Re:片思い同好会

Nicola

活動日誌0冊目

0ページ 片思い同好会



活動日誌0冊目



片思い同好会



To 風太;ショーゴ;

Sub 重要!

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ふたりに聞いてほしいことがあるから

明日は放課後、ショーゴの教室に集合ね!

-- END --



 電車の中、制服を着た生徒がそこそこに多い朝の時間帯、セーラー服を着た女子高生と詰め襟の男子高生が並んで扉付近に立っていた。

「昨日の、どした」

「昨日? ああ、メールのこと?」

 ふたりともガラスの向こうに流れる景色を見ている。

「祥吾はいないけどお、オレは登下校一緒じゃん。昨日の帰りも一緒だったし……オレだけじゃあ話せないことなわけ?」

 男子高生の視線がちらりと足元へ動いた。

 女子高生が耳の下で結んだ髪がゆらゆらと揺れた。

「ううん。でも、三人揃ってる時のほうがいいと思って!」

 にっと笑った女子高生が、隣を見上げた。男子高生は下に向けていたせいでばっちりと合った視線から逃げるように、再び流れる景色に顔を向ける。

 走り抜ける濃い緑は、明るい太陽のひかりが際立たせていた。

「とっておきのことだから」

「へえー」

「だから、三人一緒がいいでしょ。放課後までのお楽しみ」

 電車内でくすくすと笑う彼女の楽しげな表情がガラスに映って。

「お前のお楽しみは当てにならないからなあ」

 そこからも視線を逸した彼は、電車内の広告へ目を向けた。

 がたん、と揺れた電車で、ふたりの肩が一瞬だけ触れ、すぐに離れた。



 ふたりについた揃いの校章は桜だった。

 八ノ重ハチノエ高校。

 そこには桜の名字を持つ生徒がふたり。

 二年C組、桜雪奈ユキナ、そして、桜風太フウタ

 ――桜のふたりの日常は、幼馴染も周囲も巻き込んで、今日からに生まれ変わる。

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