブス、デブ、ヒトデナシ」

 香美の足が消え始めていた。

 香美が横井を葬った前の日、とんでもないことが起きた。

 33歳女性が女児を出産後、出血多量で死亡。香美の部下である男性医師の輸血ミスだ。

 メンタルポイントはメチャクチャ下がっていて、透明になった。どこで嗅ぎつけたのか、横井が電話で脅してきた。

『人殺しの飼い主は大変だな?金よこせよ』

 横井は5000万を脅してきた。

 透明モードで『マル』にやって来た香美はメスで横井を殺した。全然関係ない話だが、スペイン語でメスは月(暦)を意味する。入院する前、アベが言っていた。

「もう、おめぇーの人生は終わりだ。死刑になる可能性もあるだろうな?」

 香美は完全な透明になった。  

「横井さん、ゴメンナサイ」

 まるで幽霊だ。突然血が床に飛び散ったので、みんな悲鳴を上げた。

 香美は隠し持っていたメスで喉を突き刺してケジメをつけた。

 


 

 

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真鶴殺人事件 鷹山トシキ @1982

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